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夢を這う虫

目覚めているのか眠っているのか
膝を抱えたまま部屋の隅を見ていた
足を這う虫にせかされて
音楽をかけたままだと気づく

擦り切れるほど聴いた曲が
もうすっかり嫌いになった
それなのに聴かずにいられない
いやだいやだなのになぜ

ここにはなにもないけれど
あの家には帰りたくない
コンクリートで小さく区切られて
階段と壁と磨りガラスだらけ

老人の夢が詰まった牢獄で
テレビの音だけが大きく響く
外の電柱に大きな鳥がとまって
ずっと飛び立つ姿勢をとっている

なんの意味もないということは
とっくに気づいていたけれど
だからといってやめられない
理由のない欲望ってものがある

今日もまた犬がぐるぐる歩く
鎖をつけたままで騒がしい
外に行けば出くわすだろう
蹴り飛ばすほどじゃないが

もうずいぶんと長い間
夢みたいな女が傍にいた
いつもかなしげな顔で歌い
海に行きたいと願ってた

なぜ行かなかったって?
薄汚れた肌が痛いからだよ
今度行こうなと言ったら
はしゃいでたよ涙が出た

夢の国はどこにあるって?
それは海辺じゃないどこかだ
悶え苦しんだあの日の地獄が
いまじゃ楽園に思えてくる


まだ虫が足を這っている
絨毯から煙が出ている
隣室から壁を叩く音
油で固まった髪の匂い

すべてが変わっちまったのに
自分だけが変わっていない
いつまでもおなじ胸の痛み
なんの意味もないのに

虫は3匹
掌で圧し潰すのさ


In Every Dream Home A Heartache

※この詩と動画の曲は、多少の刺激を得ていることを除けば、関係はありません。


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