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【暗いショートショート三部作(最終羽)】- (3)その鳥たちは、ピヲと鳴いたか?

 そこはピンク鳥🐦たちが長閑に囀(さえず)る森の一画。
 ピンク鳥🐦たちは平和を愛し、仲間と助け合いながら暮らしていた。
 今日も200羽あまりのピンク鳥🐦たちが、止まり木の上で互いにピヲピヲ🐦と囀り合っている。

 🐦「いい天気ですね! ピヲピヲ!」
 🐦「そうですね! ピヲピヲ!」
 🐦「ハミングしちゃいますね ピヲピヲ!」
 🐦「そうですね! ピヲピヲ!」
 🐦「甘い蜜が吸いたいですね! ピヲピヲ!」
 🐦「そうですね! ピヲピヲ!」
 🐦「ホバリングは楽しいですね! ピヲピヲ!」
 🐦「そうですね! ピヲピヲ!」
 🐦「ピヲピヲ鳴いていれば、それで十分ですね! ピヲピヲ!」
 🐦「そうですね! ピヲピヲ!」
 🐦「甘い蜜ヲ吸って、ピヲピヲ鳴いて、パタパタ飛んで、ピヲピヲ鳴いて、ホバリングヲ楽しんで、ピヲピヲ鳴いて、他には何もいりませんね! ピヲピヲ!」
 🐦「そうですね! ピヲピヲ!」
 🐦「いい天気ですね! ピヲピヲ!」
 🐦「そうですね! ピヲピヲ!」

そのときである! 

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!💥

ピンク鳥🐦たちを脅かすマシンガンの音。

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦」

バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ~ッ……

200羽あまりのピンク鳥🐦たちは、驚きのあまり、止まり木から離れ、そこかしこをバタバタと飛び回った。

 ピンク鳥🐦たちが気付くと、あたりは500人あまりの黒づくめの男たちに囲まれていた。
 彼らの手には、いずれもマシンガンが握られていた……。
 代表と思われる黒づくめの男が拡声器を取り出し、ピンク鳥🐦たちに向かって話し始めた。

「えー、我々は『甘ったれたピンク鳥🐦たちに説教をする団体』である! 非常に怪しい団体であり、且つ非常に非情な団体であることを自認しているので、くれぐれも気を付けるように!」

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!💥

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦」

バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ~ッ……

またもや500あまりのマシンガンが火を吹き、200羽あまりのピンク鳥🐦たちがバタバタ舞うというくだりが繰り返された。

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 何なんですか、アナタたちはToT🐦 我々は呑気にピヲピヲと囀っているだけの平和なピンク鳥🐦ですToT マシンガンなどという危険なものを乱射するのは、やめてくださいToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

「えー、アナタたちピンク鳥🐦の囀りを先ほどからコッソリ聞いていましたが、何ともつまらない! 『ホバリングは楽しいですね! ピヲピヲ!🐦 そうですね! ピヲピヲ!🐦』じゃないんです! オチもなければ、学びもない! 日がな一日、そのようなつまらない囀りを続けるくらいであれば、もう少し、、、えー、、、何だ、その、、、美味しい存在になるなどして、、、コホン! 人類に貢献した方がよいのではないですか?!」

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 我々はピンク鳥🐦仲間たちと平和に囀っていたいだけなのですToT🐦 人類の皆さんに干渉はしませんから、鳥類の我々のこともそっとしておいてくださいToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

「いえ、ピンク鳥🐦の皆さんには、もっと崇高な使命もあるわけですから、そのようなつまらない囀りヲ聞かされ、このまま立ち去る訳にはいきません! 『そうですね! ピヲピヲ!🐦』などという囀りヲ聞かされる側の身にもなってください! 我々にもピンク鳥🐦さんたちに気付きヲ与えるという任務があります! まずはして、、、その『ピヲピヲ』という鳴き方も、どうにも耳障りなのです! 鳥🐦であれば、鳥🐦らしく、『ピヨピヨ』と鳴いたらどうですか?! それをわざと人気者になろうとして、あざとく『ピヲピヲ』だなんて! これで少し反省してください!」

 ――夕暮れ時の空、満月が薄っすらと顔を出した。
 黒づくめの男たちの何人かが、手にしていたマシンガンを脇に置き、空気銃のような武器に持ち替えた。 
 そして、リーダーの号令により、彼らが一斉に空に向けて空気銃を撃った。
 次の瞬間……上空から何枚かの網が舞い降りて来た! 
 200羽あまりのピンク鳥🐦たちは、ちょうど満遍なく「20~30羽🐦/網」くらいになるよう、複数の網に囚われた。

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 何をするのですかぁ~ToT🐦 我々はただピヲピヲ鳴いていただけじゃないですかぁ~ToT🐦 人気者になろうとなんてしてませ~んToT🐦 何もご迷惑は掛けていませんToT🐦 網から解放してください~ToT🐦 ピヲピヲピヲ~ToT🐦」

バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ~ッ……

 200羽あまりのピンク鳥🐦たちは、網から逃げ出そうと必死にバタバタもがいたが、もがけばもがくほど網はピンク鳥🐦たちの体に食い込み、ピンク羽が大量に抜け落ちた。

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 自慢のピンク羽が~ToT🐦」

「ピンク鳥🐦の皆さん、少しは自らの愚行を反省しましたか?」

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT 反省も何も、我々はただ平和にピヲピヲ鳴いていただけじゃないですかぁ〜ToT🐦 網が苦しいですToT🐦 ピヲピヲ〜ToT🐦」


「いいですか! ピンク鳥🐦の皆さん、よく聞いてください! 皆さんは、所詮『ピヲピヲ』と鳴いていれば、すべてが上手くいく、誰かがどうにかしてくれる、そうやって甘えていませんか?! その甘えが、『ピヲピヲ』という鳴き方に凝縮されていると我々は考えています!」

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 甘えてませ~んToT🐦 鳥🐦ですから鳴きますよ~ToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

「ほら、また! 今のだって、『鳥🐦ですから鳴きますよ~ToT🐦』で止めておけばいいのに、最後に余計な『ピヲピヲToT🐦』を付け足して、甘えているではないですか! 皆さんは、どう考えても『ピヲピヲ』に依存し過ぎなのです! 何事にも依存はいけません! 人にもnoteにもピヲピヲにも、何事にも依存していると、ろくな目に遭いませんよ!」

 サッ!
 木の枝の陰から巨大なマジックハンドが高速で伸び、網の隙間から侵入した。
 そして、1羽の哀れなピンク鳥🐦を網から摘まみ出した。
 マジックハンドにしっかりと握られたピンク鳥🐦は身動きが取れず、恐怖のあまり、ピヲピヲと鳴いて(泣いて)いる。

哀れな1羽のピンク鳥🐦

「ピヲ~ッToT🐦 何ですか、このマジックハンドは〜ToT🐦 私を握りつぶすのはやめてくださ〜いToT🐦 誰か助けて~ToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

「ほら! また最後に『ピヲピヲToT🐦』と付け足しているではないですか! 次に『ピヲ』と鳴いた場合、マジックハンドに備え付けられたピヲセンサーが反応し、あなたヲ捉えているのとは別のマジックハンドが、アナタのピンク羽を毟り取る仕掛けになっています!」

哀れな1羽のピンク鳥🐦

「ピヲ~ッToT🐦 む、毟り取る?ToT🐦 自慢のピンク羽ヲ~ToT🐦 やめてください~ToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

🪶👌ブチッ!🪶👌ブチッ!🪶👌ブチッ!

「ピヲ~ッToT🐦 痛い〜ToT🐦 やめてください~ToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

🪶👌ブチッ!🪶👌ブチッ!🪶👌ブチッ!

「ピヲ~ッToT🐦 痛い痛い~ToT🐦 誰かぁ~ToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

🪶👌ブチッ!🪶👌ブチッ!🪶👌ブチッ!

「ピヲ~ッToT🐦……」


「やれやれ、エンドレスなので、いったんピヲセンサーを止めましょう……」

哀れな1羽のピンク鳥🐦

「ピヲ~ッToT🐦 なぜ長閑に鳴いていただけの私が、こんな酷い目にToT🐦 自慢のピンク羽が大量に毟られてしまいましたぁ~ToT🐦 痛いToT🐦 誰かぁ~、助けてください~ToT🐦 ピヲピヲToT🐦」


 『甘ったれたピンク鳥🐦たちに説教をする団体』のリーダーが、拡声器を使って話し続ける。
ピンク鳥🐦の皆さん、『ピヲピヲ』無しの会話というのが、ほぼムリな状態にまで『ピヲピヲ』に依存してしまっているようですね! これは大問題です!」

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 依存とかじゃありませ~んToT🐦 鳥🐦ですから鳴かせてください~ToT🐦 鳥権侵害だぁ~ToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

「こうしましょう! いったんピンク鳥🐦さんたちを網から解放します!」

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 やったぞ、みんな~ToT🐦 『甘ったれたピンク鳥たち🐦に説教をする集団』さ~んToT🐦 ありがとうございます~ToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

「しかしっ! ここらへん一帯の止まり木にはすべて高圧電流を流しておきました! 皆さん、迂闊に止まり木に戻ると『バチバチバチッ!』で、そのまま黒焦げ鳥🐦に成り果て、地面にボトボトと落下です!」

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 やめてください~ToT🐦 止まり木は鳥🐦にとって、憩いの場でもあり、住処も同然なのです~ToT🐦 鳥🐦から止まり木を奪うなんて、鳥権侵害だぁ~ToT🐦 ピヲピヲ〜ToT🐦」

「ですから、できるだけ遠くにパタパタと飛んで逃げてください! ただし、この緊急事態にちょっとでも『ピヲ』と口にした場合、我々のマシンガンが一斉に火を吹きます!

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 やめてください~ToT🐦 こんな状況で、ピヲピヲ鳴かずに逃げるなんて、ムリですよ~ToT🐦 ピヲピヲ~ToT🐦」

「あっ、そうそう、マシンガンだけだと命中率が下がりますので、我々の半分は武器ヲ高性能スコープが備え付けられた猟銃に持ち替えます!」

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 命中率ヲ上げないでくださ〜いToT🐦 ピヲピヲToT🐦」

「いいですか? ひと声でも『ピヲ』と鳴いた場合、我々もかなり真剣に狙い撃ちしますからね! その場合、ピンク鳥🐦の皆さんたちには、我々の戦利品となっていただく可能性もありますが、今から行うのは相互に合意した上での公平な儀式ですから、恨み言は言いっこなしですよ!」

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 合意してませんよ〜ToT🐦 我々がいったい何ヲしたというのですかぁ〜ToT🐦 ただ森の中でピヲピヲ鳴いてるだけじゃないですかぁ〜ToT🐦 ヲ願いですから、我々ヲそっとしておいてください~ToT🐦 人間の皆さんにご迷惑はかけませんから、どうか助けてください〜ToT🐦 ピヲピヲ〜ToT🐦」 

「では、高速マジックハンドに握らせたナイフで、上手に網だけ切り裂きますね。何羽かのピンク鳥🐦さんたちも一緒に切り裂いてしまった場合は……ごめんなさい。エヘヘ」

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦 切り裂いといて、エヘヘで済ませないでください~ToT🐦 丁寧にヲ願いしますよ~ToT🐦 我々ヲ逃がしてください〜ToT🐦 ピヲピヲ~ToT🐦」


「では、いきますよ! できるだけ遠くに逃げてくださいね! 3……2……1……オープン!

 複数の高速マジックハンドがナイフで網を切り裂いた途端、200羽🐦あまりのピンク鳥🐦たちが、恐怖のあまり、物凄い勢いで一斉にパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ〜ッと飛び出した!

ピンク鳥🐦x200羽超

「ピヲ~ッToT🐦」

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!💥

ピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲToT🐦

バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタッ🐦

ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!💥

パァーンパァーンパァーンパァーンパァーンパァーンパァーンパァーン💥

ピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲピヲToT🐦

バサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサバサッ🪶

ダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダッ!💥

パァーンパァーン💥パァーンパァーン💥パァーンパァーン💥パァーンパァーン💥

ピヲピヲピヲピヲToT🐦ピヲピヲピヲピヲToT🐦ピヲピヲピヲピヲToT🐦ピヲピヲピヲピヲToT🐦

バタバタバタバタ🐦バタバタバタバタ🐦バタバタバタバタ🐦バタバタバタ🐦バタバタッ🐦

ダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダッ!💥

ピヲピヲピヲピヲToT🐦ピヲピヲピヲピヲToT🐦ピヲピヲピヲピヲToT🐦ピヲピヲピヲピヲToT🐦

バサバサバサ🪶バサバサバサバサ🪶バサバサ🪶バサバサ🪶バサバサ🪶バサバサバサッ🪶

ダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダッ!💥

ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦

パァーン💥パァーン💥パァーン💥パァーン💥パァーン💥パァーン💥パァーン💥パァーン💥

バサバサ🪶バサ🪶バサバサ🪶バサバサ🪶バサバサ🪶バサ🪶バサ🪶バサ🪶バサ🪶バサバサ🪶バサッ🪶

ダダダダダ💥ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦パァーン💥パァーン💥パァーン💥ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦パァーン💥パァーン💥バサバサ🪶バサバサ🪶ダダダダダ💥バタバタバタ🐦バタバタッ🐦パァーン💥パァーン💥パァーン💥バサバサ🪶バサバサ🪶ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦ダダダダダ💥ダダダダダ💥ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦パァーン💥パァーン💥パァーン💥バサ🪶バサ🪶バサ🪶バサバサ🪶バサッ🪶ピヲピヲToT🐦パァーン💥パァーン💥ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦バサバサ🪶ダダダダダ💥バタバタバタ🐦パァーン💥パァーン💥ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦バタバタバタ🐦パァーン💥パァーン💥バサバサ🪶バサバサ🪶ダダダダダ💥ダダダダダ💥ダダダダダ💥パァーン💥パァーン💥ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦バタバタッ🐦バサバサ🪶バサバサ🪶ダダダダダ💥パァーン💥パァーン💥ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦バタバタッ🐦バサバサ🪶バサバサ🪶ダダダダダ💥パァーン💥パァーン💥ピヲピヲToT🐦ピヲピヲToT🐦バタバタッ🐦バサバサ🪶バサバサ🪶

シーン……。


 約1分間の激しいマシンガンと猟銃の乱射が終わった。
 辺り一面、静まり返り、舞い落ちた無数のピンク羽が地上に散らばっているのが、もうもうと立ち込める硝煙の隙間から微かに見える。
 全くの静寂……声を発する者は何もなかった……。
 ピンク鳥🐦たちは、見事に飛び去ったのか……それとも……。

(完)

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