見出し画像

最速で新しい職場環境に適応するための技術

【サイボウズ式編集部より】この「ブロガーズ・コラム」は、著名ブロガーをサイボウズの外部から招いて、チームワークに関するコラムを執筆いただいています。今回は、日野瑛太郎さんによる「新しい環境にすばやく適応できる人がおさえるべきポイント」について。


異動や転職といった事情で、今までいたチームを離れて新しいチームに移らなければならなくなることがあります。環境が変われば、また新しくいろいろなことを学習し、環境に適応していかなければなりません。仕事のやり方を覚えることはもちろん、人間関係も基本的には最初から構築しなおす必要があります。

僕が以前働いていた会社は異動がかなり頻繁にある会社だったので、僕自身何度かチームを移る経験をしています。すばやく新しいチームに適応できた異動もあれば、なかなか新しいチームになじめずに苦労したこともあります。新しい環境へすばやく適応ができると、自分が嬉しいだけでなく新しいチームのメンバーも喜んでくれます。すばやく環境に適応することはとても重要です。

世の中には、「環境の変化」にすばやく適応できる人となかなか適応できずに苦労する人がいます。両者の違いはいったいどこにあるのでしょうか。僕自身の経験や、あるいはチームに素早く溶け込むことができた人を分析してみると、新しい環境にすばやく適応できる人は一定のポイントをおさえていることがわかります。今日はそんな「最速で新しい環境に適応するための技術」について考えてみたいと思います。

まず把握すべきは「人間関係」

チームを移った際に、一番最初にやらなければならないことはなんでしょうか? 仕事のマニュアルを読むことでしょうか? それとも、プロジェクトの全体観を把握することでしょうか?

どちらも大切なことではありますが、すばやく新しい環境に適応したいのであればそれ以上に大切なことがあります。それは、新しいチーム内の人間関係を把握することです。名前や役職はもちろんのこと、各メンバーがチーム内ではどのような「キャラ」なのか、みんなから頼られている人がどの人で、(いればですが)要注意人物はどの人なのか、といった情報は可能な限り素早く・正しく把握する必要があります。

仕事そのものよりも人間関係の把握を優先して進めなければならない理由は、それがそもそも仕事をはじめるための前提になるものだからです。余程の能力がない限り、新人は誰かの力を借りずに完全で一人で立ち上がることはできません。質問をすべき時にそもそも誰に聞けばよいのか、どのような質問の仕方をすればよいのかといった勘所は、人間関係を把握することではじめてわかります。人間関係の把握は、チームで働くための大前提だと言えます。

そうは言っても、どうやって把握すればよいのかわからなくて困るという人もいるでしょう。前のチームのメンバーなど自分のよく知っている人が新しいチームのメンバーを知っているのであれば、その経路で情報を入手するのが手っ取り早いです。そのような共通の知人がいないのであれば、新チームの中で自分と年齢や立場が近い人をひとり捕まえて、ざっくりと聞いてしまうという手もあります(たとえば「◯◯さんって、どういう人ですか?」というように)。必ずしも確度が高い情報が得られるとは言えませんが、過去にやりとりされた社内メールやSNSなどを見てみるというのも時には役に立つかもしれません。

わからないことは「自分で調べること」と「人に聞くこと」に分類する

人間関係を把握したら、いよいよ仕事内容を覚える段階に進みます。前のチームでやっていた仕事と近い仕事を任せられたというのであればあまり問題はないかもしれませんが、チームが変わることでまったく種類の違う仕事を一から覚えなければならなくなることも少なくありません。

そういう場合は容易に「わからないことばかり」の状態に陥ります。会議で出てくる用語の意味がわからない、手続きの方法がわからない、みんながすごいと言っていることの何がすごいのかがわからないなどなど、新しい環境には「わからないこと」がほぼ必ず存在します。

新しい環境に素早く適応したいのであれば、「わからないこと」をそのままにしておいてはいけません。わからないことに出会ったら、とりあえずわからなかったことをメモし、あとで必ず解決させます。これをどれだけ意識的にできるかが、新しい仕事を素早く覚えられるかに関わってきます。

「わからないこと」に出会った場合、解決方法は大きく2つに分かれます。「自分で調べる」か「人に聞く」かです。ある「わからないこと」を解決する際に、どちらを選択するかは重要です。ググればすぐにわかることを人に聞いてばかりいると、鬱陶しい人のように思われます。一方で、チームの独自ルールや用語などは人に聞かなければ絶対にわかりません。こういう情報は人に聞いて解決しないと著しく時間をムダにします。

用語などがどちらに属するものなのか判然としない場合は、とりあえず最初にググってみるというやり方がおすすめです。情報が出てこなかったり、世の中一般で使われているニュアンスとチームでの使われ方が違うようであればそれはほぼチーム独自の用語です。その場合は人に聞いて解決しましょう。また、質問はある程度まとめて一気にするようにすると、相手に鬱陶しく思われずに済みます。

最初の信頼獲得がカギ

ファーストキャリアでいきなり「自分に合った仕事」に就こうとしても、実際には失敗することのほうが多いです。僕の大好きなドラッカーの言葉に「最初の仕事はくじ引きである」という言葉がありますが、この言葉ほど就職活動を的確に表現したものはないでしょう。それほど、就職活動は運に左右される要素が大きいのです。

では、実際に運が悪くて最初の仕事選びに失敗してしまった時はどうすればよいのでしょうか? これは簡単です。最初のくじ引きで失敗したのであれば、もう一度くじを引き直せばよいのです。そうやって試行錯誤していけば、いずれ自分の適職に出会える可能性も高まります。ファーストキャリアに固執するのは得策ではありません。

年配の方などはいま未だに「一度就職した以上、仕事がどんなに自分に合っていないと思っても3年は黙って勤めろ」と言うようですが、これは時間の浪費という側面のほうが強いです。現実的な話をすると、20代前半から半ばぐらいであればスキルではなくポテンシャルを売りにした転職が可能なので、若いうちの貴重な時間を明らかに自分に合わない仕事をするために費やすべきではありません。

就労経験がない学生のうちよりも、社会人になってからのほうが「働くこと」そのもののイメージが鮮明になっているので、仕事選びの精度は高くなっていると言えます。就職活動が終わったら仕事選びは終わりと考えるのではなく、就職してからもずっと仕事選びを続けていくという姿勢でいることが大切です。

ファーストキャリアはあくまで長い職業人生の最初の一歩

ファーストキャリア選びは、結局のところ長い長い職業人生の最初の一歩でしかありません。最初に一歩踏み出す方向を間違えたからといって、修正が効かないなんてことは絶対にありません。逆に、最初に一歩踏み出す方向が合っていても、その後に進む方向を間違えると目的地にはたどり着きません。

職業人生は学生の期間よりもずっと長いものです。その長い職業人生が、ほんの数ヶ月の就職活動だけで決まるようなことはありません。就活生のみなさんは、もっと肩の力を抜いて最初の仕事を選んでいただければと思います。

※この記事は、サイボウズ式特集「ブロガーズ・コラム」の連載記事として2015年2月16日に公開されたものです。

イラスト:マツナガエイコ

👇「ブロガーズ・コラム」noteマガジンこちら!

👇日野さんの他の記事はこちら!