#51:ベルギーからの来客(4)
(3)はこちら
(4)では、訪れた石井味噌での素晴らしい体験について書こうと思う。
友人はおそらく多くの情報をLonely Planet(海外版の地球の歩き方的な観光ガイド)から集めており、「味噌作りを見学できる工場がある」と伝えてきた。それがこちらの石井味噌だった。
松本城から石井味噌へ
松本城を観光したあと、なわて通りを通り(完全に観光客向けで友人はがっかりしていた)石井味噌へ向かう。
石井味噌に着いて、まずはランチ。おにぎりと豚汁をいただいた。豚汁がとても美味しくて、味噌蔵見学への期待が高まる。
石井味噌での味噌蔵見学ツアー
味噌蔵の見学ツアーは団体用のもの以外にも、個人向けのものもあり(無料)、時間を目安に蔵の入り口にいてもらえれば大丈夫、と伝えられた。個人向けのツアーは日本語と英語があり、英語のものを選んだ。
個人で旅行をしている外国の方が少し、その付き添いの日本人が少し、という8名のグループで見学が始まった。六代目当主でいらっしゃる石井康介さんが直々にガイドをしてくださる豪華さだ。
どれほど練習されたのだろうか、と思わせられるほど立派な英語での味噌蔵の説明にまずは驚く。抑揚や単語の区切り方も誰かからレクチャーを受けたのだろうか、友人も「バレルという単語だけ最初分からなかったけど、ほとんど明瞭だった」と言っていて、絶賛だった。"barrel"、確かに僕もこれをうまく発音できる自信はない。
日本の各種味噌の種類の説明、またその作り方の違い、健康への効果、といった話はどれも興味深く聞き入ってしまう。最後に出していただいた試飲の3年味噌を使った味噌汁は濃厚なのにとても甘かった。信州味噌は濃くて辛い印象を持っていたが、見事にひっくり返されてしまった。
石井味噌から学べること
石井味噌では1つの観光の素晴らしいあり方を見せてもらえたと思う。固有の文化を、その固有さを失わないながらも適切な形で発信し、興味を持ってもらえる。(3)では乗鞍高原の苦境について書いたが、おそらく同様のことが可能なのではないか。
なんでもかんでもインバウンド需要に寄せて「固有さ」を失った先には空虚なものしか残らない。なわて通りは文化的に大切な通りだったのだろうが、今や誰が興味を持つのか分からない空疎なお土産屋だらけが並んでいると感じる。石井味噌ではその固有さと外側からの興味の最高の結節点を見せてもらえたような気がして感激した。
終わりに
この感激を胸に最後は「つるや」で買い物をし、高速道路を運転して東京に帰った。ベルギーからの来客シリーズはここまで。海外からのお客さんと一緒に日本を観光すると、再発見できることがたくさんあるように感じる。また来てほしい