口座の売買や他人に譲渡するための口座開設行為は犯罪です!
ニュースで「SNSで知り合った人に口座を売った」として、犯罪収益移転防止法違反疑いで男性が逮捕された事件が報道されていたが、皆さんは「犯罪収益移転防止法」ってご存じですか?
もしかすると犯罪に手を染めてしまうかも・・・ということで、「犯罪収益防止法」についてひもといてみましょう。
|犯罪収益移転防止法とは
犯罪収益移転防止法(犯罪による収益の移転防止に関する法律、略称「犯収法(はんしゅうほう)」)は、テロ資金供与やマネーロンダリングといった犯罪組織に関わるお金の動き、あるいは振り込め詐欺を始めとする犯罪によって得られたお金の移動を規制するための法律である。
|犯罪収益移転防止法の目的
犯罪収益移転防止法が制定された目的は、「犯罪者や犯罪組織、テロ組織などへの資金供給を絶つことで犯罪行為による被害を減らし、また、犯罪行為で得られたお金がビジネスで使われることがないようにしよう」というもの。
一般的に、犯罪の被害者から犯人達の手に金が渡ると、その後複数の口座などに配分・送金されたりすることで、奪われた金がどこに行ったのかわからなくなってしまう。
また、「資金洗浄」いわゆるマネロン(マネー・ローンダリング)により、犯罪被害品であることが分からなくなってしまい、経済取引などに潜在化されてしまうことになり、被害者の救済が困難になってしまうのだ。
なお、マネロンとは「犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙等を逃れようとする行為」である。
(警察庁HPより抜粋)https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/hougaiyou20240401.pdf
|口座売買等は犯罪
銀行口座を作るときの本人確認や利用目的の確認が以前より厳しくなったと感じている人もいるのではないかと思うが、銀行等の金融機関において本人確認や利用目的の確認が厳しくなったのは「犯罪収益移転防止法」が原因である!
口座開設時の本人確認などが甘く、簡単に口座を作ることができるとなると、犯罪組織に悪用されてしまうリスクが高くなる。
そのようなことを背景に、「犯罪収益移転防止法」では金融機関側にも、本人確認強化などの対策を求めているのだ。
|口座を他人に使わせるために開設・譲渡は違法!
他人に使わせる目的で口座を開設することはもちろん、すでに持っている口座を他人に使わせるため販売する行為、既存の口座の利用者側が虚偽の利用目的を答えたり身分を偽ったりする行為は犯罪なのだ。
口座売買については、犯罪収益移転防止法違反であり、口座を売った側・買った側の双方が処罰の対象となる。
売買された口座は、振り込め詐欺やマネロンなどに使用されることになるので犯罪に加担することになるのだ。
|犯罪収益移転防止法の処罰対象
前記とも重複するが、この法律では
○ 「他人になりすまして銀行などの特定事業者との間における預貯金契約についての役務の提供を受ける目的または第三者にこれをさせる目的」を相手方が有することを知りながら、その者に対して預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、または提供すること
○ 通常の商取引や金融取引としておこなわれるものであることなどの正当な理由がないのに、有償で預貯金通帳等を譲り渡し、交付し、または提供すること
を処罰対象にしている(同法第28条第2項)。
たとえば、SNSや匿名掲示板で募集されている高収入のアルバイト案件に応募して自分名義のキャッシュカードや預貯金通帳を売り渡してしまうと、犯罪収益移転防止法違反となるのだ。
|犯罪収益移転防止法違反の法定刑
犯罪収益移転防止法第28条第2項違反の口座売却の罪の法定刑は、
「1年以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑(併科あり)」
である(同法第28条第1項、第2項)。
口座の売り渡しを業として反復継続して行っている場合には、法定刑は
「3年以下の懲役刑もしくは500万円以下の罰金刑(併科あり)」
である(同法第28条第3項)。
口座の売り渡しをするように人を勧誘したり、または広告その他これに類似する方法によって人を誘引した場合は、
「1年以下の懲役刑もしくは100万円以下の罰金刑(併科あり)」
である(同法第28条第4項)。
※併科とは懲役刑と罰金刑の両方が課せられること。
|詐欺罪には「10年以下の懲役刑」
口座開設時に誰かに売り渡す目的を隠すなど虚偽の申告をして、金融機関の職員を騙して口座を作った場合には詐欺罪に問われる可能性もある。
詐欺罪の場合の法定刑は「10年以下の懲役刑」である。
詐欺罪には罰金刑がないため、一旦起訴されてしまうと執行猶予がつかなければ懲役刑に処せられるという重罪である。
|口座不正利用に伴う利用停止・強制解約件数
➤銀行口座の凍結
ヤミ金融、特殊詐欺などに口座が不正利用されていたことが発覚し、銀行から口座の利用停止・強制解約などの措置を取られるケースは意外に多い。
一般社団法人全国銀行協会のデータによると、令和4年度だけで口座不正利用に伴う利用停止・強制解約等の措置が取られた口座数は合計75,621件である。
口座売買で使われた口座は高確率で犯罪行為に悪用されるため、売買を行った時点で銀行からのペナルティを受けることになる可能性は高いといえる。
|おわりに
最近の手口としては、インターネット、ダイレクトメールで手軽に高収入をうたって、口座売買をもちかけてくることが多いといいます。
口座売却、他人になりすまして口座を作るなどした者も罪になるので、「簡単に収入が得られる」といった怪しい取引には裏があると考え、間違っても銀行口座の売買には応じないことです。
口座の売買は犯罪であり、売る側も罪に問われます。
また、使わなくなった口座がある場合には早めに解約しましょう。
参考:
https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/jafic/hourei/data/hougaiyou20240401.pdf
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/m_laundering/index.html