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もしもヨーロッパを2つに分類するならば

いまフランス・パリでオリンピックが開催されている。

そんなフランスは、ヨーロッパの国々の中でどのような特徴があるのか?いや、そもそもヨーロッパの国々って、一つひとつの国が全然違う特徴をもっているのか?それとも共通の傾向によって分類できるのか?

今回は、かな~り乱暴にヨーロッパを2つにグルーピングしてみて、ヨーロッパの国々の共通点と違いを浮かび上がらせることにトライしてみる。

多様性の中での共通点

僕がドイツに住んでいた時の経験から、ヨーロッパは驚くほど多様性に満ちた文化や異なる価値観をもった国々がひしめき合っていると思うんだけれども、よ~く見てみると、地域によって共通する部分に気づく。それでヨーロッパって、乱暴にいえば大きく2つに分けることができるんじゃないかと考えるようになった。

いや、その表現は正しくない。正確に言えば「ヨーロッパの人たち自身が、自分たちを2つのグループに分けている」と感じることがたびたびあった。だから、その時に僕か感じた彼ら/彼女らの見方を紹介する、といった方が正確だろう。

具体的には、以下の2つのグループ。なお、話をシンプルにするために、東ヨーロッパの国々(スラブ系の国など)は除外している。東ヨーロッパ在住のnoteの人たち、ごめんなさい。

①ラテン系のグループ

イタリア・スペイン・フランス等の国々。地理的にはヨーロッパの南や西側に位置している。

夏のイタリア

②ゲルマン系のグループ

ドイツ・イギリス・オランダ・北欧等の国々。地理的にはヨーロッパの中央や北側に位置している。

夏のイギリス

と書いてみたものの、そもそもこのグルーピングに引っ掛かりを感じる人もいることは知っている。たとえば日本の中でも、関東の人と関西の人でグルーピングして特徴を語ろうとしたら、「いやいや、関西っていったって大阪・京都・兵庫を一括りになんてできへんで~。それぞれに特徴があって・・・」という人も当然出てくるだろう。

今回のグルーピングもそれと似たようなもの。かなり乱暴にまとめていることは重々承知の上で、取っ掛かりとして敢えて分かりやすく表現していることをご理解願います。

さて、これらの2つのグループは、それぞれに傾向がある。

(1) 身長

ラテン系のグループの人は、大柄なイメージがあるヨーロッパの人たちの中では、平均的にみれば身長はあまり高くない。一般的な日本人の体格とそれほど違わない人も見かける。

一方でゲルマン系の人は、骨格からなにから概してでかい。僕が職場で一緒に働いていたドイツ人男性同僚たちのうち、半分の人は190cmオーバーだった。僕の上司だった人も身長2m。ただでさえおっかない人なのに、その身長も相まって威圧感がすごかった。その後で上司が代わり、後任の上司は小さくなったからその点では心理的にホッとしたことを憶えている。まあ、小さくなったっていっても195cmだったけど。

(2) 食べ物

ラテン系の国では、概して食事がおいしいと思う。食べる人も、味に対するこだわりが強い。まあ、そもそも一般論して暖かい国の食べ物はおいしいといえるのかも知れないが。

ゲルマン系のグループは、必ずしも食事がおいしいわけではない。「味付け」というものは「=どれだけの量の塩とコショウを振りかけるかが全て」だと思っている人も。

(3) お酒

ラテン系の国は南の方に位置するから温暖で、果実ベースのお酒がメイン。主にワイン(果実=ぶどうがベース)が飲まれる。蒸留酒は、例えば果実で作られるフランスのブランデーやイタリアのグラッパなど。

ゲルマン系の国は北の方に位置するから寒冷で、穀物ベースのお酒がメイン。例えばドイツのビール(穀物=麦がベース)。蒸留酒では、イギリスのウイスキーも麦などが原料。北欧ではウオッカ(穀物=麦・芋ベース)も飲まれる。

(4) 言語

ラテン系のグループは、それぞれの言語の間に文法や単語の共通点が多いらしい。たとえばイタリア人とスペイン人は、それぞれ母国語で会話した場合でも、お互いにそれなりに理解できると聞く。フランス語は少し違いが大きいようだが、フランス人いわく「それでもイタリア語やスペイン語は単語が似ているから、想像で補えばなんとなく理解できる」って言っていた。

ゲルマン系のグループの人々は、概して英語がうまい人が多い。というのも、文法的にいえば英語(=イギリスの言語)はドイツ語がルーツになっているらしく、それゆえドイツ人の多くは英語がとても上手。そしてドイツ語に限らず、ゲルマン系の言語はルーツが似ているので、みなさん母国語に近い英語が上手なようだ。

おもしろいのが、ドイツ人は時々英語をしゃべりながら、ドイツ語の単語が混ざったり、語順がドイツ語と同じになったりすることがある。それの意味するところは、ドイツ人は頭の中でドイツ語からきっちりと切り替えずに英語を喋っている(それでも喋ることができる)ということだと思う。

逆に、ラテン系の国の人が英語をしゃべると、一般的には英語のレベルが落ちる。そもそも、ラテン系の言語の発音は英語とかなり違っているようで、母国語の訛りが顕著に出る。

あと、声を出す方法、つまり発声方法も違うかな。ゲルマン系の人たちは、「喉」で発声する傾向がある。ドイツ語もそうだし、英語も。喉で声を出すから、声に迫力があってよく通る。

一方でラテン系は、ゲルマン系の言葉に比べると「口」や「鼻」を使って発声しているように聞こえる。

ちなみに、日本語をはじめアジアの言語は「口の先」で発声すると言われている。アジア人の英語が聞きにくい原因の一つは、発声方法が英語と母語で大きく違っているからだと思う。

(5) お国柄

ラテン系の国は、日本人の基準からみると時にカオスな印象を受ける。たとえば、車の運転や行列の秩序は、いずれもフリーダムというかワイルドというか、そんな印象を受ける。「個人」を尊重する価値観が強いからなのか。

ただ、人々が「そもそも世界はそんなもんだ」という前提を持っているからなのか、ラテン系の国々の社会はそれでも今日もなんとか回っている。

そんなこんなで、ラテン系の国をみていると、「人間らしさ」って何だろう?という根源的な問いに対する自分なりの答えを見い出すのに最適な国々、と僕は感じている。

ゲルマン系の国は一般的に秩序だっていて、ルールを守ることを良しとする価値観があると言えるかな。地域や社会の共同体の中で良き一員であろうという傾向を感じる。それはそれで生活しやすし、良い社会だなと感じ入ることが多い。

そうそう、あとゲルマン系の国々は自然を愛して大事にする傾向を感じる。

ラテン系とゲルマン系のハザマで

このラテン系とゲルマン系の間に位置しているのが、フランスとドイツの間くらいにある、アルザス地方。

この地方は地理的にはフランスなんだけど、ちょうどラテン系とゲルマン系の境に位置している。過去にはドイツが占領した時期もあったという歴史的な経緯もあって、フランス文化がベースだけども、ドイツ文化がかなり入っている。という「異質なものが混ざっている」変わった地域。

アルザス地方

面白かったのが、アルザスの人たちが喋るドイツ語。フランスなのでフランス語が基本なんだけど、上記の歴史的な経緯もあってレストランなどではドイツ語もよく通じる。

ただ、やはり発声の基本がフランス語なので、口や鼻で発声する。そんなアルザスの人々がドイツ語を喋ると、ドイツ人たちが喋る迫力ある野太いドイツ語ではなく、なにやら柔らかくて洗練された上品なドイツ語。言語って発声方法が違うだけで、印象がガラッと変わるもんだなぁと思った。

まとめ

さて、如何だったでしょうか。ヨーロッパを2つに分類するならば、ラテン系とゲルマン系にグルーピングできるのでは、という話。

今回の記事を書きながら、そういえば昔に書いたことがあったな・・、と思い出して調べたら、予想以上にこの切り口で何度か記事を書いていた。なので、それぞれの項目に昔の記事のリンクを貼っておいた。

あと繰り返しになるけれど、かなり乱暴にグルーピングしているので、本当はスッキリと分けられるものではない、という前提でご覧ください。

さて、僕から見ると、これらグループ間において「優劣」というものはなく、あるのは「違い」や「個性」。ヨーロッパではその違いや個性を日常的に目の当たりにする機会が多い。

そして興味深いのが、人は「隣の芝は青く見える」ということ。

いまも仲良くしている、あるドイツ人の元同僚(女性、アラフィフ)は、僕からみると「良きドイツ人」を体現している。友人や共同体をとても大事にして社交的な毎日を送りながら、ドイツ人らしく秩序を重んじるキッチリした生活をしている。

それでも、僕が彼女に「もしも次の人生を好きに選べるんだったら、どこで生まれたい?」って聞いたら、「次の人生はスペイン人で生まれたい」って。意外とラテン系の国を選んできた。

彼女がスペイン人として生まれたいと考える理由は、いわく「ドイツよりも人間らしさに溢れた社会で生活したいから」ということらしい。でも僕からみると、彼女はドイツでとても良いバランスの人生を送っているとは思うんだけれどね。。。

ということで、ヨーロッパの人たちもラテン系とゲルマン系のハザマで揺れる心がある様子。

でも、そうやって揺れる心自体が、多様性が本質的に持つ良さや楽しさを表しているんじゃないかな、と彼女の話を聞きながら思った。

彩り溢れるアルザスの街

by 世界の人に聞いてみた

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