本のホコリと顔のシミ
本を読んでいると、文字と文字との間にホコリを見つけるときがあります。
それがマフラーとかセーターとか、身につけているものから出た糸くずである場合、手で払うとあっけなく落ちます。
はらり。
あ、また付いている、と発見して
指先で取ろうとしても
取れないことがあります。
印刷、されてしまっているのです。
わたしはそのホコリが、この本に印刷された経緯について、思いを馳せます。
原版があって
それを何万部と刷るうちに
すっと入り込んだホコリ。
そのすべてに、同じようにこのホコリは印刷されているのか。
途中、何かのタイミングで振り落とされることは、あるのだろうか。
重版がかかったら、きっと別の場所に別のホコリが印刷されるはず。
わたしが読んでいるこの本と、ぴったり同じ場所にホコリが紛れ込んでいる本を今、どのくらいの人が所有し、その内何人が気付いただろう。
そんなことを思います。
またあるとき、顔に汚れが付いているのに気付くことがあります。
アイラインが目元についたものか。
マスカラかしら。
指先で取ろうとしても、取れない。
…
あ、シミだ
ということに気付きます。
これがシミってやつかと、初めて自分の顔にそれが出現したことを認めたのは、いつのことだったでしょう。
20代後半だったか、30歳を過ぎていたか。
そうか、わたしも老化、するんだなと
何とも言えない
しみじみとした気持ちになりました。
若い頃、ラッキーなことに肌トラブルに見舞われたことがなく、試供品で貰った化粧水や、海外旅行のお土産でいただいた美容液を付けても赤くなったりヒリヒリしたことがありませんでした。
わたしが痛み痒みを感じやすいのはあくまで感覚が過敏なのであって、肌自体は恐らく、強いのだと思います。
そんなわたしの顔に、シミが。
不可逆、ということを思います。
ホコリは本に印刷され、顔にはシミ。
色々な状況が重なり合って
そこにふと表れた違和。
触れても払えないホコリと
顔を洗っても落ちないシミ
わたしは結構、そういうものが好きみたいです。