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新幹線の匂い

仕事を終えて家を飛び出した。

何年ぶりのゴールデンウィークだろう。いつもは仕事があって3連休くらい。朝ニュースを見て「あ、そっか一般的には連休か」と気づく。


それが今年、7日の連休が私の元にやってきた。


い、1週間も休んでいいんですか…!
チャット見ませんからね!?


胸の高鳴りと小さじ2くらいの不安が、私のお腹の奥でグツグツしている。帰ってきた時にチャットの山になってないことを祈り、駅へと向かった。


とりあえず、実家に帰ろう。
実家は埼玉県で、東京にも行きやすい。
買い物や市場調査をしようと昨日は観光スポットのサイトをハシゴした。深夜3時になってた…


新幹線のチケットを購入。久々で手こずる。
連休だから自由席は混んでるかも、と少し奮発して自分だけの席を選択した。
これだけで満足度がグンとup。1up!


久々に雨が降り、少し肌寒い駅のホーム。
黄色い線がスタートラインに見えてきた。

これからいつもと違う世界に行くスタートライン


完全にゴールデンウィークに浮かれている。
しょうがない、、久々の3連休以上なんだ表には出さないから浮かれさせて!!!


スタートラインの目の前をシャーーーッ!とスライディングで入ってくる新幹線。なんとシャープな車体。見るたびに文明の利器に感動する。


スタートラインを跨ぎ、白いトンネルの中へ入っていく。


あ、新幹線の匂い。



無機質で、透明で、でも白っぽいような
スーッとした匂い。

人の匂い、食べ物の匂いよりも強く感じる。
そう、これこれ。

シートからでも、壁からでもない、何処からともなく包み込んでくる匂い。これを嗅ぐと、スッとこころが切り替わる気がする。


出張の時は気が引き締まるし、

旅行の時は仕事を忘れて旅人の気持ちになる。

帰省の時は早く家族に会いたくなる。

過去や抱えてる不安をソッと肩から下ろしてくれる気がする。これから先のことに目を向けさせてくれる。

ぐるぐると悩んでいても、新幹線の匂いが「私をみて」と顔を引き寄せてくれる感じ。ちゃんと匂いを感じられていると思うと心が落ち着く。


自分の席に深く沈み込み、振動に身を任せる。
たまに意識して新幹線の匂いを手繰り寄せながら、こんなことも書いていいのかな?と手元の画面に文字を紡いでみる。

誰にも話せない私の匂いの世界。


こんな記事を書いてみようかなと思ったのも、この匂いのおかげなのかもしれない。

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