世界一美しい帆船アメリゴ・ヴェスプッチ号に乗ってみた
世界一美しい帆船アメリゴ・ヴェスプッチ号がお台場の東京国際クルーズターミナルに入港しているので、乗船してみた。
(※ noteのコミュニティガイドラインには「世界一」と書くときには根拠を示せ、と書いてあるので調べてみたが、少なくともアメリゴ・ヴェスプッチ号はじめイタリア関係者が「世界一美しい帆船」と自称している事実は確認できなかった。しかし、朝日新聞デジタルやYahooニュースやテレビニュースなどではそう呼ばれており、日本のマスコミによる命名もしくは一般的にそう喧伝されている事実と推察される。「最も美しい帆船のひとつ」と表現したニュースもあった)
※ イタリア在住のトレモロさんが、素敵なエピソードをトリビアVol.2で紹介してくれているので、リンクさせていただきました。
「貴船は世界一美しい」エビデンス発見です。
高校で世界史を取られた方は、
「あー、アメリカ大陸の名前のもとになったイタリア人探検家の名前ね!」
とピンときていると思う。
アメリカ大陸を「発見した」とされるコロンブスは、
「これまで信じられてきたように地球は平らなのではなく、丸いらしい。だったら、地中海を出て、大西洋を西に西に進んでいったら、まわりまわってインドの東海岸に着くんじゃね」
と大西洋を渡ってアメリカ大陸に到達。
「やったー、インドに着いた!」
とそこで出会ったネイティブアメリカンをインディアン(インド人)と呼んだわけだ。
そこに登場したのが、フィレンツェ出身の地理学者アメリゴ・ヴェスプッチ。
実際に、自分自身もアメリカ大陸に渡ってみて、ジェノバ出身のコロンブスが到達したのは、
「インドではなくヨーロッパ人には未知の新大陸だ!」
と主張した人なのだ。
(※ イタリア王国の成立は1861年でヴェスプッチもコロンブスも都市国家の市民。今の国で言えばイタリア人ということ)
その偉人の名をいただく帆船は、イタリア海軍の練習船で、世界1周をしている寄港地のひとつとして東京にも来港したというわけ。
だから乗っているのは、イタリア海軍の軍人さんということになる。
私が、乗船してクルーに直接取材したところによると、全長100メートルの帆船に400人もの乗組員が乗船しているという!かなりキツキツの印象。
今回の世界1周は、合計31カ国をめぐるワールドツアー。
ジェノバ出航は去年の7月といいますから、すでに出航から13ヶ月目ということになる。
ロサンゼルス港を出て太平洋を渡り東京港に着き、6日間だけ停泊し、次はオーストラリアのダーウィンを目指すそう。途中、ずーっと天気が良かったなんてことがあるはずもなく、嵐の日もあっただろうに、
「遠路はるばるようこそいらっしゃいました。できれば温泉にでも入って、ゆっくりして行ってくださいね」
と心から思った。
写真を見ればお分かりのように、船には救命ボートが数艘乗っているのだけど、この小さいボートに400人は無理でしょ!という感じ。
映画「タイタニック」の脱出シーンを思い出してしまった。最初から全員を助ける前提でボートを乗せてるわけじゃない。
世界一美しい帆船というから見に行ったのだけれど、行ってみて最も印象に残ったのはやはり船よりイタリア人。
制服に身を包んだクルーのカッコよさといったら!笑
「世界で一番うまいワインを教えてあげよう」
でも書いたけれど、
自分たちを、他人との比較なしに素晴らしいと信じる力が彼らにはある。
掛け値なしに
「自分たちは、素晴らしい」
と信じている自己肯定感というか、自信が感じられて、いささかも屈折したところがないから、とにかく爽やかなのだ。
だからと言って、自分たちを他の誰かと比べて
「自分たちの方が優れている」
と考える比較優位でないところが、凛々しさの源泉なのだと思う。
誰かよりはマシだけど、誰かには負ける、みたいな卑屈さが微塵もないのだ。
話しかけると、顔だけこちらに向けるのではなく、しっかりとこちらに正対して目を見つめて話を聞いてくれる。
しかも、「ボンジョルノ」と声をかけているのに「こんにちは」と日本語で返してくる。31カ国でそうした対応を心掛けているのだろう。
会話は、英語でするしかないが、最後に「グラツィエ」とイタリア語でお礼の気持ちを伝えると「プレーゴ」と返ってくる。
会話中は、笑顔を絶やさず、聞かれたことには誠実に答えようとしてくれる。
彼らの寄港目的のひとつが「友好」にあることがありありと伝わってくる。
写真を撮って、こんなに映える人たちもそうはいない。
彼の前には記念撮影を求める行列が出来ていた。
ひとりひとりに笑顔を向け、男性には握手で、そして女性には肩や腰に手を回して撮影に応じる。さすがイタリア人というほかない。
下船すると、ターミナル内で繰り広げられているヴィラッジョ・イタリア。
イタリア文化を紹介する様々なイベントが開かれている。
イタリアデザインを紹介するコーナーでは、懐かしのべスパに目が釘付けに。
映画「ローマの休日」の新聞記者よろしく、友人を後ろに乗せてローマ市内とアッピア街道を爆走したっけ。
ヴェネチア国際映画祭関連の映画上映のほかにも、イタリア各地の映像を3つのスクリーンで見せる大迫力の映像展示には、またまた「イタリア行きたい病」が再発。バチカン市国のサンピエトロ広場、ミラノ大聖堂やフィレンツェのドゥオモ、ピエモンテのブドウ畑、サルジニアの海岸、イタリアアルプスの絶景などなど、美しい景色に見飽きることなどありゃしません。
一方で、カラバッジョの教会のフレスコ画などなど没入体験を提供するイマーシブな見せ方に、イタリア最先端を垣間見ることもできた。
そしてそして、もしかしたらあるかも!と淡い期待を抱いていたイタリアワインの販売コーナー! 懐かしの「世界で一番うまい」キャンティワインもあった〜
喉が渇いた頃合いに、忽然と現れるジェラートショップ。
レモンのジェラートは、暑さを忘れる酸っぱさが爽やか。
外ではシンプルな牛乳味のアイスクリームに蜂蜜をかけていただく試食コーナー。無料なのが嬉しい!。
イタリア行きたい病が再燃してしまったけれど、
今回はイタリアが向こうから船に乗ってやってくるという、
自分はお台場にいけばいいだけという、
垂涎のイベント。
イタリア海軍軍楽隊VS自衛隊音楽隊による競演とか、夜のライトアップとか、まだまだ見たいものもあったけど、時間いっぱい楽しんだから良しとしよう。
現場からは、以上です。