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#2 編曲作業にまつわるあれこれ

この連載企画では"Comedy Symphony Classicsができるまで"と題して、
コメディーの演奏会が出来上がるまでの様子や個性豊かなメンバー・スタッフの様子をまるで日記のようにお届けしながら、
読者のみなさまにも「クラシック音楽ってこんなに面白いものなんだよ!」を体現している私たちの活動の一端を知っていただけたらと思っています。

今回は「編曲作業にまつわるあれこれ」と題して、コメディーの演奏会で用いられる楽曲たちがどのように出来上がっていくのか、その工程や知られざる裏側に迫ります。

Comedy Symphony Classicsでは、2025年5月10日に愛知県名古屋市の昭和文化小劇場で開催する公演『Comedy Symphony Classics 3 〜大切なあなたへ〜』に向けて準備真っ最中。
”編曲”ということで今回の記事はこの方に書いていただきました。

Comedy Symphony Classics 3 〜大切なあなたへ〜公演の詳細についてはこちらから


記事を書いてくれた人 稲田悠佑(チェリスト・編曲担当)

大阪フィルハーモニー交響楽団の年末第九コンサートを聴いて感動し14歳の時、梅谷邦彦氏にチェロの手解きを受ける。不思議な巡り合わせで人生初めてのプロオーケストラへの客演は2019年の大阪フィルハーモニー交響楽団年未第九コンサートとなった。2019年5月、ヴォロディミル・ゼレンスキー氏がウクライナ大統領に就任した僅か6日後のウクライナ西部リヴィウを訪問、リヴィウヴィルトウオーソ室内オーケストラとサン=サーンスのチェロ協奏曲で共演。第3回イブラ・グランド・アワード・ジャパン・コンクールにおいて部門1位受賞、主催団体代表理事・審査委員長を務めるデヴィ・スカルノ夫人に称賛される。2024年5月アメリカ・ニューヨークのカーネギーホールデビュー。
モーレ四重奏団代表、P.ヒンデミット作曲の《ミニマックス~軍楽隊の為のレパートリー》やJケージ作曲の《4分33秒》、A.ヴィヴァルディ作曲/稲田悠佑 編曲の 《現代日本の四季》などといった曲を取り上げた冗談音楽コンサートを開催している。
現在、大阪府、愛知県のプロオーケストラに客奏者として多数出演している。
「より良いものをより早く」をモットーとした編曲家としても活動、納期の早さと程よいクオリティに定評がある。愛知県立芸術大学音楽研究科博士前期課程修了。

稲田氏の活動情報はこちらから!

Comedy Symphony Classics 3にチェロ奏者として出演します、稲田悠佑です!
第1回からComedy Symphony Classicsの演奏会には足を運んでいましたが、今回はなんと出演できるということで今から大変ワクワクしています!
そして、私は編曲家として今回の演奏会で演奏する楽曲の編曲も手掛けています!ご来場いただく皆様により楽しんでいただけるよう、さまざまなアイデアを散りばめながら編曲作業を行なっています!
今日は皆様に、普段は滅多に見ることのない編曲作業の裏側をお見せしたいと思います!


1.  依頼〜作業にとりかかるまで

まずはじめに「この曲をこういう風に編曲してほしい」という依頼を受けます。私の所属するグループなどで演奏するための楽曲を自主的に編曲することもよくありますが、基本的には依頼を受けて編曲作業に取り掛かります。この地点で、すでにある程度頭の中にこういう風に編曲しようかなみたいな構想を始めています。

そして、曲の長さや演奏人数などから編曲代の金額を計算します。私は後払いで承っています。後払いはいつまで経っても支払いに応じてくれないだとか結局不要になったなどトラブルが多いなどと言われますが、編曲依頼をいただく方はそのほとんどが信頼できる演奏家のため、完成してからの支払いとしています。
私のモットーは「より良いものをより早く」ですので依頼者も安心して依頼してくれます♪

次にどのように編曲作業を進めているかをお話しします!


2.  編曲の基礎固めをしていく

まずは編曲する楽曲のメロディやハーモニーの断片を五線紙にメモしていきます。そして大まかなメロディラインの完成形をコードとともに書き記していきます。これは編曲におけるいわば設計図のようなものです。

特にメドレー形式への編曲の場合はどの部分で繋げるか、どの部分を重ねるかを考えるための重要な作業です。
"少人数のための楽曲→大人数のために編曲"ならば人数が多い分ハーモニーを分厚くしてより豪華にすることができますが、
逆の"大人数のための楽曲→少人数のために編曲"となると大変です。
ハーモニーを崩さないように使用するメロディを選別して声部を減らさないといけません。この声部の取捨選択でもこの設計図が大変役に立ちます。


これが今回の演奏会のために編曲されている作品のメモ書き。いわば"設計図"。
一部分を特別に見せてもらいました。


次はいよいよ本格的に楽譜に起こしていく作業です。


3.  楽譜に起こす、パートごとに音を吹き込む〜楽譜作成ソフトのあれこれ

楽譜作成ソフトはさまざまなものがありますが、私が使用している楽譜作成ソフトは《Finale(フィナーレ、Coda社、アメリカ合衆国。2024年8月26日に開発が終了しています)》というものです。プロの作曲家や編曲家、写譜屋などが使用している本格的な楽譜作成ソフトです。私は中学生の時に父親から《Finale PrintMusic》という簡易バージョンのソフトをプレゼントしてもらい、その時にオーケストラ曲の写譜にハマりました。高校生の時に現在使用しているフィナーレを買ってもらって、本格的に編曲も始めるようになりました。


Finaleという楽譜作成ソフトに一音ずつ打ち込んでいきます!


少し話が脱線してしまいましたが、先ほどの設計図をもとにどのパートにメロディを担当させるかを選択して打ち込んでいきます。この辺は完全に編曲家のセンスや感覚によって全く違うものになったりします。
私の場合はずっと同じパートがメロディをずっと演奏するなんてことにはならないようにしています。例えば弦楽四重奏ならば第1ヴァイオリンがずっとメロディを演奏しているなんてことにはならないようにしているわけで、
聴きにきてくださったお客様の耳や目が1パートに集中しないようにしているわけです。


4.  最終確認、そして完成へ

他のソフトでもできることではありますが、《Finale》では実際の楽器の音を収録した《Garritan Instruments for Finale》という音源でデモ音源を再生させることができます。これで何回か再生させて音符の打ち間違いやハーモニーの細かい修正を行います。そして総譜(スコア譜)からパート譜を作成します。

ページ数が多くなれば譜めくりがしやすいようにレイアウトを調整します。
そして完成したパート譜、総譜のPDFを作成して編曲完了となります。


最後は完成したものをメンバーに確認してもらい、実際に音に出す作業(モーレ四重奏団での様子)。
そしていよいよ本番を迎えます!(モーレ四重奏団での様子)


私の場合は先ほども述べたように「より良いものをより早く」をモットーとしていますので依頼から平均して3〜4日程度で完成します(もちろん楽曲の長さや内容によって1日で終わることもあれば何日もかかる時もあります)。


さて、ここまで私の編曲作業の進め方をお話ししてきましたが、今回のComedy Symphony Classics 3でも同じように作業を進めています!
特に今回は編成が〈フルート、クラリネット、ピアノ、ソプラノ、テノール、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス〉とユニークなのでいろんなことができて音を出すのが楽しみです!

しんみりする楽曲はより心に染み入るように、元気だったり激しい楽曲はよりカッコよく演奏できるように工夫して編曲しています!どんな編成でもどんな曲でもお客様により楽しんでいただけるよう、これからも編曲活動を続けていくつもりです!
もちろん演奏家の皆様、編曲の依頼を私にしてくれてもいいんですよ??いつでもお待ちしております♪

それでは私のお話はここまで。
それでは2024年5月10日Comedy Symphony Classics 3、昭和文化小劇場でお会いしましょう!お楽しみに♪


今回記事を書いてくださった稲田悠佑氏のアレンジ楽曲が楽しめるComedy Symphony Classicsの新制作公演『Comedy Symphony Classics 3 〜大切なあなたへ〜』は、
2025年5月10日(土)に愛知県名古屋市の昭和文化小劇場にて開催します!
ぜひぜひお誘い合わせの上、ご来場ください!
noteでもこの公演について情報や準備の様子をご紹介していきます。
詳しくはこちらをご覧ください。
チケットのお求めはこちらから




P.S. 写真にも登場した、稲田さんが代表を務める「モーレ四重奏団」。ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロから成る編成でアツい音楽を奏でているグループですが、
Comedy Symphony Classicsの公演に先駆けて演奏会があるとのこと!
ブラームスとブルックナー、2人の作曲家にスポットを当てての演奏会
ぜひこの記事を読んでくださった方で気になる方は足を運んでみてはいかがでしょうか?

チケットはこちらから入手できます!


今回は編曲者としての彼の一面に迫りましたが、これからもnote企画では彼を含めたComedy Symphony Classicsに関わる演奏家のみなさんの活動の様子や横顔に迫っていく…ような企画を考え中。
ぜひこれからの記事もお楽しみに!

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