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【脚本】『イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)』(1)

《注:色々あって舞台用の『脚本』書きの練習をしています。脚本のスタイルに慣れるための練習投稿なので、話自体は非常に大げさ且つありきたりかもしませんが、ご容赦ください》


登場人物:

  1. リカ:花屋で働く女性。

  2. ケンジ:客として花屋に入って来た男性。

場所:花屋
時間:午後遅く


【第一幕】

(花屋の店内。新鮮な花々が並び、店内には花の香りが漂っている。店内は静かで、優しいジャズのBGMが流れている。リカが花のアレンジメントをしている。ケンジがドアを開けて店内に入って来る。BGMは徐々に小さくなり、フェイドアウト)

ケンジ:「(店内を一巡し、花を観察した後、戸惑いながら作業中のリカに話しかける)こんにちは。初めて来たんですが、素敵な花がいっぱいですね」
リカ:「(微笑んで)いらっしゃいませ。今日は、どんな花をお探しですか?」
ケンジ:「実は、特別な人にプレゼントする花を探しているんです。おすすめは有りますか?」
リカ:「(考えながら)それなら、お相手の方の好きな色や雰囲気を教えていただければ、ぴったりの花束を作りますよ!」
ケンジ:「好きな色ですか、、、? 雰囲気、、、あの、すみません、恥ずかしながら、花を贈ることになれていないもので、、、」
リカ:「分かりました。特別な人へのプレゼントですね。いくつかご提案させていただきますよ。花を贈るシチュエーションなんか教えていただけると、もっといいアドバイスができると思うんですが」
ケンジ:「そうしていただけると助かります! ちょっと、、、特別なイベントというか、、、」
リカ:「(躊躇したような表情で)特別な、、、イベントですか、、、そうですね、、、(赤い花の前に移動する)定番ですが、最近男性のお客様が一番多く買われていくのが、こちらの真っ赤なバラ」
(リカが赤いバラをケンジに見せる)
リカ:「こちらのバラは、『愛』や『情熱』を表現する花言葉を持っています。鮮やかな赤が特別な人への感謝を表すのにぴったりです!」
ケンジ:「(戸惑ったような表情で)はあ、、、確かに綺麗な色ですね。ただ、、、少しアグレッシブ過ぎるというか、、、もうちょっと大人し目な感じの花とかありませんか?」
リカ:「そうですね。少し落ち着いた感じの花もありますよ。たとえば、こちらの白ユリなんていかがでしょう?白やピンクのユリは『純粋』や『優美』という花言葉を持っています。特別な人への感謝や尊敬の気持ちを伝えるのにぴったりです」
リカが白とピンクのユリをケンジに見せる。
リカ:「このユリは、とても穏やかな印象を与えますし、香りも素晴らしいです!」
ケンジ:「感謝と尊敬、素敵な花言葉ですね。似たようなイメージの花で、何かこう、、、もっと特別な、珍しい花、、、いや、花自体が珍しいというのではなく、特別な人を元気付けてあげられるような花とか、ないでしょうか? 何か、すみません。花のこともよく知らないのに、面倒な注文ばっかり出しちゃって」
リカ:「いいえ。とことん付き合いますよ! でも元気付けるっていうのは、、、あの、、、差し支えなければ、、、」
ケンジ:「祖母。祖母なんです、花を贈る相手。ちょっと、、、体壊しちゃって、長く病院の方に、、、」
リカ:「(にこやかだった表情が曇る)そうだったんですね。相手を元気付ける花、、、(少し考え込む)、、、あっ!(何かを閃いた様子で薄いブルーの花の前に移動する)このバラなんてどうでしょう? 私が大好きな青いバラ。『イン・ア・センチメンタル・ムード』っていうんです。感傷的な名前と裏腹に、このバラは『愛情』とか『喜びと苦しみ』なんていう小粋な花言葉を持ってるんですよ! 見た目もユニークで印象的で。ちょっと遊び心もあって、お婆様、きっと喜んでくださるんじゃないかしら!」
ケンジ:「インアセン、、、」
(リカが『イン・ア・センチメンタル・ムード』のバラをケンジに見せる)
ケンジ:「や! これは何と美しい! 白と言うか、薄い藤色というか、、、青色、、、?」
リカ:「このバラの名前は『イン・ア・センチメンタル・ムード』といって、純粋な色合いがとても魅力的なんです。ほら! 花びらの微妙なグラデーションが綺麗でしょう?」
(リカが微笑んで、バラをそっと持ち上げる)
ケンジ:「分かりました。では、このバラをください!」
リカ:「はい、ありがとうございます。お婆さまも、きっと喜んでくださると思いますよ」
(暗転)

【※ 作中の『イン・ア・センチメンタル・ムード』は、バラ育種家の河合伸志さまが作出されたバラです。内容を一部修正しました。海外発祥のバラと勘違いしており、申し訳ありませんでした】


【脚本】『イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)』(2)につづく。

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