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誰かさん

列車に揺られてうとうとする
潮風が私に子守をしているみたい
なんだかそれは懐かしい気持ち
私が誰かを思い出そうとしているように
誰かも私を思い出してくれるかな
あの雲の上にいるのかな
あの海の向こうにいるのかな
瞼の裏まで探してみるけれど
私は誰を探しているんだっけ
もうすぐ列車を降りなきゃいけない
お父さんがお迎えしてくれるの
もう子どもじゃないよって何度も言ったのに
何歳になっても私は子どもなんだって
窓からお父さんの姿が見えた
大きかった背中が縮んだみたい
列車を降りたら暖かい風が吹いてきて
整えてた前髪が割れちゃった
風が私を包み込んでくれたような気がしてね
なんだか涙が溢れそうになったの
でもすぐにお父さんが私に抱きつくからさ
ちょっとは私にも喋らせてよ
曲がった背中に優しく触れて
右手の温もりに少し安心した
どこかで誰かがクスッと笑ったみたい
急いで周りを見渡すけれど
私は誰を探しているんだっけ

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