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匠を支える匠の巧みもすごかった|竹中大工道具館
神戸に日本で唯一の博物館があります。
それは「竹中大工道具館」。
これまで気になりつつも、うーん大工道具か…と
何となく後回しになってました。
でも行ってみたら、とっっても面白かったのでご紹介します。
「竹中大工道具館」は、日本を代表する建設会社のひとつである竹中工務店が、大工道具を収集・保存することを目的に開設している企業博物館です。
1984(昭和59)年に同社設立の地・神戸で開館し、2014(平成26)年に、六甲の山ぎわ、新幹線の新神戸駅すぐ近くの現在地に移転しました。
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六甲の山々の紅葉が深まる
大工道具は摩耗するまで使われ消滅する運命にあり、機械化で手道具を使う職人も急激に減少。
消えてゆく大工道具を民族遺産として後世に伝えていくことを目的に収集された資料は3万点以上にも上ります。
日本はものづくりの国です。大工道具には、日本人ならではの美意識や心遣いが秘められています。ものづくりの国に生きる楽しさ、素晴らしさ。新しい気づきに満ちた道具との出会いの場となり、伝統のものづくりに新たな刺激を与えるような存在でありたいと考えます。
建物
新神戸駅から坂道を登っていくと、高級旅館か料亭のような門構えが現れます。
そして、門をくぐり抜けたら、木々に囲まれた美しいお庭が迎えてくれます。
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建物は鉄筋コンクリート造の平屋ですが、木造建築に見えます。
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それもそのはず、軒下には木材が多用され、名栗*仕上げの入り口扉や土壁を左官職人がコテで削り出した内壁など、随所に日本の伝統的な木材加工や建築技法が使われています。*角材や板の表面に独特の(波のような)削り跡を残す加工方法
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企画展
開館40周年記念『日光の彩色と金工—社寺建築の美しさの謎を解く』
開催期間:2024.9.14–12.15
世界遺産「日光の社寺」に生きる匠の技のうち、装飾技術の「彩色」と「金工」に着目。普段は遠目でしかみられないきらびやかな建築装飾のワザを間近でみられる展覧会です。
東照宮陽明門組物模型
東照宮の陽明門を飾る組物の実物大模型が展示されています。
黒漆が艶やかに輝き、彩色された龍を際立たせます。
今にも動き出しそうな躍動感と迫力です。
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生彩色見取り図
日光東照宮には江戸時代から、修理のために彩色図が伝えられているのだそうです。とても色鮮やかで精緻に描かれ、細かい注釈も記されています。
絵画のような美しさです。
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修復に必要な道具や材料
今回の企画展では、岩絵具や漆、金箔など、文化財の修理に必要な素材も多数展示されています。最近は、手に入りにくいものも多いらしく、文化財を守っていく上で課題にもなっています。
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私も一度だけ日光東照宮に行ったことがあります。
凄まじい数の装飾や彩色に圧倒されたのを思い出します。
金箔や彫金などの技術の高さと、それを伝えていく職人の皆さんの重ねてこられた努力を垣間見た展覧会でした。
常設展
常設展では、縄文時代からの木材加工の歴史や道具、「木組」など伝統的な日本の建築技術も丁寧に紹介されています。
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私なら間違えまくって棟梁に怒鳴られる自信あり
また、実際に丸太から柱や板材を切り出すための計算方法も体験できたり、原寸大や手で触れることが出来るものも多く、体感的に魅力や技術を学べます。
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スケルトン茶室
大徳寺玉林院にある茶室・蓑庵(重要文化財)の骨格だけを復元したもの。
実際に入ることができます。
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壁の向こう側が見えて違和感があるものの、中に入って座ってみたらすっごく落ち着きます。これぐらいの広さがやっぱり良いよねと改めて思う。
唐招提寺金堂組物の再現
奈良・唐招提寺金堂(国宝)の柱や屋根を原寸大で復元したもの。とにかく大きい。これを奈良時代の人が、手作業で木を切って削って作ったかと思うと、凄さを感じる。
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これを木材から精緻に削り出して組み上げる技術はすごい
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(左)木材の表面を綺麗にする「やりがんな」
(右)木材を削り出す「ちょうな」
千代鶴是秀の工房再現
明治から昭和にかけて活躍した大工道具鍛冶の名工の工房を再現した展示。キセルやメガネもさりげなく置かれていて、職人の息吹がリアルに伝わる展示です。
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匠の技がキラキラひかる
このほか、組子の細かい作品などが展示され、日本の匠の技の凄さが伝わってきます。こうした技術が、時代とともに失われつつあるのなら、とっても惜しいことだと改めて実感しました。
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お庭も素晴らしい
敷地内には2箇所のお庭があります。
少しモダンな印象もある日本庭園。
とっても静かで癒されます。
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ゆっくり安らげる美しいスペース
紅葉が見頃
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都会の中にポッと現れた安らぎの空間。
日本の伝統建築の魅力や歩みを体感できる場所です。
「用の美」が追求された大工道具。
正直、ノミやカンナに、美を感じるのは意外な発見でした。
日本を中心に、中国やヨーロッパの道具も展示されていて、似てたり似てなかったり。文化の比較もできて楽しかったです。
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美を紡ぎ出す道具を作る匠の技。
匠に支える匠がいる。
当然と言えば当然ですが、見落しがちかもしれません。
素晴らしい文化財を鑑賞できるのは、こうした無数の匠の存在がいることを忘れてはいけませんね。
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大工道具が可愛く思える
企業博物館なのに、そうと気づかないほど。社業を誇るでもなく、ただただ匠の技に焦点を当てた展示構成に、竹中工務店という会社の技術を尊ぶ心意気を強く感じました。
「大工道具」にピンとこなくても、日本の文化の奥深さを心ゆくまで堪能できます。
ぜひ、訪ねてみてください。
竹中大工道具館
神戸市中央区熊内町7-5-1
(地下鉄・新幹線「新神戸駅」徒歩5分)
休館日
月曜日(祝日の場合は翌日)
年末年始(12月29日~1月3日)
開館時間
9:30ー16:30(入館は16:00まで)
入館料
一般700円(65歳以上)500円
大学生・高校生500円・中学生以下無料