悲しいことがあった時は、いつもこの空を見ていた。
「お気に入りの場所を見つけなさい」 それは亡くなった母が私に残した言葉だった。
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私の母は私が5歳の時に病気で亡くなった。どうやら珍しい場所にできた癌だったらしい。
実際は私が3歳の頃から入退院を繰り返していたから、正直なところ母の記憶はほとんどない。うっすら覚えているのはがんセンターの病棟の景色と消毒液の匂いだけで、我ながらどうしてこんなにどうでもいいことしか覚えていないのだろうと腹立だしくなる。
でも母が亡くなったその後も、母との思い出は増えていくこととなる。亡