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「国家の罠」評 -なんじゃこの本は、、、

ロシアのウクライナ侵攻があって早や1ヶ月以上。この本を手に取ったのはその侵攻があった後だった。年度末で忙しい中、中断しつつ読み進めていたが、一気に読み終えたのだが。

読んだことのある方には分かると思うが、とても知的な本なのだ。知的好奇心を刺激し続けてくれる。映像や記事で佐藤優さんには接していたが、あらためて、この方の凄まじさに触れた。もっと早く読んでおきたかったと思った。今でも、読んでよかったと思った。

新自由主義的な揺り戻しが全盛の今、私は、この本に触れられてよかった。何が良かったかというと、感情とか個人の気持ちとかの次元ではない、形而上学なのか、哲学的なバックボーンを感じるからなのか。佐藤優さんは神学にも哲学にも通じており聖書を読み込んでおられ、獄中でも読み返していらっしゃるほどだ。そのベースが違う。いかに私が薄っぺらいことか。

哲学とか精神について考える。表層的な事象から深く、深く人間の中に入っていく。感情的な皮肉や恨み嫉みは、ない。なんと、美しいことか。迎合しない、ひたむきさ。

実は軽い気持ちで読み始めた。評価が高いのは知っていたが、失礼ながらその悪人的な風貌と朧げながら記憶している当時の空気から、避けていた節はある。多くの大衆と同じく、「悪そうな人だな」という印象操作にすっかりやられていたことを、恥じるばかり。情報を、鵜呑みにしてはいけない。

結果的に読んで本当によかった。読んでいる最中に、プレジデントの記事も読んだ。なるほど、一貫している。ブレていない。人間を深く、深く洞察している。

本文中でも、現在のロシア・ウクライナ情勢を予言するような、深い洞察がある。もちろん、ロシア情勢のみならず、現在の愚民化的状況をも。

ソ連が崩壊して自由、民主主義、市場経済のロシアになったといってもロシアは所詮異質な世界で、全体主義的性格から脱皮することはできない。(中略)ロシアの状況を考えるならば、全体主義体制への逆戻りもありうる。
『国民の知る権利』とは正しい情報を受ける権利も含みます。正しくない情報の集積は国民の苛立ちを強めます。閉塞した時代状況の中、『対象はよくわからないが、何かに対して怒っている人々』が、政治扇動家(デマゴーグ)に操作されやすくなるということは、歴史が示しています。

これだけの深い洞察は、なかなか出会えるものではない。これは本当に、私にとって素晴らしい出会いだった。他の著書にも触れていきたい。人間の深い洞察。ロシア情勢の理解だけにとどまらず、良い本。もちろん、ロシアの今を理解する上で、また日本とロシアを理解する上で必読書。なんじゃこの本は、、、

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