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あのオヤジは、死ぬしかないのかもしれない、あるいは……【NHKのドキュメント番組『72時間』にモヤり上げた話】

昨日は色々あってサボってしまった。
全世界1兆億人(死者の魂とまだ見ぬ命も計上に入れてます)の期待に沿えなくて申し訳ない。

さて今日の分。
今日はちょっと長いし、先日の記事のようにトチ狂ってはいないが怒り上げている。なので愚痴っぽいかもしれません。

皆の衆は、NHKのドキュメンタリー番組『72時間』をご存じだろうか?
その時々で色々な場所を密着取材する番組で、動物病院、保育園、遊園地、サバゲーフィールドからBOOKOFFまで、ありとあらゆる場所の72時間を切り取り、そこで働く人や訪れる人々の人間模様を映し出す番組だ。

今回はその番組をちょっと小突く感じの内容だ。
つい先日見たのは携帯ショップの回だった。

長年愛用していたガラケーの3G電波が使用不可になるので、泣く泣く機種変にきたオジサンや、ある家族は両親と娘が二人で来店し、実はその母親が死産を経験していて、その悲しみを娘が察したのか初めてのスマホで撮りたい写真は家族写真だと言ったりと、なかなか泣ける(ここで俺は泣きました)エピソードがいきなり飛び出してくる、弘兼憲史の『人間交差点』のようなドキュメンタリー番組だ。

この回に凄くモヤモヤさせられたオヤジが出てきた。

【娘と縁を切りたいオヤジの覚悟】

そのオヤジはデニムのジャケットにパーカー、黒系のボトムスで恰幅(かっぷく)がよく、聴いている音楽は『E.YAZAWA』で人生のバイブルは『成り上がり』なんじゃねーか?という感じのちょいワル系親父だった(服装に関してはうろ覚えなので違ったらごめんなさい、あとはYAZAWAの件は完璧な偏見です)。

彼は娘が幼いころに奥さんを亡くしたらしく男で一人、懸命に娘さんを育てたそうだ。周囲の生徒にバカにされないようにお弁当を毎日作ったりとその苦労を嬉し気に自慢する。

「ほうほう、ええオヤジやんけ」と感心していると、こんなことを言い出した。

「俺は娘に知られずに、酒に酔ってコロッと死ねればそれで良い」

「ん……どうした?様子が変だぞ?」疑念を抱きながらも番組は進行する。
どうやらこのオヤジは持病持ちで、成人して結婚し家庭を持った(ような話だった気がするが、これもうろ覚え)娘のために、一切の苦労や心配をさせまいと新規に新しい番号で携帯を契約し連絡を絶つのだそうだ。

なんというか、すげぇ……。

凄い決断をしやがるな、このオヤジ。と思いつつも「なんで?」という疑念も拭い去れない。いやいや!そりゃあこの人の人生ですし、僕のようなゴミムシ風情が何かを言うことも変なのは重々承知ですケドね。

オヤジ曰く「自分の持病のせいで娘に迷惑をかけたくはない。彼女は優しいから病気が悪化して俺の看病や介護をすると思う。それは忍びない、だから連絡手段や関係を一切絶ち、関わらずに生きていく」んだそうだ。

【このオヤジにムカついた理由】

正直、この理由にはかなりムカついていた。
どうしてここまで自分勝手で独善的な決断と振る舞いができるのだろう。

一つ屋根の下にいるといずれ互いに刺し違えてしまうというほど、娘との仲が険悪なわけでもなく、このオヤジの言葉が本当ならば彼は娘の成長と共に20数年を過ごした父のはずである。

もちろんこのオヤジの愛の深さ "のようなもの" は想像こそできるが、その愛情の向く先に、いきなり訳も分からず音信不通にさせられ、切り離される娘の気持ちをどこまで考えているのか?

おそらくこの「切られた」娘は、その後このオヤジを心配をするだろうし、もしかしたらそれがキッカケで心を病むかもしれない。

ここでもしもの話をするのも野暮だが、信頼していた相手にある日突然、理由も知らされず断絶させられるのはかなり堪えるように思う。そういう思考回路はこのオヤジに備わっていないのだろうか?

だいだい、娘に心配と苦労をかけないはずの関係断ちミッションのはずが、娘が関係を絶たれたことに気づいた時点で、心配もするし探し出すために苦労もするだろうよ。

【オヤジは自分に酔っている?中途半端な計画】

何というか正直、このオヤジの行動原理というか立ち振る舞いみたいなものに、自身へ向けられた自己肯定に陶酔したヒロイズムをみたいなものを感じた。

心根の底でこのオヤジは「そんな思い切った行動に出ちゃう俺を、実は娘に探して出してほしい」などと思っているんじゃなかろうか?立証のしようはないが、心のどこかに「娘が心配して俺の安否を確認しに来てくれるんじゃねーかなぁ」という余裕というか、自信のようなものがある気がしてならない。

今ニュースで連日報道されている北海道の観光船転覆事故にしてもそうだが、身内が海難事故にしろ登山での遭難にしろ、生死不明のままの状態は安否も分からないから死亡届も出すに出せず、残された家族にいつ終わるとも知れない "待ち続ける人生" を強いることになる。それは永遠にも思える苦痛だと思う。

当然だが携帯の番号を新しくしたくらいでは簡単に安否確認は可能なので、このオヤジの「娘と関係を断つ」というミッションはこれで終わりではないはずだし、そうだとしたらかなり中途半端である。

自身の音信不通が娘にバレると当然娘は心配する、見つからないように逃げ続ければさらに心配になり追いかけてくるだろう。それは娘の精神的にも金銭的にも結局は気苦労に繋がる。

それがこのオヤジが、娘へ施したい愛のカタチではないはずだ(このオヤジの言葉が本当ならば)。

【オヤジに残された道、それは……】

だとすれば、このオヤジが関係を断ち、なおかつ娘が長く広い視野で安心できるその行先は一つである。

それは「あの世」だ。

残された娘が決して介入できず、そして安否を気遣って心配することもない。心を酷く傷つけるだろうし、彼女の人生の時間の一部を絶望に追いやるかもしれない。しかしそれは(全てとは言わずとも、ほとんど)時間が心を救い上げてくれる。そして再び彼女が笑う日が来る、このオヤジのことを忘れて。

これを書いてるうちにまた次第に、このオヤジの中途半端さに苛立ちを覚える。彼女を苦しめたくないと言いながら、彼のやろうとしてることは苦しみの上塗りと再構築のように思えてならない。

「娘の人生の苦労に未来永劫ならように」という同じ口で「でも世界のどこかで隠れて人生を全うしたい」では中途半端ではないか?

こういうと読んでる方に「お前はあのオヤジに死ねって言うのか!非常識だぞ!」と批判が起きそうだが、本心はちょっと違う。

もう2500文字を越えてきてますが、こっからが僕の言いたい本心なのですが、それは何かというと……。

「半端に生きようとすんじゃねぇ」である。

結局、自分の持病に対して何らかの諦めや惰性があり、だからこそ「酒に酔って死ねれば」みたいな調子こいたことを抜かせるんだろう。

仮に不治の病だとして、娘への心配と自身の生とを天稟にかけて選んだその決断が独善的で下手糞な "逃げ" なわけだ。

そうじゃねーだろ!
娘への愛が本当で心配や苦労を掛けたくないなら、まず元気な状態でコロッと逝けるような状態を作れるように努力するべきではないか?

このオヤジの状況や理由は理解できるが、だとしてもここまで生に対して怠惰な態度と行動原理は納得できないどころか嫌悪感を抱く。

戦った先にある死や逃走ならまだしも、戦う前から断絶を決め込んでそれを己で良しとしてる様、そりゃねーんじゃねーの?オヤジさん。

それに介護や介助自体を迷惑だと思い込んでるんだろうが、そんなのオヤジの勝手なイメージじゃないか?

僕も亡くなった祖母が痴呆と寝たきりで介助が必要になったことがあるから分かるが、確かに大変なことだし苦労は絶えないが、それを経験しないと分からない人生の境地や相互理解だって生まれるかもしれない。その先にある幸せも。

確かに人間は何かを決断するとき、どんなに間違った選択や愚行でも、個人では「正しい」(あるいは「このほうがマシ」)と感じた方向にしか走れない。

彼にとってはこの決断がそうだったのだろう。
しかし彼はまだ甘いと思う。

その決断に至る前に、娘と殴り合いになろうとも話し合い、意見を心の芯まで交わすことが必要だったのではないか。

ってゆーか正直、娘を舐めてる感すらする。

まぁ~フタを開けてみればほんとは、このオヤジの勝手な作り話で娘は家でゴロゴロしてBL読んでるかもしれねーしな!

この番組を見られていた皆さん、いらしたら是非ご意見を聞かせてください(僕の記憶違いや勘違いもあるかもしれません、ご了承を~)。

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