精神科医(私)もよく理解していない新型うつ病の正体に迫る
こんにちは、精神科医のはぐりんです。
※3分で読めます。最後までお読みいただければ嬉しいです。
新型うつ病という言葉をご存じでしょうか?一時かなり使われていた言葉ですが、言葉自体がそもそもマスコミの造語で正式な病名ではなく、内容も病態(原因やメカニズム)を捉えているとは言い難いものです。
対して似たような言葉に非定型うつ病というものがありますが、こちらは正式な病名です。ただこちらも漠然としているというか、はっきりと病態を捉えた概念ではなく、私も耳にするたびに未だにモヤモヤしています。
今回はそんな、非定型うつ病、新型うつ病に関して、実際のケースを通して、少しでもモヤが晴れるような、なんとなくでも実態を捉えられるようなご紹介をしていこうと思います。
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本題に入る前に、まずは旧来型のうつ病について。従来のうつ病は、真面目で規律を守って、他人への気遣いもできるような方々が、思い悩んでエネルギーを使い果たし疲れ切ってしまい、抑うつ気分になって、ご飯も食べれなくなって体重も減って、何もする気がなくなって整容面も乱れ、夜も眠れなくなってしまう、
こういった状態がいわゆる旧来型のうつ病です。上記のような性格の方々が、メランコリー(うつ)になりやすいことから、メランコリー親和型性格といったりします。またこういった旧来からのうつ病をメランコリー親和型うつ病と言ったりもします。
未だはっきりとした原因は分かってはいませんが、脳の中の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの不足が原因なのではないかと言われており、
従来型のうつ病は、非定型うつ病に比べると抗うつ薬(セロトニンやノルアドレナリンを調節する薬)が効きやすいです(よく言われるのが1/3薬が効いて、1/3は何もしなくても良くなるし、残りの1/3は薬を飲んでも良くならない)。
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対して本題の非定型うつ病に関して、実際に私の外来に通っている、とある30代の女性(Aさん)、仕事に行けない、朝起きられない、けれど休日には友達と映画を見に行く、食欲もあり外来に来るたびに体重は増えている。
仕事は休んでいるけれど、食べたいものは食べて、自分の好きなことは楽しめている、これだけ聞くと「怠けているだけ」「甘えているだけ」と思う方も多いかと思います。治療者の中にもこういった患者さんに陰性感情を持つ方もいるかもしれません。
そんなAさんですが、ある時外来にお母さんと一緒に来院されました。その際にAさんの昔の様子を伺ったのですが、4人兄妹の末っ子で、思春期も反抗期もなくいい子で、いわゆる「手のかからない子」だったと言うのです。
非定型うつ病の一つのパターンとして、幼少期や思春期の多感な時期にうまく感情表出ができなかったり、周囲に気づかいをするあまりに自分を抑えて周りに合わせてきた、そういった方が大人になってから対人関係や仕事面でうまくいかなくなるようです。
最近は旧来型のうつ病と言うよりも、ご紹介した非定型うつ病や、何らかのストレスに反応してうつ状態になった適応障害、で来院される方が増えています。
従来のうつ病のように症状を横断的に診るだけでなく、非定型うつ病では生育歴や職場環境、家庭環境なども確認する必要があります。発達障害や愛着の問題も絡んでいることも多いです。
新型うつ病、非定型うつ病のこういった背景を知ると、「決して甘えではない」ということがお分かりいただけたかと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。