二次会デミグラス
「もうこれじゃ五次会じゃない?」
彼女は、喉をコロコロ鳴らして笑う。
「そうかな?」
俺は、小指で頬を掻く。
彼女の前に置かれたのは俺の店の隠れメニュー
"二次会デミグラス"。
結婚式の二次会の予約が入った時だけの特別メニューだ。
彼女がコレを食すのは4度目。
最初は、俺達の結婚式の時だ。
それなら毎年、この日にオレはコレを作っている。
「皆さん、喜んでる?」
「ああっ式の料理より美味しいと喜んでくれてるよ」
「何でデミグラスか聞かれない?」
「・・・妻の得意料理だからと答えてるよ」
俺は、ネクタイをきゅっと締め付ける。
彼女は、寂しそうに、少しだけ嬉しそうに笑う。
「ありがとう。いつも覚えていてくれて」
「忘れないよ。忘れる訳がない」
俺は、彼女に手を伸ばす。
しかし、掴めない。
「毎年作るから・・・だから」
彼女は、にっこり笑う。
「よろしくね」
そして彼女の姿は消えた。
俺は、その場で泣き崩れた。
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