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【詩】冬木立
暁の空に
ひっそりと佇む
冬の木は
生きているのかどうかさえ
忘れてしまったかのように
目を閉じている
彼らは
気づいていない
その精悍な姿に
心惹かれる者がいることを
色とりどりの花々や
生まれたての青葉には
かなわないと
春を待つ
ただひっそりと
目立たぬように
風に吹かれても
失うものはもうないからと
ただ待つ
ひたすらに春を
曙の空に
照らされて
小鳥が囀り
漸く彼らは目を開けた
春のような陽気に
騙されて
少し戸惑いながら
枝を大きく広げてみせた
【短歌】
立ちこめる霧をまといし冬の木の珊瑚の如く枝広がりぬ
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