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ロケット



「恋愛は宇宙に飛び立つロケットのようなものだ。必要なのは大気圏を出るだけの燃料だけ。あとはただ飛び続ける。方向はどうであれね。」
「最初の爆発が肝心?」
「一生の相手かどうか考えたりしない。むしろ、最初の勢いだ。」

彼の主張は、ある意味で正しかったのかもしれない。だが、僕は大気圏を突破するために、ロケット同様あまりに多くのものを切り離し、捨ててしまった。
結局、大気圏に辿り着けなかったロケットは、地上で大破し、誰に見つかるでもなく海の藻屑となった。

あるいは、大気圏を突破したとして、決められた場所を無限に回遊するだけの人工衛星に僕はなりたくなくなかったのかもしれない。
しかし実際のところ、もう終わってしまった事なのだ。忘れるしかない。
深い海の底で、あと少しで出る事ができた大気圏や、天空の景色、切り離してしまった燃料のことを浮かべているガラクタになんの価値もない。

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