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【脚本】『イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)』(4)
リカ:「先ほどの季節外れの花の話ですが、確かに手に入れるのが難しい場合もあります。そんなときは、まずお客様の話をしっかりとお聞きし、どうしてその花が必要なのかを理解するようにしています。その上で、出来る限りのことをしますが、それでも無理な場合は、代替案として同じような意味合いを持つ花を提案したりしますね。お客様が必ずしも納得するわけではありませんが、まずはお客様にとって大切な花であることを理解し、その思いを尊重して接することが大切だと思うんです。ときには時間をかけて特別な花を見つけ出すこともありますし、ときには創意工夫でお客さまに満足いただける方法を考えるようにしています」
ケンジ:「お花屋さんも色々とたいへんなんですね。でも、初めて聞くお話ばかりで、とても面白いです。お客様がその花を大切に思う理由、そして代わりとなるような花ですか。。。花に対する深く広い知識、何より心から花を愛する気持ちが大切なんだと感じます。あっ、ところで、プロポーズによく使われる真っ赤なバラ。何かこう、愛の象徴というか、プロポーズの演出として赤いバラを考えている人にとって、これに取って代わるような花って無いような気がするんです。赤いバラって季節に関係なく、いつでもどこの花屋さんでも扱っているのですか?」
リカ:「赤いバラは、確かに愛の象徴として非常に人気がありますね。特にプロポーズのような特別な場面では、赤いバラが求められることが多いです。赤いバラは1年中市場に出回っていますが、季節や特定のイベント時期には供給が不足することもあります。そういうときは、事前に予約を受け付けたり、複数の仕入れ先を調整したりして、お客様にできる限りの対応をしています。あと、季節や入手状況によっては、品質や価格が変動することもありますが、それでも赤いバラを提供できるよう最善を尽くしています」
ケンジ:「赤いバラが足りなくなることがあるとは、驚きました。因みに、赤いバラの代わりになるような花ってあるんですか?」
リカ:「そうですね。赤いバラは、やっぱり特別な存在なので、代わりになると感じるかどうかはお客様次第ですけど、たとえば、赤いカーネーションは『愛を信じる』といった花言葉を持っています。また、赤いチューリップも『真実の愛』を意味し、特別な日の贈り物にぴったりです。それから、『神秘の愛』という花言葉を持つ赤いガーベラも鮮やかで美しい花で、愛情や感謝の気持ちを伝えるのに適しています。赤いバラが特別な意味を持つように、他の花にもそれぞれの魅力があるんですよ」
ケンジ:「勉強になりました。花のことを話しているリカさんって、やっぱり『花マスター』だな。とても活き活きしている。花にもそれぞれ魅力がある、、、か」
リカ:「『代わりになる花』の話をしていた筈だったのに、何だか『かけがえのない花』の話みたいになってしまいましたね」
(リカとケンジ、顔を見合わせて笑う)
ケンジ:「でも、世界に1つだけの花なんて、歌のタイトルそのままで素敵ですね。人も同じ。強い人もいれば、弱い人もいる。何の問題もないような家庭に育つ人もいれば、親もいなくなっちゃうような複雑な家庭も、、、あっ、すいません、我ながら僻みっぽかったですね。それでも、人もそれぞれ自分だけの花を咲かせなくてはならないんでしょうね」
リカ:「それぞれの人が、それぞれの花を咲かせる。どんな環境や境遇でも、自分らしい花を咲かせることで、その人の魅力や強さが輝くと思います。ケンジさんのお婆さまも、きっと素晴らしい花を咲かせてきたんでしょうね。そして、ケンジさんもお婆さまの支えを受けながら、自分だけの花を咲かせてきたんだと思います」
ケンジ:「リカさん、優しいお言葉をありがとうございます。あっ、ところで、この青いバラ。これは、ちょうど今が季節なんでしょうか?」
リカ:「実は、青いバラっていうのは、自然界には存在しないんです。なので、特別な技術を使って作られた花なんです。ですから、季節に関係なく手に入れることができます。いつでも、その美しさを楽しむことができるのが特徴なんです」
(リカが青いバラを優しく見つめる)
リカ:「このバラの花言葉は『愛情』や『喜びと苦しみ』です。特別な意味を持つバラだからこそ、お婆さまにも喜んでいただけると思います」
ケンジ:「オールシーズンで美しさを楽しむことができるバラなんて、便利でいいですね。でも、人工的に作られた花って、何だか無機質で冷たい感じもするような。。。あっ、すみません、せっかく選んでいただいたのに」
リカ:「確かに、人工的に作られた花は少し無機質に感じることもあるかもしれません。ただ、、、(毅然とした表情になって)ケンジさん、自然界に存在しないこの青い色のバラは、多くの人の夢や努力の結晶なんです。私にとっても、、、かけがえのない花なんです。。。」
ケンジ:「リカさん、、、何だか、この青いバラに人一倍の思い入れがあるようですね。よかったら、リカさんの思い出、聞かせていただけませんか?」
(暗転)
「【脚本】『イン・ア・センチメンタル・ムード (In a Sentimental Mood)』(5)~最終幕~」につづく。
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