読書レビュー「行動公共政策(OECD著/斎藤長行訳)」(2/15冊目)
今回読んだ本「行動公共政策」は卒論研究の一環として読んだ学術書になります。
あまり一般の方が読んでもどうなのかとは思いますが、行動経済学の考え方や研究結果自体はとても面白いのでちょっと調べてみると面白いですよ!
行動経済学とは、簡単にいうと消費活動における人間の非合理的な選択を説明する学問です。(多分あってる?)
普通の経済学では「完全に利己的で合理的な経済人」をモデルに理論を組み立てますが、人間はいつでも合理的なわけではないですよ、ということです。つまり人間を非合理的な人間として観察するのが行動経済学です。
行動経済学は一般の経済学とは学問のあり方が違って、「帰納法」(実験を行なった結果を抽象化して理論にする)です。一方普通の経済学は「演繹法」(先に理論があって理論を現実に落とし込んでいく)ですので根本的なアプローチが違うのです。
これは行動経済学が心理学の一種であることが関係していると言えます。行動経済学の定義の範囲は曖昧で、心理学のうち経済活動に影響を与ええる部分を対象にしている心理学とも言えると思います。
「行動公共政策」
この本は、行動経済学と公共政策の関係性を示唆する本です。
公共政策を実施するにあたって、行動経済学の「リバタリアンパターナリズム」、「ナッジ」を適応することで、人々がより良い選択を自発的に行えるようにするために促すことができるという行動公共政策について書かれている本です。
この本で最も勉強になったことは、手続きの簡略化で人々の選択行動を変化させることができるということ。です。行動経済学の基礎的な知識は元々あったのですが、その具体的な海外の事例や、政策のどの部分に実際に適応できるのかはあまり知りませんでした。
私が最も注目したのは、大学の進学行動が入学手続きの簡略化によって改善された米国の研究です。(Bettinger et al. 2009)入学様式の記入において、学費支援の有無による学生の進学率の際を無作為化比較試験(RCTと言って、製薬品の効果を調べるときによく用いられる統計手法です)によって実施した研究です。
これは学費支援の申請書の様式を簡略化することによって進学率を高める際のエビデンスとなったといいます。
日本ではこの分野はあまり進んでいませんが、例えば学費や奨学金の手続きは未だ紙をベースに行われ、必要書類は数十枚を超えます。こう言った複雑な手続きは他の分野でもあり、改善することで人々の選択行動が変化するならば進んで取り入れるべきではないでしょうか(全てとはもちろんいいませんが)。これは就職活動にも卒論研究にも面白い気づきになったと思います。
少し基礎知識が必要な本ですが、わりかし読みやすいので行動経済学に興味がある方は読んでみてください。