詩「伝わらない」
丁寧に時間をかけて
艶やかに包装した言葉を
君はいらないと言って捨てた
こんな事は誰にでもある
僕は自分の空を黒くは塗らなかった
代わりに少しだけ穴があいた
電源をつけたラジオを放置して
庭に出るひと
若者が歌に紛らせたメッセージを
聴く者は居なかった
流れているのに
流れているのに
確かに そこに音として
空気は震えて泣いていた
一瞬で消滅する無数の星
僕はつけっぱなしの部屋で
暗号の様な紙切れ一枚を拾った
そこに託された想いを想像するしかなかった
言葉はうねり大量に流れて行く
消費できない流行り物の様に
斬新で新しい懸命な言葉も
照れ隠しの裏の言葉も
氷に残った熱の言葉も
誰かに伝えようとした言葉も
ちゃかしてしまった真意の言葉も
僕が時間をかけて包装した言葉も
行き着く先を知らぬまま
滔々と流れて行く
流れて行く
流れて行くが
消えはしない
時の端に刻まれている
大切な人に理解されないまま
誰かが落とした忘れ物の様に
ただ
僕は君に伝えたかったんだ
心を砕いて
あの月を太陽に変えてしまってでも…
ただ
それだけだった