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詩人Antonia Pozziの映画「Antonia.」を観る
先日、「Antonia.」という2015年の映画を観た。詩人Antonia Pozziの伝記映画で、シマ子の得意ではないイタリア映画のため、2015年に放映された際には見逃していたようだ。
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Antonia Pozziについて。。。
もしかしたら、この詩人をご存知の方もいらっしゃるかもしれない。というのは、1983年の夏を舞台にしたTimothée Chalamet主演の映画「Call me by your name(2017年)」でEsther Garrel演じるMarziaが主人公のElioから彼女の詩集『Parole』を渡されるシーンがあり、もし私のNoteを読んでくださる方の中にTimothée Chalametの熱狂的ファンがいらっしゃれば、隅から隅まで見てる可能性もあるかな、と思ったのだ。
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この詩集が使われた理由は、シマ子の憶測ではあるが、「Call me ---」の監督Luca Guadagninoの相方が「Antonia.」の監督Ferdinando Cito Filomarino(かの有名な「ベニスに死す」のLuchino Viscontiの親戚だそう)のため、彼のことを想って取り入れたのでは、と思っている。
深い愛とは、きっとそういうものなのだ🤭
ところで、、、
なぜ今頃この映画を観ようと思ったか。
それは、シマ子のNoteのトップに使っている、お気に入りの霧深い写真を撮った場所が、Antoniaの母方の祖父母の土地であり、幼い頃彼女も訪れた思い入れのあるZelataという村から数キロの地点にあるのだ。
私はその日霧の中の散歩会に参加したのだが、開催者が、ちょうど下の彼女の写真の背景の道で、Antoniaについての説明と併せて、彼女の詩を朗読してくださったのが非常に印象的だった。
その日の早朝は、真っ白な霧に覆われた太陽とも月ともわからない輝く球体が空に浮かび、それが雲の合間に見え隠れし、得も言われぬ光景だった。
そんな中で聴くAntoniaの詩は、幻想的で、繊細で、心の痛みがかすかに伝わってくる内容だったと記憶している。
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Antonia Pozzi (13/02/1912 Milano – 03/12/1938 Milano)
著名な弁護士と伯爵夫人の娘としてミラノに生まれる。
10代の時に最初の詩を書く。
1930年にミラノ大学入学、1935年にFlaubertに関する論文を提出して卒業。
多くの文化的関心を示す日記をつけ、手紙を書き、写真を撮り、自転車での長距離旅行が大好きだった。お気に入りの場所は、Lecco県にある18世紀の家族の別荘で、山の孤独で厳しい自然に触れながら執筆を行った。これらの場所の明確な説明、背景、反響は彼女の詩の中に見ることができるが、彼女がよく知っていたミラノの環境についての説明は決してなかった。
26歳の彼女は、1938年12月の雪の夜、自転車でChiaravalle修道院に通った後、修道院の前の草原でバルビツール酸系薬剤を摂取して自ら命を絶った。両親への別れの手紙の中で、彼女は「死に至るほどの絶望」について語った。家族は自殺という「スキャンダラスな」状況を否定し、死因は肺炎だったとしている。遺書は父親によって破棄され、父親はノートに書かれた彼女の詩も操作し、その後すべて未発表となった。
以上がAntoniaのBioの抜粋だが、映画では彼女の人生の最後の10年についてを描いており、Bioにはない、高校のラテン語教師と恋をするくだりを含む16歳の章から始まっている。大学以降は、幼馴染と思われる良家の男性と山へ行ったり、デートをしたり、教師に詩のアドバイスを求めるシーンと並行して、常に父親の存在が目立っている。父親はAntoniaを訪ねてくる男性に何らかの影響を与え、つまり、彼らが話しているガラス扉の裏でAntoniaが聞き耳を立て、ほどなくして関係が終わる、という構図が何度か繰り返されており、その度にAntoniaが悲しみに暮れ、絶望するシーンが挟まれる。
Antoniaは26年という短い期間で人生を絶ったため、映画内でも、Bioにある以上に特別な何かが語られている、というわけではないが、良家の家具や内装や、ノスタルジックな風景描写が女心をくすぐること、また最大の見どころは、Ursula PatzakがデザインしたAntoniaの全ワードローブをFendi が手掛けていることではないかと思う。
なんと、あのFendiが・・・!
ということを、映画のエンドロールを最後まで見て知ったわけだが、どうりで、シンプルな中にも上品な色遣い、上質な素材が使われていることが一目瞭然で、「さすがに、良家の子女ともなれば良い品を着ていて当然だろうが、それにしても高校生であの出で立ち、あの贅沢さはアリなのか」と思わされる節があったのは否めなかった。
それくらい、中年の私でも(いや、だからこそ、かもしれない。実際、20~30代前半では、こういう服装には惹かれないかもしれない)嫉妬してしまう衣装だったので、日本での放映はされていないようだが、雰囲気だけ、少し写真と映像で紹介したいと思う。
以下、全て、ネットからダウンロードした写真だが、あまり種類がないので、他の美しい衣装は、本編を見た方のみぞ知る、ということらしい。。。
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ちなみに、映画館の通路には、Antonia Pozziの幾つかの写真と詩の紹介がされていたので、半分くらい紹介したいと思う(映画館であまりバッチバチ写真を撮るのは、さすがに気が引けたシマ子😅)
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意訳すると・・・
私たち二人の間で重みを増す
言葉にならない多くの言葉
そして満たされない飢え。
子供たちの泣き声は癒されない。
悲痛な母親の胸
そして臭い-
ボロ布の匂い、排泄物の匂い、死者の匂い-
物憂げな廊下を蛇行する
垣根は風にうごめく
あなたと私の間に。
でも外では。
霧の星々の下で、二つの大きな光りが静止している。
広い出口
そして水が
田舎へと向かって行く;
そして、一筋の光、空に浮かぶ黒い教会たち、
壊れた靴の一歩一歩が
空気の道へと向かって行く
宗教的に
私からあなたへ。
本当はもう少し滑らかにしたかったけれど、できるだけパネルで改行されている通りに訳してみた。
もしかしたら、もう少しよい訳を付けられたかもしれないけれど…いつかAntoniaの詩集を買ったら、その中からお気に入りを選んで、心を込めて訳したいと思う。
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平原の真ん中にある母の家にいた時、窓から草原を眺めていたのを覚えている; 裏手にはTicino川を隠す森の堤防があり、さらにその奥には暗い丘陵地帯が広がっていた。
私はそれまで海は一度しか見たことがなかったが、恋人としての苦い郷愁を覚えた。
夕方、私は水平線を見つめた;
半眼で少し目を閉じた;
まつげの間の輪郭と色を愛撫した:
そして、帯状の丘が平らになった、震えるような、青;
私にはそれが海のように見え、本物の海よりも好きだった。
情景が目に浮かんでくるような、そんな詩というか散文だと思う。
やっぱり、これはもう、素敵すぎて本を買うしかない🤩
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拡大してみたけれど、光がど真ん中に当たっていて一部読み取れないので、訳は割愛します。。。スミマセン。光が当たるか、自分が入るか、究極の二択で🙄
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映画配給会社の方、オファーされたければ、是非、Luchino Viscontiの親戚にご連絡ください。
ちなみに、私が全編訳すことも可能ですよ、なんてね😁
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