マガジンのカバー画像

連載 ひのたにの森から~救護の日々

12
運営しているクリエイター

2021年11月の記事一覧

連載 ひのたにの森から~救護の日々 ⑤

連載 ひのたにの森から~救護の日々 ⑤

 御代田太一(社会福祉法人グロー)

聞き書きをしよう!救護施設には、過去の生い立ちについての情報がほとんどない状態で入所する人が少なくない。

現場の職員は、入所経緯やおおまかな生い立ちは知っていても、頻繁な入退所や介護業務に追われて、一人一人の利用者がどこで生まれ、どんな人生を生きてきたのかまで知る余裕がなかった。「入居者たちの生い立ちを知りたい」そんな動機で就職した自分には、少しもどかしい日

もっとみる
連載 ひのたにの森から~救護の日々⑥聞き書きから見える暮らしと社会

連載 ひのたにの森から~救護の日々⑥聞き書きから見える暮らしと社会

御代田太一(社会福祉法人グロー)

山でサバイバル生活をしてきた男性「御代田くん、最近入ったあの田村さん(仮名)、聞き書きしてみたら?山でサバイバル生活してたって噂やで(笑)」

聞き書きを細々と続けるうちに、先輩職員がおススメの利用者を提案してくれるようになった。山でサバイバル生活、面白そうだ。気さくな人だし、田村さんに話を聞くことにした。

聞き書きをするときはご本人の許可をもらったうえで、レ

もっとみる
連載 ひのたにの森から~救護の日々⑦ 被害と加害が同居する

連載 ひのたにの森から~救護の日々⑦ 被害と加害が同居する

 御代田太一(社会福祉法人グロー)

2500万円恐喝したひと、1000万円詐欺にあった人

「ここでは、加害と被害が平然と同居している」

救護施設で働く中で気付いたことの1つだ。

ある日の昼食時、職員はいつものように配膳や食事介助、薬を配ったりしてバタバタしている。一方、体の元気な利用者はカウンターから1皿ずつ自分でとって席につく。

席は自由だけれど、何となく定位置があって、いつも同じよう

もっとみる