最近読んだ本たち(2024年12月分)
「とうとう2025年になっちゃったよ」と夫に言ったら、たしなめられた。「もう新年早々、行く日を惜しむのはやめなって」だそうである。
「ほんとですねー、そうですねー」と返事をしたものの、毎日が過ぎるのは早いと嘆かぬ自信がない。だって、もうお正月休み終わりじゃないですか。
と、ぼやきはこのくらいにして。さあ、今年も頑張っていきましょう!
『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』 ブレイディみかこ
英国における労働者階級の、老年期に入ろうとしている「おっさん」たちを描いた作品集。「ゆりかごから墓場まで」と言われた医療制度は崩壊しかけていて、若さを失った彼らは無情な時の流れを痛感しながら生きている。
おっさんは体のあちこちにガタがきてる。
おっさんは自分の生き方にプライドを持ってる。
おっさんは頑固だが優しい。
おっさんは闘う。
おっさんは恋もする。
なんて愛しいおっさんたち! おばさんのひとりとして、彼らが穏やかに人生を過ごせるよう、祈るばかりだ。
各エッセイのタイトルには、有名な楽曲のタイトルがあしらわれているのも面白い。邦楽もちらほら。
外国を例にとり、「向こうでは〜〜なのに、日本ときたらぁー」と語りたがる人は好きじゃない。でも、異国で暮らす人の、実感に満ちた話を聞くのは大好きだ。含蓄とユーモアに富んでいれば、なおさら。そこからしか見えてこないものがある。
『このあたりの人たち』 川上弘美
少し前から気になっていた本。本屋さんでばったり出合い、そのままレジへ持っていった。帯にやられた。「文学のヤバさを味わってほしい…!」と大きく書かれている。ヤバさ、めっちゃ味わいたいわ。
読後の第一声は「なにこれ、おもろい!」だった。
帯にからめて言えば、ヤバい人たちの、いや、世間からは「ヤバい人」と見なされがちな人たちとの交流が描かれる。
一つひとつの物語を取り巻く余白がすごく広く感じられた。たった数ページの掌編には、読者が考える余地が多くとられている。「ねえ、これを読んでなにを思うのよ」。ずっとそんな問いを投げかけられているような気がした。
『紙の月』 角田光代
ずっと読みたかった本。
既婚の銀行員女性が大学生との関係に溺れていくさまに吸いこまれるように読み進めた。ページから顔を上げれば、わたし自身も年下の恋人をつなぎとめておくために横領しなければならない錯覚に包まれるほど、ストーリーのなかの世界が迫ってくる。
「とりたてて不幸ってわけじゃないけど確かにある閉塞感を抱えて暮らす女性」の苦しさがきめ細かく、切実に描かれていると思った。
映画も観てみたい。
『こうやって頭のなかを言語化する』 荒木俊哉
ふだん、読書記録に文章術の本や思考整理のメソッド関連の書籍は含めないようにしている。あと、仕事関係のものも。純粋に読書として楽しめない面があるので。
しかし、こちらはさくっと読めて、日常生活にすぐに役立てられる言語化メソッドが詰まっている。仕事にというよりは、日々の考えを整えるのにすごく有効だと思った。
これを読んでから、いつも書きつけているメモを項目ごとに整理するようになった。効果のほどはもう少し時間が経ってからでないとわからないだろうけれど、書くと頭がすっきりする。
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12月はそりゃ師も走りますわ、というせわしなさのうちに終わった。なにがなんやらようわからん、と大晦日につぶやいた(年末ってそういうものですよね?)。
今まではそのときどきで気になる本に手を出してきた。2025年は心を養う読書がしたいとぼんやり考えている。
1月はなにを読もうかな。