【創作大賞2024感想】『オツトメしましょ!』by八神 夜宵さん
はじめに
これは八神夜宵さんの作品、『オツトメしましょ!』についての感想です。元々書くつもりではありましたが、水瀬 文祐さんの見事な感想文が投稿されてしまったので、尻込みしてしまいました。
応援期間ももう間もなく終了してしまいますし、「まあ、私はいいかな……」と一瞬思いましたが、八神さんが私の作品に関して感想文を書いて下さいました。それがですね……結構なべた褒めですよ!恐縮しきりです!良いんですか!?って感じです。となると、これはやはり感想を述べなくてはならないだろうと思い直しました。
作品紹介
↑こちらがその作品です。一気に読めるバージョンですね。20本の記事に分けられた方もありますが一気に読めちゃう作品だと個人的には思います。
以下、簡単にではありますが、感想を述べていきます。
馴染みやすい世界観
八神さんは今回の創作大賞にいくつかの長編小説を出されていますが、私は今作が一番馴染みやすいかなと感じました。他の作品はSFやファンタジーなので、少しばかりハードルが高く感じてしまいました。
ですが、今作は女子大生二人がヒロインなので、なんとなくではありますが親近感を覚えました。私も史学科出身なので。
意外なターゲット
ネタバレを極力避けたいのですが、今作では”オツトメ”=盗みです。ここでヒロインたちのオツトメのターゲットとなるのが、『考古物』です。これに関しては、思わず「なるほど!」と膝を打ちました。普通の作品であれば、美術品や宝石類など高価なものをターゲットに選んでしまうようなところを考古物……これだけでもこの作品は他に類を見ない独自性を獲得することに成功しています。
緻密なメカニック、濃厚な人間ドラマ
ヒロインたちが用いる車やパソコンなどのメカニックについての描写も非常に緻密です。細やかで丁寧な描写はそれだけでヒロインたちがこれから行うオツトメを問題なく成功させるであろうという説得力を十二分に持たせることを可能にしています。
またヒロインたちが組合に加入する際のやりとり、陰の社会で長年過ごしてきた男たちの迫力……私は八神さんはそっち側の方なのだろうかと錯覚してしまうほどでした。
ヒロインの表の顔、遺跡発掘などに関してもそうです。詳細は省きますが、現場でどれだけ汗を流そうが、手柄を取るのは、政治力に長けたズルい大人……このあたりの生々しい展開は分かっていても悔しい気持ちにさせられました。
勝手な推測
恐らくですが、千英の修行パートなどをもっと濃密に書きたかったのではないかと……。
後はラスボスの登場がいささか唐突だったかなと思います。序盤からなんらかのシーンで顔出ししていれば、ラストへ向けてより盛り上がったのではないかなと……。まあ、すべて勝手な推測であり物言いなのですが。
最後に
極めて完成度が高い作品です。ネットフリックスあたりで来年秋にでもドラマ化して欲しいと思いました。ただ、八神さんは実写化にはどうやら消極的なようですので……。まずは書籍化でしょうか。その前には創作大賞で良い結果を得ることが大事なのですが……それだけのポテンシャルは作品中の至るところから迸っています。
期待に胸を膨らませながら待っています。八神 夜宵さん……このような素晴らしい作品を世に送り出してくださって誠にありがとうございます。
今後のさらなる活躍を、心よりお祈り申し上げます。
2024.7/31
阿弥陀乃トンマージ