千夜千首#8/真夜中の大観覧車に目覚めればいましも月にせまる頂点:穂村弘さん
こんばんは。今日もお疲れさまでした! 毎夜19時に、あなたの心に響きそうな一首を選びじっくり解説していく「千夜千首 Journey Through a Thousand Tanka」。第8夜は、穂村弘さんの作品を味わっていきます。
今回は描写の美しさを味わう幻想的な短歌で、
一日を締めくくっていきますね。
お届けするのは、毎日短歌を読み、『心のお守り』になるような言葉を探してはnoteで紹介しているつくだです。書籍の編集や文を書いています。
では穂村弘さんの作品を自選ベスト版歌集『ラインマーカーズ』からご紹介していきましょう。
真夜中の大観覧車に目覚めれば
いましも月にせまる頂点
穂村さんの歌を読んでいていつも思うのは、平易な言葉しか使っていないのにどうしてこんなに美しい歌が生まれるのだろうということです。
日常のなかにある「センス・オブ・ワンダー」をつかむのが非常にうまいんでしょうね。しかも今回は、やさしい言葉を使いながらも私たちに非日常の幻想的な世界ヘと旅をさせてくれます。
さっそくこの歌の技法についてみていきましょう。
まずは、非日常的な状況設定のうまさです。「真夜中」も「大観覧車」もどこかでみたことのある情景です。しかし、それが組み合わさると非日常的で美しい情景に変わります。
そこに「目覚めれば」と動的な言葉が続く。主体が目覚めたときに「真夜中の大観覧車」が動き出すのを感じるわけです。
そして目覚めた瞬間に、観覧車は月にせまる頂点で、幻想的な月の美しさにおそらく主体は息を呑んでいることでしょう。
また、月に近づいていく様子を「せまる」と表現することで、観覧車の動きがより強調され、読者もその動きを体感しているかのような錯覚に陥ります。
最後に時間の対比です。「真夜中」という「静」と「せまる」という「動」の動きが対比され、短歌に奥行きが出てきます。
これらの技法を組み合わせて駆使することにより、この短歌の鑑賞者であったはずの私たちも、穂村さんの短歌世界に呑み込まれ、主体と同じような感動を共有するのです。
この歌の鑑賞のポイントは名画を味わうように、言葉のひとつひとつの意味に着目していきながら、その言葉が作り出す世界に身を委ねるということかもしれません。
今日もまた、実に味わい深く素晴らしい歌に出会いました。感謝!
穂村弘さんのプロフィール
穂村弘さんは、1962年、札幌生まれの歌人です。1990年、歌集『シンジケート』でデビュー。そして、その後、評論、エッセイ、絵本、翻訳などさまざまな分野で活躍されています。『手紙屋まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』『世界音痴』ほか、著書多数。『短歌の友人』で伊藤整文学賞、『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、『水中翼船炎上中』で、若山牧水賞を受賞する。
穂村さんの他の作品も読んでみたい方は、ぜひこちらをご覧ください。
穂村さんの作品の魅力に迫るにはこちらの本もおすすめです。
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かの大編集者・松岡正剛さんの人気連載「千夜千冊」のごとく、毎夜にわたり、おすすめの現代短歌を一首ご紹介していく連載企画「千夜千首」、お楽しみいただけたでしょうか?
それぞれの歌についてわたしなりに解説していますが、その解釈にかかわらずご自由に解釈して楽しんでいただけたら幸いです。もしよければ、その感想をコメントにお寄せいただけたらとても嬉しいです。
明日も穗村弘さんの、心に響く1首をお届けしていきます。
どうぞお楽しみに!
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