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おれの推し本vol.1「白夜行」

東野圭吾の「白夜行」
2006年にTBSでドラマ化。2011年には映画化もされた東野圭吾の代表作。
東野圭吾のおすすめ小説ランキングでは常に上位に君臨する言わずもがなの名作。

こんなに有名な作品を今更推すのもどうかと思うが、惹かれたものは推していきたいので。

ぼくの推しポイントはおよそ3つ
①昔懐かし情景描写
②人間あるある(人間描写)
③構成

1973年、大阪の廃墟ビルで質屋を経営する男が一人殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りしてしまう。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んでいくことになるのだが、二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪の形跡。しかし、何も「証拠」はない。そして十九年の歳月が流れ……。伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。壮大なスケールで描かれた、ミステリー史に燦然と輝く大人気作家の記念碑的傑作。

「白夜行」あらすじ

まず、時間の流れや時代の流れを感じさせる描写が素晴らしい。
例えば、子どもたちが廃墟のダクトの中を這い回る遊びが出てくる。
それから、出始めた頃のパーソナル・コンピュータが出てくる。
いずれも物語の中で割と鍵になる。

しかも、不自然じゃなく描かれているので、読んでいるうちに気付けばその時代にタイムスリップしたような感覚が味わえる。
後から知ったけど、1970年代の大阪は作者が少年時代を過ごした場所でもある。
どうりで引き込まれるわけだ。

もう1つ特徴的なのは、亮司と雪穂の心情を直接的に書くことなく、周辺人物を語り手にしながら亮司と雪穂を描いている点だ。
しかし、それによって人物像が不明瞭になることはない。
むしろ、他者から見た亮司と雪穂という存在を構築しながら読み進めることができる。

刑事の笹垣が証言と証拠を積み重ねながら亮司と雪穂の犯罪に迫っていく様子はまさに圧巻で、ページをめくる手が止まらなくなる。


そして全ての謎は最後の章で明らかになる。質屋殺しが起こったあの日何があったのか。
亮司と雪穂の人格形成の伏線がここで全て回収されることになる。

あまりにも冷血に見える彼らの行動原理とは何なのか。何を守ろうとしていたのか。

亮司や雪穂のような人に今まで会ったことがあるわけではないのに、彼らを遠い存在には感じなかった。
彼らがそうなってしまった理由がなんとなく分かるし、今後出会うかもしれないと思った。

そんな風に登場人物と風景を近くに感じ、想像させるための人間描写力と情景描写力が如何なく発揮された作品だと思う。
と同時に、その良さを感じやすい作品だ。

だから一度読んだ後も何度でも読み返してしまう。
何しろ構成がすごい。あんなに分厚いのに中だるみする部分が一切ない。どの章も間違いなくおもしろい。
そう、とにかくおもしろいのだ。

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