カムチャッカの透き通った自然の中で「消失の惑星【ほし】」
<文学(16歩目)>
現代を生きる女性たちの思いがぎっしり詰まったプレゼントをカムチャッカの透き通った自然を舞台に楽しむ。(紀行文の目線でも秀逸です)
消失の惑星【ほし】
ジュリア フィリップス (著), 井上 里 (翻訳)
早川書房
「16歩目」はリーダビリティが素晴らしい、とても現代的な作品です。
舞台は、全てカムチャッカ半島。登場人物もカムチャッカ半島の人々。
となると、豊かな自然のみがアクセントと考えていたのですが、それは甘かったです。
ロシア人の幼い少女二人の誘拐でスタート。凄惨なクズのお話しかと思い、娘を二人持つ私はスタートから攻撃的な立場で入りました。(私は双子の娘を持つ親として、性犯罪者は「クズ」「ゴミ」とはっきり書きます)
サイアクのクズの話を読まされるのかな・・・と感じていたのですが、この作品の最大の特徴なのですが、被害者の家族とその周囲の人々の物語が全て「女性」の目線で描かれていることでした。
ロシアと日本では女性が置かれている環境や制約は異なると思う。
でも、登場するどの女性の気持ちもすごく身近に思えて、他人ごとではなく感じられた。素晴らしい自然が沢山描かれているので、「カムチャッカ」なのだと頭では思うが、登場人物の心情はとても身近に感じた。
「女性」の悩みは「カムチャッカ」の南の島国(日本)でも変わらない。
カムチャッカ半島は、北部の地峡(半島が狭くなった箇所)に道路等が無い特殊な半島。つまり、外に出るには「航空機(空港から)」と「船」しかない袋小路のような場所。(北部を陸路でシベリアには抜けられない)
そこでの誘拐が解決しないとなると。。。サイアクなとても陰鬱な気持ちで、読み進みました。
カムチャッカ半島の光線が乏しい淡い風景の中での陰惨な物語を予想しながら結末にいたります。
「女性」たちのこころの動きの描写がとても素晴らしい作品で、「立場によって異なる女性の生きざま」が物語を深くさせています。
リーダビリティが非常に良い作風なので、ジュリア・フィリップスさんの次作以降も期待しています。
「愛(love)」を濃密に感じさせる作品です。そして読後2年を経過していますが、カムチャッカの素晴らしい自然が目にありありと残る美しい作品です。
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