『若きウェルテルの悩み』を読んで【本好きの読書感想】
若いときは、辛い思いをすることがあります。
若いからこそする、辛い思いがあります。
例えば恋の苦しみが、そのまま生きる苦しみになる様に。生きる意味を考えて、生きる意味を見失ってしまう様に。
そんな時代を人は過ごして大人になります。
ですが残念なことに、大人になったところで恋が苦しいのも、生きる意味が見つからないのも変わりません。
ただ歳を取ると何故かその苦しみに耐えられる様になるだけです。
苦しみに蓋をしたり、オブラートで包んだり、初めからそれを無いものとして扱ったりする技術を身につけたからだと思います。歳若い貴方であれば、きっと「狡い」と思う様なやり方で、大人になると生きていけるようになるのです。
それで良いんです
それで良いのです。
途中で辞めなければ、良いのです。
しかし、それが分かるのは、途中で辞めなかった者だけです。
この本が出版された当時は、自ら命を絶つことを、どこか肯定する様な風潮もありました。作者もそういった意味合いの手紙を書いており、この作品は当時にあって一種の社会現象を巻き起こしました。そのやうな影響や思想、結末に至る内容に関しては時代時代によって様々な受け止め方となるでしょう。その点からは、この物語に何か望ましいと思う人生への答えは無いのだろうと思います。
「若きウェルテルの悩み」という本の持つ偉大さ
しかし「若きウェルテルの悩み」は文学として、本当に素晴らしい作品です。
小説というものが社会性や道徳規範から離れて、もう一度、人間へと戻るきっかけを作った大きな位置付けのある作品です。
良い作品というものは、物語のストーリー自体よりも内側にある本質、普遍的な真理をきちんと秘めているところにあると思うのです。
それはつまり
という事です。(ゲーテの言葉を借りています)
インスタでは新潮版をよく見かけますが、私は岩波文庫で読みました。
沢山の訳者の方で様々な出版社から出ているので読み比べるのも面白いかもしれません。
私は若い頃、一生懸命にこの本を読みました。もし、若い誰かに「読むべき本は?」と聞かれたら迷わず「若きウェルテルの悩み」と「ヴィルヘルムマイスターの修業時代」を差出すと思います。(どちらもドイツ文学です)
この本は随分草臥れてしまいました。
読み過ぎてワイングラスの脚の染みが残っているし、カバーも、もうありません。
だけど私はこの本を後生大事にしようと思います。
大人になって読み返すときの気持ち
若かった頃の辛い日々を忘れないように。
それを糧と生きる大人になった証に。
かつて纏ったメフィストの戯言に負けなかった勲章に。
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●学生の頃に読みたい本
●若い時に読みたい一冊
●悩める全ての人におすすめ
●竹山道雄 訳
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