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ドイツのオクトーバーフェストの全体像

「酒が出たぞ!」(O'Zapft is!)

いまちょうどこの瞬間に、この掛け声とともにドイツのオクトーバーフェストが始まった。

会場であるミュンヘンの市長が、ビア樽に木槌で栓を打ち込んで開会を宣言するときに発声する決まり文句。今日の現地時間で12時、日本時間だと19時に開会が宣言される。

今回の投稿はドイツのオクトーバーフェストの全体像はどんなものか?についての記事。3年前に投稿した記事に手を加えて、充実させた内容で投稿してみる。

オクトーバーフェストの起源

このお祭りには、元々の原型となる風習があった。

ずっと昔の冷蔵技術がない時代には、 気温が上がる春から夏の時期にビールが醸造できなかった。だから暑くなる前の3月に、夏に飲むためのビールを作り置きしていた。そのビールは長期保存しやすいように、通常のビールよりもアルコール度数を少し高くして、6%程度で醸造。そのアルコール度数の高いビールは、醸造する時期の3月(ドイツ語でメルツェン)から名前を取って、メルツェンと呼ばれる。

春から夏の気温が高い時期には、人々はこのメルツェンをずっと飲む。そして9月下旬には気温が下がって醸造を再開できるから、その時期に3月に作りだめした古いメルツェンを全て飲み切るために、ビール祭りが開催されていた。これがオクトーバーフェストの原型。

だからオクトーバーフェストでは、その時の風習のなごりで今でもアルコール度数が高いメルツェンを飲む。

普通のビールよりもアルコール度数が高くて色が濃い

その後、1810年にミュンヘンを中心とするバイエルン王国で、皇太子(ルードヴィッヒ一世)の結婚式のお祭りが行われた。このお祭りと、元々あったこの時期にメルツェンを飲み切る風習が合わさって、現代まで続くオクトーバーフェストになった。

会場はミュンヘンの中心部にある「ヴィーズン(芝生)」と呼ばれる広大な空き地。この場所は基本的にオクトーバーフェスト会場のための専用敷地になっていて、開催されない時期の大半は空き地で利用されていない。めっちゃ都心部にあるにも関わらず。

4つのエリアでの楽しみ方

会場全体は、大きく分類すると3つの部分が混在している。それに加えて、会場外でもイベントが。

①ビッグテント
②ビアレストラン
③移動遊園地
④会場外のパレード

では、それぞれ順を追ってみていこう。

①ビッグテント

巨大なテントの中でビールと食事をする。これがオクトーバーフェストの代名詞になっているビッグテントの会場。

お昼くらいからはバンドも出てきて、この地方(バイエルン地方)の伝統音楽を演奏。ビッグテントには比較的若い人たちが多く、「ザ・オクトーバーフェスト」的に大いに盛り上がる。混雑する週末は既に午前中で満員になってしまうことが多い。更に夕方以降は、本格的な酔っ払いで満ち溢れてカオスな感じ。

プレッツェルをモグモグするべし

オクトーバーフェストの会場では、独特な形のパン、プレッツェルが売られている。特にオクトーバーフェスト会場のものは大きく、日本ではお目にかからないサイズと味。太い部分はモチモチで味わい深い。ぜひお試しを。

②ビアレストラン

ビッグテントとは別に、小さめの小屋もたくさんある。これら小さめのビアレストランでは、現地のドイツ人たちがこの地方の伝統的な雰囲気の中で、落ち着いて食事を楽しんでいる。個人的にはこちらの方が好み。

伝統衣装に身を包む来場者

これらの個性豊かなレストランの中で、食事をしたり、ビールを飲んだり、バンドの演奏を聴いたり。おっと、もちろん友だちや家族とのおしゃべりと笑いも欠かせない。

地元伝統の山小屋風の建物が多く、料理はソーセージ、仔牛、鴨、ジビエなど、それぞれの小屋の得意分野に特化した料理が出てくる。

ビアレストランは、ビッグテントほどは混雑していないことが多く、週末であっても昼過ぎに入っても座れることもある。それほどのカオス状態ではないので、子連れの場合はこちらの方が無難かな。

ブロートツァイトテラーと呼ばれる地元料理

ホップを探せ!

ビールの原料といえばホップ。オクトーバーフェストの会場では、ホップが装飾に使われているのを目にすることができる。

たとえば下の写真でいえば、屋根からぶら下がっている輪になっている照明の上に、ホップの飾りがついている。

初めて訪れると見慣れないものが多く、情報量が多すぎて見落としがち
ホップ+レープクーヘン+プレッツェルという三役揃い踏みの飾り

③移動遊園地

本格的な移動遊園地が設置され、子どもはこちらで楽しむ。ジェットコースターや観覧車などもあるし、射的コーナーやお菓子の飾り(レープクーヘン)を売るお店など、多彩な出店がたくさん出ている。

ヨーロッパらしさを感じる空中ブランコ

では会場を上空からみてみよう

ビッグテントのエリア
移動遊園地エリア

④会場外のパレード

それではオクトーバーフェストの会場を出て、会場外でのイベントをみてみよう。

有名なのは2日目にミュンヘン市内で行われる民族パレード。ビールの醸造所がフェスト用のビールを馬車に積んで運んだり、近隣の村またはヨーロッパ一円から集まった人たちが、それぞれの伝統の民族衣装や中世時代の衣装を着たりして、行進する。

馬車の後部に乗っている方々は、高名な政治家か地元の名士と思われる

ぜひ動画でもご覧あれ。

16歳はオクトーバーフェストデビューの年

では、最後は僕の記事らしく、現地の人の話を。

実はちょうど昨日、ドイツの友人からワッツアップ(LINEみたいなもの)でメッセージをもらった。彼女は僕と同年代のアラフィフ女性。一人娘が今年16歳になった。

ドイツ人の友人
「元気?こっちは夏が戻ってきたような陽気になって、すっかりオクトーバーフェスト日和!でね、ビアンカ(娘さんの名前)が今年は16歳でしょ。オクトーバーフェストにデビューする年なのよ」

ドイツではビールなど低アルコールの飲みものであれば、16歳になると自由に飲むことができる。その前に14歳以上になると、親が同伴であれば飲むことができるんだけど、やはり親の目を離れて友だちと一緒に自由に飲みたいもの。なので彼女の住む地域では、16歳になると友だちだけでオクトーバーフェストへ遊びに行ってデビューするのが慣習になっている。一種の通過儀礼ですな。

ただし、彼ら/彼女らは未だアルコールに慣れていない上に、友だちと盛り上がって飲み過ぎてしまう子どもたちも。楽しい経験になるケースもあれば、限度を超えて飲んでしまって色々と失敗するケースもあると聞く。

ドイツ人の友人
「ビアンカは、もう待ちきれない!って楽しみにしているんだけど。さて、あの子の場合はどんな思い出になることやら。とにかく、山のような数のティーンエイジャーたちがみんなで一緒に行って、何かあったらお互いに助け合いながら乗り切るみたい。だからちょっと安心よね」

僕はビアンカちゃんが小学校低学年の頃から知っているけれど、とうとう1リットルの巨大なビールグラス(マスビール)を抱えて飲む年齢になったのか・・、と感慨深い。

まとめ

いかがだったでしょうか、ドイツのオクトーバーフェスト。

元々は現地の人たちのお祭りで、地元の文化として浸透している。近年では観光客もたくさん訪れるようになって、2週間の期間中に600万人が来場。1〜2日では全体像すら把握できないほどの規模。ぜひ一度、ご経験を。

by 世界の人に聞いてみた

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