「エイプリルフール」の嘘は犯罪にならない???
4月1日は「エイプリルフール」。
この日は嘘を言っても良い日。うそをついても許される日といわれており、家族や友人を驚かせるために、うそをついたことがある人は多いと思いますが・・・・これって法令違反にならないのか?
今回は「4月1日」ということでちょっと書きますね。
|年度が替わる
この日は、一般的には会計年度・学校年度の初日ですね。
政府機関、企業などで多くの制度の変更、新設、発足が行われ、異動や新入学など大きな変化が起こる日です。
運用の都合で先の変化が4月の第1週や4月1日を含む3月の最終週の月曜日に行われることもあり、また会計年度を任意に設定することが可能な民間企業では4月以外を節目にしている場合もありますね。
|エイプリルフール
そして有名というか、この日は子どもの頃から「エイプリルフール」で「嘘を言っても良い日」といわれていましたよね。
昔は、この日には嘘を言うのが当たり前という感じでした~(笑)
でも・・・今はどうでしょうか?
もちろん、エイプリルフールなので、フェークもあるでしょうが・・・4月1日に、ただ、あまりにもひどい内容のうそをつき、他人に損害を与えてしまうと刑罰法規に抵触するおそれがあるので、注意が必要です。
|刑罰適用が想定できる事例等
ではどのような場合に「嘘」が犯罪になるのでしょうか?
個別のシチュエーションにより判断されるべきものでなく、なかなか難しい問題を含んではいますが、一般論としては以下のような法令に抵触する可能性があります。
一般的に考えられるのは
偽計業務妨害罪
名誉毀損罪
詐欺罪
虚偽親告罪(虚偽告訴罪)
軽犯罪法違反
などに抵触する可能性があります。
このほか事案によって、特別法である
金融商品取引法違反
などに抵触する可能性もあります。
|どういうことなのか(事例)
エイプリルフールとはいえ、ついた嘘の内容によって他人に迷惑をかけたりしすると問われる可能性のある犯罪の類型を要約して説明すると以下のようになります。
① 偽計入札妨害罪(刑法第233条)
偽計業務妨害とは、人を錯誤に陥らせることにより、他人の業務を妨害することをいいます。
例えば
○ SNSに嘘の投稿で企業の信頼度を低下させた事案
SNSに「甲社が倒産した」と、うその情報をSNS上に投稿した。その結果甲社の株が下落した。
このように、掲載した「甲社が倒産した」とか「健康被害を生じさせている」などという「嘘」により、その企業の正常な業務が妨害された場合には、刑法233条の偽計業務妨害罪に該当する可能性があります。
※法定刑は3年以下の懲役または50万円以下の罰金
この事例の場合のように、株式の相場簿変動を生じさせ株価が下落した場合は、
「金融商品取引法違反」
に問われる可能性もあります。
この法律では、「ある特定の株式の相場変動を図ることを目的」として、証券取引や上場会社などに関する事実関係の未確認情報や合理的な根拠のないうわさなどをネット上などに流す行為を「風雪の流布」、『相場操縦行為』として禁じています。
※ 法に違反した場合、同法197条1項5号に基づき、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金またはそれらの併科が規定される。
② 名誉毀損罪(刑法第230条)
名誉毀損罪の成立要件は、公然と行われること、事実を適示していること、人の名誉を毀損していることであり、その事実の有無は問題となりません。
公然とは、不特定又は多数人が知りうる状態であり、SNS上の発信などは公然と行われたといえます。
事実とは、人の社会的評価を害するに足りるものである必要があり、例えば、「甲が逮捕された」や「甲という店は原産地を偽っている」などということです。
また、同様に、いわゆる「フェイクニュース」や「デマ情報」等を流布したことにより、他人の社会的評価を傷付けた場合には、名誉毀損罪(刑法 230 条)に当たる可能性があります。
③ 詐欺罪(刑法第246条)
詐欺罪は、「人を欺いて財物を交付させたり、財産上不法の利益を得たりする行為(例えば無銭飲食や無銭宿泊を行う、無賃乗車するなど、本来有償で受けるべき待遇やサービスを不法に受けること。また債務を不法に免れるなどすること)、または他人にこれを得させる行為を内容とする犯罪のこと」です(刑法第246条)。
なお、詐欺罪の刑罰(法定刑)は「10年以下の懲役刑」と規定されており、罰金刑がなく罰則の重い犯罪です。
例えば
「本日中に1万円の掛金を振り込めば10日後に倍返し」、「実業家の○○さんが推薦する投資」などと虚言を用いて投資を誘導するような内容をSNSに投稿すると詐欺罪に問われる可能性があります。
④ 虚偽親告罪(刑法第172条)
人に「刑事又は懲戒の処分を受けさせる目的で、虚偽の告訴、告発その他の申告をした者は、3月以上10年以下の懲役に処する(刑法第172条)。」
という犯罪です。
例えば、特定の人に罪を着せようとして虚偽の告訴告発をする行為をしたなどがこれに当たります。
⑤ 軽犯罪法違反
「嘘」で「犯罪や災害の発生等の事実を、公務員に申し出る行為」を軽犯罪法で禁止されており、罰則があります。
この種事案において、犯人を特定してSNSに掲載・流布した場合には名誉棄損に当たる可能性がありますが、人物の特定(個人の特定)なく、告訴状の提出もない場合には軽犯罪法違反となる可能性があります。
虚偽告訴罪と比べると個別の被害者がいない点で異なり、いわゆるいたずら目的の場合が多いので、法定刑も拘留または科料と比較的軽めになっています。
以上は代表的なものですが、このように個別の「嘘」の内容によって、刑法やその他の特別法に違反する行為になる可能性があるので、エイプリルフールとはいえ要注意ですね。
|嘘と民事責任
上記のように、エイプリルフールで安易についた「嘘」が刑事事件となる可能性があるほか、実際にSNSに投稿した内容により
○ その企業等が実際に業務を妨害されて被った損害等
○ 名誉毀損の対象となった個人が被った損害等
などについては、民法第709条の不法行為に基づく損害(慰謝料)賠償責任を負う可能性があります。
|拡散した人の責任
他人が投稿した「嘘」を「ウソ」と知りつつ「リポスト」「いいね」などをすることで投稿されている「嘘」を拡散した人がについても、同様の犯罪に問われる可能性があるのでこれも要注意です。
拡散しただけでも公然と事実を適示したり、虚偽の情報を流布したりすることと変わりないからです。
|おわりに
「エイプリルフール」だからどんな嘘をついても許される?
と思いがちかもしれないが、上記のような犯罪に該当する可能性があるので簡単に片付けられない問題をも含んでいることを理解しておくことが必要です。
「エイプリルフール」の「嘘」とはいえ、エイプリルフールを理解しない人、信じやすい人など様々な人が、SNSに投稿された「嘘」を信じてしまうこともあるのです。また、投稿した「嘘」が大きく膨れ上がったという事例もあります。
ジョークのつもりの「ウソ」が大変大きな現象を引き起こすことも頭に入れておきましょう。
エイプリルフールであることを投稿のどこかに「#エイプリルフール」であることを示す表記をするなどの方法を講じることが必要ですね。