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凡庸な医者には患者の手を握る暇がない
僕の専門は糖尿病で、研究と臨床とを半々くらいの比率で行っているので、それなりに患者さんを診る。というより、医師免許を取ってから20年を超えたが、留学中の6年間を除いては週の半分以上を外来患者さんの診察をして過ごしてきた。
先日敬愛する養老孟司先生の文章を読んだ。最近先生は虚血性心疾患を患われた様だが、そこに結びついてか、医師の診療態度について書いておられたのが興味深かった。
養老先生曰く、今の
鎌倉で家、建てます 〜その3〜鎌倉に必要な住宅性能について
注文住宅建設について、前回の更新から随分日が経ってしまったが、結局僕らの家は順調に完成し、11月中旬に引っ越すことができた。今、こちらで過ごす初めての年末年始を迎えている。
元々同じ鎌倉の海側に住んでいたのが、(津波を懸念して)いくぶん山側の土地を買って家を建てた。鎌倉の土地と言うのは、少し歩くと全然雰囲気が違ってしまうもので、やはり今の土地も前とはだいぶ違った雰囲気だ。以前にも書いたが、海沿い
雑文・ドイツから鎌倉まで
生まれてこの方東京でしか暮らしたことのなかった僕が、留学のため日本を離れいきなりドイツのケルンで暮らし始めたのは2012年4月のことだった。出発した日の東京ではもう桜が咲いていたのに、到着した頃のドイツはまだまだ寒く、その日も気温は3度しかなかったが、金色の日差しが雨上がりの様な透明感をもって夕暮れの街を明るく照らしているのが印象的で、今でもその時感じた感覚をよく覚えている。それは今にして思うと、
もっとみる鎌倉で家、建てます 〜その2〜埋蔵物調査で建築が2年延期になりかけた話
以前の記事で鎌倉に家を建てる、と決めたお話を書いた。その後タイトルの様な問題が起こって危うく土地を手放そうかとまで考えたが、結局一定の解決に至ったので、その経緯を書いておきたい。今(2021年2月現在)鎌倉に土地を買って家を建てようとしている人は要注意です。
さて、前回の記事は住宅ローンを契約します、というあたりまでで終わっていた。その後2020年12月にめでたく土地の売買契約が終わり、晴れ
ドイツ流クリスマスの過ごし方
僕は2012年から2018年まで6年間をドイツに留学して過ごしたので、ドイツで計6回のクリスマスを経験したことになる。そこで見てきた『ドイツ流クリスマスの過ごし方』を周りの人に喋ると結構感心されることが多いので、ここにポイントを記しておきたい。特にコロナ禍の今年は、日本でも参考にできることがあるかもしれない(ギリギリになってしまったが)。
1、クリスマスは家族で過ごす
まず中心となる考え方は
良いGRITと悪いGRIT、やり抜く力と鬱との関係
子供が今5歳なので、子育てに関する記事や、場合によっては子育て本なんかを時々読む。そうすると僕が子供の頃には無かった考え方がたくさん出てきていて、確かに昔に比べると児童心理学なんかも進歩しているだろうし、少なくともいろいろな価値観や選択肢が親の側にあることは子供にとっては良いことだろうと思ったりしている。
この前そんな新しい考え方の一つとしてGRITというもの知った。GRITというのは「やり抜く
研究効率化のための、エクセルを使ったマルチタスク管理の勧め
研究者という仕事をしていてラッキーなのは、自分がその日やることを自分で決められるということだ。しかしそれゆえに過去の僕は、「今よりもっと効率的に仕事を進められるのではないか」「実は今この瞬間にも時間を無駄にしているのではないか」という猜疑心にいつも苛まれていた。研究においては、いかにして論文を早く出すか、という工夫も大事なのだが(以前の記事参照)、僕は鎌倉に住んでいることもあり、ゆっくり仕事をし
もっとみる糖尿病研究と癌研究とを比較してみて
先日、代謝関連のある研究会に参加したところ、ほとんどの演題は癌に関するもので、糖尿病に関する発表は全体の1割にも満たなかった。普段なかなか聴く機会のない研究内容に触れられ刺激的に思った一方で、糖尿病の研究はこれで良いのだろうか、と疑問が湧いたのでこの文章を書くことにした。
僕は糖尿病の専門医だが、基礎研究に関わる様になって既に20年近くが経ち、今では仕事の軸足を完全に基礎研究に置いている。こ
ルーキーズと研究、ライ麦畑でつかまえて
今日『知の逆転』という本を読んだ。『銃・病原菌・鉄』の著者ジャレド・ダイアモンド、生成文法を提唱したノーム・チョムスキー、『レナードの朝』や『妻を帽子と間違えた男』の著者オリバー・サックスなど錚々たる面々のインタビュー集で、ざっくり言えば、世界は今後どうなるのか、教育はどうであるべきか、インターネットが普及する中で社会はどう変わっていくか、という未来のについての意見を、これら偉人たちに聞いてみた
もっとみる鎌倉に住むならどの辺がおすすめか
先日友人が、鎌倉への移住を検討していると言って、下見も兼ねて僕の家に遊びに来てくれた。その時に色々おしゃべりして、具体的に鎌倉のどのあたりに住むのがおすすめか、何がネックになるのか、などをある程度整理できたので、この機会に順を追って記していこうと思う。今回は、住むなら鎌倉のどの辺がおすすめか、ということについて。
一口に鎌倉と言っても、鎌倉市の範囲は意外に広くて、北は北鎌倉を超えて北西に向か
研究不正と医療訴訟と真実について
僕は一度研究不正騒ぎに巻き込まれたことがある。研究不正といえば、STAP細胞の時に随分と世を騒がせた。ちなみにあれについては捏造で間違いないことが証明されているが、個人的には筆頭著者が自分の見つけた「真実」を提示しようとした結果だったのではないか、と僕は推測している。それは言い換えれば、科学的事実と、カッコ付きの「真実」とを混同した過ちの結果ということなのだが、それについてはまたいずれ書こうと思う
もっとみる効率的な研究の進め方
ドイツに行く前、僕は大学の大きな研究室に所属し、毎日夜遅くまで実験をしていた。その割になかなか業績が出ず、苦しい気持ちで毎日過ごした。しかし周りの人たちも同じように苦しんでいたし、教授は「成果が出る出ないに関わらず、とにかく頑張っていることが大事だ」という趣旨のことを言って憚らなかった。その頃の空気は、そんなものだった。
一方で、毎月のようにNatureとかCellとかScienceといった