BTS初心者のオジサンが感嘆した「Butter」と「Permission To Dance」
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」
『スパイダーマン』の主人公ピーター・パーカーが、叔父から言われる言葉です。ピーターのヒーローとしての行動理念になっており、『スパイダーマン』のテーマであったりもします。
最近のBTSを聴いていると、同じようなことを感じるのですよね。
BTSについては前からちょろちょろ聴いていたのですが、これはとてつもないグループだと感じ始めたのは、「Butter」からでした。
(遅っ!)
本当に今更? という感じではありますが、BTSの曲や歌詞、姿勢からは、エンターテイメントが社会とどう向き合うべきかの答えが体現されています。
最初に「Butter」を聴いたときは、前作の「Dynamite」を踏襲しつつも、よりエッジを効かせたダンスビートがマイケル・ジャクソンっぽいなと思いました。普通に良い曲です。
ただ、これだと消費されて終わります。
しかしこの曲をリリースした時期は、アメリカでアジア人が理不尽に殴られたりするアジアンヘイトが起こっておりました。
新曲「Butter」のモチーフとしているバターは黄色です。
歌詞は恋愛についてですが、差別を受けているアジア人へのメッセージも感じられます。
ラップのパートでは以下のように歌われています。
「僕たちは雰囲気を見計らって パーティーに登場する」
「バターのようになめらからに」
「僕たちが嫌いでも好きでも」
「ナイスガイが登場したら 僕たちはじっとしている」
「ベースの音が響くと 遊ぶ人々は体を動かす」
「僕たちの後ろにはARMYがいる 僕たちは言うんだ レッツゴー!」
バターのように溶け込んでいけば、いつか差別も対立もなくなるはずです。
ただし、BTSだけでは成就しません。ファンであるARMYと共にあるのです。
日本にいるオジサンである僕も感じ入るものがあるので、アメリカに住んでいるARMYであれば、どれほど心強く感じたことでしょう。
誰かを攻撃したり責めずとも、メッセージ色もあります。
奇跡のバランスでエンターテイメントが成立しているのです。
ところが……!
「Butter」に続いて7月にリリースされた「Permission To Dance」です。一聴したときは、これって余りにも普通じゃない?
典型的なサマーソングで、昔からこういう曲は夏になるとどこからともなく、うんざりするほど出てくるので、BTSが何でこんな曲を発表するんだろう?
エド・シーランが作曲にも参加していると言っても、それで何かバリューが出ているの?
と思いました。
しかしながら、MVを見たときに考えを改めました。
コロナ禍が収束した2022年が舞台なのですね。メンバーが読んでいる雑誌の表紙で明示されています。
もちろん、曲を聴いたりMVを見たりしている我々は、まだ2021年現在です。
第○波と呼ばれるぐらい、コロナの勢いが盛り返しています。一方、ワクチンの効果もあり、ようやく光が見えてきている感じもします。
そこで、BTSの「Permission To Dance」です。
不安を感じつつも、かすかな希望もあるようなこの微妙な時期に、聴く人の気持を鼓舞するメッセージが込められています。
「僕たちは心配なんていらない」
「落ちてもどう着陸すればいいか知っているから」
「言葉はいらない、今宵を楽しもう」
「僕たちが踊るのに許可はいらないのだから」
MVでは、BTSメンバー以外の登場キャストはマスクをしています。しかし、MVのクライマックスではマスクをサッと外します。
コロナ禍の収束まであと少し。
もうひと頑張り。
夜明け前が一番暗くとも、ポジティブな気持ちでいよう。
MVを見返すたびに、曲を聴き返すたびに、そんなことを思いました。
さて、冒頭の「大いなる力には、大いなる責任が伴う」です。
ご存知の通りBTSは商業的にも大成功している世界的アーティストですが、それだけ影響力があります。
何を発信していくかにもセンスが問われます。
直接的なメッセージであれば、エンターテイメントではなく、プラカードを持ってデモを行えば良いでしょう。
しかし、彼らはBTSです。
世界を代表するエンターテイナーとしての戦い方があります。
そこがこの「Butter」と「Permission To Dance」に強く現れているのと感じました。
もちろん、他の曲も深堀りしていくと、様々な発見があるように思います。