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コロナ禍の経営者と人事担当者が向き合うべき3つのモヤモヤとは?

『組織と働き方を「変える・変えない・先伸ばす」さて、どうする?』の「はじめに」 先行公開

9月11日(金)に発売される新刊『組織と働き方を「変える・変えない・先伸ばす」さて、どうする?』の「はじめに」の一部を先行公開します。

はじめに

経営者や人事担当者は様々な悩みを抱えている

◎ 会社は社員の健康や働きやすさにどこまで配慮すればいいのか?
◎ 在宅勤務・フレックスタイム・フリーアドレス・副業など、働き方の変化が生産性の向上に貢献しているのか、しっくりきていない……
◎ 働き方に多様性を持たせたいが、事業維持や発展とのバランスを取るのが難しい
◎ 時代遅れの会社にはなりたくないが、会社として「そこまで対応すべき?」と思う事項が増えていると感じる
◎ 労働時間の削減と生産性のバランスを両立するのが難しく、結局誰かがカバーしている。または組織全体で生産性を落としていると感じる
◎ 在宅勤務で現状維持の仕事はできるが、出社している社員に不平不満が蓄積している
◎ 在宅勤務によってヒューマンマネジメントの工数が増え、マネジャーに過度な負担がかかっている
◎ これまで通りオフィスに出社することに対して批判的な社員が増えてきている
◎ コミュニケーションや1on 1、社員に向き合うことも大事だが、どこまで大切に扱えばいいのかわからずモヤモヤしてくる

 本書を手に取っていただいた経営者・人事担当者の方なら、一度は感じたことがある悩みではないでしょうか?

「激動」の中で経営者・人事担当者は神経を尖らせている

 近年の働き方改革を発端に、労働時間の削減やフレックスタイム制をはじめとした多様な働き方の選択、健康推進など、経営資源である社員にいきいきと働いてもらいたいと考える企業は増えています。

 さらに、日常生活やビジネスに大きな影響をもたらした新型コロナウイルス感染流行をきっかけに、これまでの働き方を見直そうという動きは加速。流行から数か月経ったいまもその動きは進む一方です。

 そのような社会情勢の中、多くの経営者や人事担当者は、社員の健康や柔軟な働き方への対応と、事業保全のはざまで神経を尖らせていることでしょう。私もそのうちの一人です。

 「これからの働き方はどうなってしまうのか?」「組織運営はどう考えていけば良いのか」これらは私を含め多くの経営者・人事担当者が抱える疑問です。

 私は、経営者・コンサルタント・産業医といった3つの立場で「働き方」を考えています。それぞれの立場で抱える課題や、意識していること、気づきが異なります。

経営者として、価値提供と働きやすさのバランスを考える

 まず経営者としては、社員の活躍の場の提供、居心地の良い職場づくり、顧客に提供する価値を増やすことができる強い組織づくり、これらが、常日頃から私の経営におけるホットトピックです。

 自社の社員にどうやって活躍してもらうか、自社で働くことを「楽しく」感じてもらうか、顧客や社会に貢献できる価値を生み出せる組織をどうつくるか。

 社員の働きやすさと組織としての価値提供のバランスに、私自身も悩むことは多くあります。当然、経営者ですので、組織づくりだけでなく、ファイナンス面や組織をいかに維持・成長させていくかといったことも日々模索しています。

 新型コロナウイルス感染流行時は、「自社の方針をどうするか?」「自社の社員をいかに守るか?」を考えながら対応を進めていました。当社は嘱託産業医サービスを主軸にしていますが、産業医は法令により毎月1回の訪問が義務づけられています。そのため、訪問によって顧客企業に提供していた産業医としての「価値」を、訪問ができない中で提供するための新しい方法を模索・推進していました。

 3月からは、顧客企業の状況に合わせて、本来訪問して行うべき業務をオンラインツールを用いて行うことで、面談対応や人事担当者との打ち合わせも問題なく対応できました。来訪制限などもあり、感染リスクを考慮すると対面での業務は難しいのが現実です。

 しかし、目下で発生している不調者への面談や、復職という大切な時期をひかえた従業員への面談は後回しにはできません。ピンチの状況でも、顧客企業と情報を共有し、その時にできる精一杯の方法を模索して価値提供のバランスを維持していきました。

 自社で働く社員を守る点についても同様で、雇用の維持だけでなく、出勤による感染リスクを低減させるため、4月から在宅勤務を実施しました。現在はオフィスへの出勤を基本としていますが、在宅勤務にはメリットも感じつつ、自社の業態や状況を顧みると決してメリットばかりではないとも感じた数か月でした。

コンサルタントとして、新しい組織課題の発生への対応支援を考える

 コンサルタントとしては、「集団→個」に意識変化している現代において組織の一体感をいかにうまく醸成し維持していくかといった課題に対し、解決支援を行っています。顧客企業が抱える組織課題は複雑化しており、経営者が「良かれ」と思って行った施策が従業員にとってネガティブに捉えられている事案を多く目にします。どの会社も、集団から個人に労働がシフトする現代における組織づくりに悩んでいるのです。

 新型コロナウイルス感染流行に伴い、当社の顧客企業でも、在宅勤務を導入し、現在も在宅勤務を併用しながら組織運営を行っている会社はあります。在宅勤務におけるマネジメントの難しさや、出勤組が在宅勤務組に抱く不公平感への対処、評価問題など、日々様々な課題を顧客企業から相談いただいています。

 コロナに限らず猛烈な速さでビジネスが変化していく現代においては、ありきたりな施策提案や助言では足りず、コンサルタントにも時代に合わせた柔軟な視点が求められています。

産業医として、個別の従業員への影響と働き方を考える

 産業医としては、顧問先の人事担当者や従業員と接する中で、離職していく方やメンタル不調に陥る方といった具体的事案を多く目にしています。

 新型コロナウイルス感染流行に関係なく、業務遂行に必要な人員の確保や、労働力不足によってもたらされる現場の疲弊感の増大、メンタル不調をはじめとした「ヒトの問題」はこれまでも発生している課題です。

 ただ、社会情勢の変化によって従業員の働く目的も大きく変化している今、労働価値の変化(シフト)に柔軟に対応できていない会社では、今後さらにそれらの課題の深刻さが増し、加速していくのではという実感があります。

 近年は過重労働事案や昔ながらの明らかなハラスメント事案は減ってきています。その一方で、組織にはびこる「ヒトの問題」は、メンタルダウンのみならず、ストレス耐性の低い人材の増加、発達障害の方への対応過程で生じる職場問題、LGBTへの対応、同一労働同一賃金における課題など、複雑さを増してきているようにここ数年感じています。

 この5年程で人々が働く目的(労働価値)は大きく変化しており、特に新型コロナウイルス感染流行は、社会情勢に急速かつ大きな影響力を与えました。

 これまで通りの「組織のあり方」では、社員の働く目的と会社が提供できる価値にはますますギャップが生まれると考えられます。

 従来は、他社の動きを見ながら「他社も実施し始めたからそろそろ自社も」と継ぎはぎしつつ形成してきた組織運営で対応できていた部分もあると思います。しかしながら、時代は大きく変化しようとしています。

 急速かつ影響力の大きな「変化」によって組織のあり方が揺らぐ今、私たち経営者、人事担当者はこのような課題、テーマにどのように取り組んでいけば良いのでしょうか。

経営者・人事担当者が抱える3つのモヤモヤ

 経営者としての個人的な実感だけでなく、顧客企業の経営者や人事担当者と話す中で、経営者・人事担当者が抱える「社員の健康や柔軟な働き方への対応と事業保全」についての悩み、つまりモヤモヤは3つに整理できると考えています。

モヤモヤ ❶
社会情勢の急激な変化によって、会社の方針を固める前に、なし崩し的に組織運営が変更・固定化されてしまうことへのモヤモヤ。
モヤモヤ ❷
社員は「○○でも十分仕事ができる」と考えているようだが、会社から見ると実際には「できている」とは言えない。その感覚の違いへのモヤモヤ。
モヤモヤ ❸
会社としてどこまで社員の「健康」や「働きやすさ」に配慮しなければいけないのか、というモヤモヤ。

 このような3大モヤモヤを抱えながら、経営者や人事担当者は、今後の会社方針および組織運営に関する施策の導入可否についての判断を迫られています。

 「この施策を導入することがはたして正しいのか?」、明確な判断基準のないまま、「今は仕方なし」と進むことに不安を感じているのではないでしょうか。

 経営も、社員の健康も、顧客への価値提供も……と様々な課題に挟まれ苦しむ、私を含めた経営者や人事担当者のモヤモヤを少しでも軽減できることを願い本書を執筆しました。

この本でそのモヤモヤ解消しましょう

 本書はそんなモヤモヤを抱える経営者や人事担当者に向けた一冊です。

 6章構成となり、第1〜3章では、社会情勢が組織運営に与える影響のメカニズムを解明。新型コロナウイルス感染流行に限らず、急激な社会情勢の変化が組織に与える影響を深堀りします。そして、経営者や人事担当者の視点から、人事施策にまつわる3つのモヤモヤの正体をロジカルに整理していきます。

 第4〜6章では、人事施策が社員、組織、そして社会に与える影響の分析方法を紹介。施策を成功に導く方法や、施策をあえて導入しない決断をする勇気を手に入れられます。

 私自身も、今まさに本書を読んでいるあなたも、「組織をさらに良くするには」「ありたい組織像の実現のために何ができるか」と、その方法を模索したい気持ちは同じです。

 本書を読むことで手に入れられるお土産は3つあります。

◎ 社員のための施策を考える際の「モヤモヤ」の正体がクリアになる
◎ 施策検討のための判断基準がわかる
◎ 施策導入について判断をする勇気が手に入る

 社会情勢の変化に伴い組織のあり方が問いただされる今、自社がこれからどうすればいいのか考える上でのヒントをひとつでも手に入れていただければ幸いです。

著者 上村紀夫 (うえむら・のりお)
株式会社エリクシア代表取締役・医師・産業医・経営学修士(MBA)。1976年兵庫県生まれ。名古屋市立大学医学部卒業後、病院勤務を経て、2008年ロンドン大学ロンドンビジネススクールにてMBAを取得。戦略系コンサルティングファームを経て、2009年「医療・心理・経営の要素を用いた『ココロを扱うコンサルティングファーム』」として株式会社エリクシアを設立。これまで30,000件以上の産業医面談で得られた従業員の声、年間1,000以上の組織への従業員サーベイで得られる定量データ、コンサルティング先の経営者や人事担当者の支援・交流で得られた情報をもとに、「個人と組織のココロの見える化」に取り組む。心理的アプローチによる労使トラブル解決やメンタルヘルス対策の構築、離職対策のコンサルティング、研修、講演などを行う。著書に『「辞める人・ぶら下がる人・潰れる人」さて、どうする?』(クロスメディア・パブリッシング)がある。

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