『僕は君たちに武器を配りたい』
こんにちは!だいちです。
今日は『僕は君たちに武器を配りたい』 について話をしていきたいと思います。
言わずとしてた瀧本哲史さん。
2019年8月10日、瀧本哲史氏が亡くなりました。
享年47歳。あまりにも早すぎる死です。
今回は彼が世に残した良書『僕は君たちに武器を配りたい』を読み要約・考察していきます。
要点
①「コモディティ」になってはならない。
スペックが明確に定義できて、同じ商品を売る人が複数いれば、それはコモディティです。
②「スペシャリティ」になるには、既存の枠組みの中で努力するのではなく、資本主義におけるルールをしっかり理解することが求められる。
③いまの資本主義においてコモディティ化せずに、主体的に稼げるようになる近道は、①トレーダー、②エキスパート、③マーケター、④イノベーター、⑤リーダー、⑥インベスターのいずれかになることです。
④ただし①トレーダーと②エキスパートには、今後厳しい運命が待ち受けていると本書で言っています。
要約本文
◆「コモディティ」対「スペシャリティ」
日本ではいまだに「勉強して努力をすればかならず幸せになれる」という考えが、メディアを通して世の中をつくっています。
しかし現実として、勉強(努力)と収入はかならずしも比例しません。
とくに重要なのが、「コモディティ(commodity)にならない」という視点です。
経済学においてコモディティとは、「スペックが明確に定義できるもの」のことを指し、市場に出回っている商品が個性を失い、消費者から見たときに個性が感じられないような状態を「コモディティ化」と呼びます。
たとえどんなに優れていたとしても、スペックが明確に定義できて、同じ商品を売る人が複数いれば、その商品はコモディティとなってしまいます。
それは商品だけでなく、人材の評価においても同じでです。
これまでの「人材マーケット」では、資格などの客観的に測定できる指標が重視されていた。
しかしそうした数字が同じであれば、企業はより安く雇えるほうを選ぶに決まっている。
つまり資格や点数で自分を差別化しようとすることは、コモディティ化された人材になるということであり、最終的には「安いことが売り」という人材にならざるを得ないのです。
瀧本さんは東京大学法学部を卒業後、大学院を経ずして研究科助手に抜擢された方です。
それほどの能力がある人なら、そのまま学者として大成できるでしょう。
しかし彼はその後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社することを決断し、日本交通等の改革で手腕を発揮しました。
その後、独立してからはエンジェル投資家として活躍しつつ、京都大学客員准教授という立場から「起業論」を説いた。
そんな瀧本氏が、私たちに贈る「武器」として書き上げたのが本書『僕は君たちに武器を配りたい』です。
彼の目には私たちの持つ「武器」が、まさに竹槍の如く映っていたのでしょう。
資本主義という戦場を生き延びるための戦略と戦術を、私たちに伝えたかったのと思います。
2011年に書かれた書籍ということもあり、中にはいま読み返すと「あの頃とは社会情勢が変わった」と思わされるところもある。
たとえば日本における有効求人倍率は改善されてきているし、米経済界では「株主第一主義」に対する見直しも始まった。
それでもこの本は、現在も十分に通用するものばかりです。
これを読めば、現代社会を生きるための「武器」が手に入る。
その「武器」を磨き続けるかどうかは、自分達次第です。
本物の資本主義**
人間の欲望に合致したシステム**
戦後の日本は、資本主義国家でありながら「世界で唯一、もっとも成功した社会主義の国」と言われてきた。
政府が主導するかたちでの経済発展が、長い間続きました。
しかし経済のグローバル化に伴い、日本も激しい国際競争に巻き込まれることになり、世界中の人々と市場で競争する「本物の資本主義国家」にならざるを得なりました。
資本主義は社会主義などの計画経済と異なり、「頭のいい人がすべてを決めるのは無理」という考えに立脚している。
計画経済においては「500円の商品は全員500円で買うべき」とされるが、資本主義では市場で500円で売られているものを、「自分なら400円で作れる」と思ったならば、作って売る権利がある。こうして結果的に価格はどんどん下がり、逆に品質はどんどん向上していく。
こうしたスパイラルを繰り返すことで、世の中が進歩する
これが資本主義の考え方です。
資本主義というシステムがすぐれているのは、人間のいい意味での欲望に合致した、社会を進歩させる動力を内包している点に他なりません。
日本のビジネスモデルは陳腐化している
資本主義が発展すればするほど、商品の価格は下落し品質は向上する。つまり原理的に、あらゆる産業はかならずコモディティ化し、陳腐化する。
かつて日本は「すり合わせ製造業」というビジネスモデルで一時代を築いた。
単にモジュール(規格化された汎用部品)を組み合わせて製品を作るのではなく、それぞれの部品やユニットを、最終的にもっとも性能や機能を発揮できるように、カスタマイズし設計して組み立てる。
この開発プロセスを持っていることが、日本の製造業の最大の強みだったし、だからこそ「ものづくり」が世界市場を席巻しました。
しかし時代は変わりました。
世界との技術力の差はわずかになり、内需の拡大も限界を迎えています。
さらに日本はいまだかつてないほどの超高齢化社会となり、今後は公的サービスを今までのように受けられるかどうかもわからない。
日本という国そのものの信用が急速に失われつつあるいま、「国がどうにかしてくれるだろう」という考えは捨てるべきです。
個人レベルでビジネスモデルを変える。
または新たなビジネスモデルをつくりだすことに挑戦しなければ、
生き残ることは難しいでしょう。
生き残るタイプ、生き残れないタイプ
「トレーダー」と「エキスパート」は厳しい
資本主義社会においてコモディティ化せずに、主体的に稼ぐ人間になるための近道は、以下の6タイプのいずれかになることです。
①トレーダー: 商品を遠くに運んで売ることができる
**
②エキスパート: 自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする**
**
③マーケター: 商品に付加価値をつけて、市場に合わせて売ることができる**
**
④イノベーター: まったく新しい仕組みをイノベーションできる**
**
⑤リーダー: 自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する**
⑥インベスター: 投資家として市場に参加している
ただしこのなかでも「トレーダー」と「エキスパート」は、今後生き残っていくのは難しくなると考えられます。
「トレーダー」とは、他人や会社から与えられた商品を販売している営業職などを指します。
まだ「すべての商売において営業力は基本だ」という考え方もあるが、インターネットの普及により、人々の購買行動は劇的に変化しました。
個々の営業力頼みの商売はもはや時代遅れです。
ゆえに広告代理店や旅行代理店など、いわゆる「代理」業務を行っている会社は、ビジネスモデルの構造転換を迫られています。
同様に「エキスパート」(専門家)にも厳しい運命が待ち受けている。
かつてはひとつのジャンルに特化し、専門知識を積み上げてきた人は尊敬の対象でした。
しかしいまや「石炭から石油へ」レベルの激変が、毎日のように産業界で起きています。
それはすなわち、これまで積み重ねてきたスキルや知識が、あっという間に過去のものになるということを表している。
ある時期に特定の専門知識を身につけていたとしても、社会のニーズが変わってしまえば、その知識の必要性自体が消滅してしまいます。
◇「マーケター」という働き方
これから生き残れるビジネスパーソンのタイプは、「マーケター」「イノベーター」「リーダー」「インベスター」の4種類である。
「マーケター」とはすなわち「顧客の需要を満たすことができる人」のことです。
重要なのは「顧客自体を新たに再定義する」こと。
つまり人々の新しいライフスタイルや、新たに生まれてきた文化的な潮流を見つけることです。
そのためには、
世の中の新たな動きを感じ取れる感度の良さ
なぜそういう動きが生じてきたのかを推理できる分析力を養わなければならない。
あらゆる企業において「コモディティ化」が進むなかで、唯一の富を生み出す時代のキーワードは「差異」です。
「差異」とはデザインやブランド、会社や商品が持つ「ストーリー」と言い換えても良いです。
マーケターに求められるのは、「差異」=顧客が共感できる「ストーリー」を生み出し(もしくは発見し)、もっとも適切な市場を選び、商品を売るための戦略を考えることと言える。
「イノベーター」を目指せ
歴史に名を残す「イノベーター」も、最初はどこかの業界に属しており、そこで知識や経験、スキルを蓄えていた。
だから「イノベーター」を目指すとしても、最初はどこかの会社に所属したほうがいい。
新しいビジネスを見つけるときの鉄則として、「しょぼい競合がいるマーケットを狙え」というものがあります。
まったく競合がいない分野は、つまりマーケットがないということなので避けるべきだ。起業する際は、「仮想敵」がそのマーケットにいることが大切なのである。
イノベーションを生み出す発想力は、努力次第で誰でも伸ばすことが可能です。
イノベーションという言葉は日本だとよく「技術革新」と訳されるが、「新結合」という表現のほうがより本質を捉えています。
たとえば、ほかの業界や国で行われていることで「これは良い」と思えるアイデアがあれば、「TTP(徹底的にパクる)」すればいい。
また「何かを聞いたら反射的にその逆を考えてみる」というのも、イノベーションを生み出すうえで非常に効果的な方法です。
◇本当はクレイジーな「リーダー」たち
資本主義社会では、自らが会社を興して事業を営むか
株主として会社の利益に応じて報酬を得られる仕組みを構築することが重要だ。
そのとき欠かせないのが、マネジメントやリーダーシップといったスキルである。
ただし現実の世界では、「すばらしい人」が人の上に立ち、偉業を成したことはほとんどない。
とくに歴史に名を残すようなリーダーというのは、みなクレイジーです。
「リーダーとは人から支持されるような人物」というのは誤りであり、むしろ人間を「敵と味方」に区別し、敵を徹底的に叩き潰すタイプの方が多い。
リーダーを目指す人の多くは、なんらかのコンプレックスを抱えています。
もしあなたが自分自身の過去に大きなコンプレックスを持っているのなら、それはリーダーになる大切な要素です。
そうした「負の側面」を反転させることで、リーダーへの道が開かれるかもしれない。
逆に「自分はそこまでクレイジーではないが、組織を運営してみたい」ということであれば、「リーダーの言葉を翻訳して仲間に伝える」タイプということかもしれない。
リーダーの条件に当てはまらないという場合でも、リーダーをサポートする役割を果たすことで、十分に成功するチャンスはつかめる。
◇「インベスター」として生きる本当の意味
日本では「投資家(インベスター)」のイメージが良くない。
投資というと「山師」「詐欺」といった言葉を思い浮かべる人もいるだろう。
しかしそれこそが、今の日本人が資本主義を誤解していることの証左である。
日本人の投資に対する理解が浅いのは、「投資」と「投機」の区別がついていないからです。
違いについてはこちらで解説しているので一読して下さい。
「投機」は短期的なリターンを求め、一攫千金を狙う賭け事である。
これに対し「投資」は長期的なリターンを求め、うまくいけば関係者全員にとってプラスになる。
これからは投資家的な発想を学ぶことが必須です。
なぜなら資本主義社会において、究極的にはすべての人間は、投資家になるか投資家に雇われるか、どちらかの道を選ばなければならないからである。
投資家的に生きるうえで欠かせないのが、「リスク」と「リターン」を把握することだ。
リスクを回避しようとしすぎても、リターンは見込めない。
人生の重要な決断をするときは、「リスクは分散させなければならない」ということ。
そして「リスクとリターンのバランスが良い道を選ぶ」ということを意識するべきである。
一読のすすめ
本書ではこれから生き延びる人間のタイプを「マーケター」「イノベーター」「リーダー」「インベスター」の4つに分類しているが、瀧本氏も述べているように、これはあくまで便宜上のものである。
理想的には、どれかひとつのタイプを目指すのではなく、状況によって4つの顔を使い分けることが望ましい。
これを実現するには自らの教養を深めていくしかないと思います。
そして教養とは、本やネットだけで情報を知るだけではなく、自分が見知らい世界へ探求していく過程でしか得られないものと思います。
この本で得られた「武器」を携え、真新しい場所を積極的に切り開いていける人が、1人でも多くなることをきっと瀧本氏も望まれていたに違いないと思います。
これで「僕は君たちに武器を配りたい」について話しを終わります。
この記事を読んで面白いと思った方はnoteフォローとライン@登録の方宜しくお願いします!
最後にこちらの本のURLも掲載してきます。