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2023年3月の記事一覧

君想ふ

 夏の夜、君がいつも私の隣にいたことを思い出す。
 笹に短冊をくくりつける時、ご飯を食べる時、動画を見て笑う時、暑さに負けて畳に寝転がっている時、扇風機の前で涼む時、みんなで花火をする時。君がいなかったことは一度だってなかった。
 もちろん、たまにはケンカもしたし、泣いてしまう時だってあった。私のことなんて知らないフリした時もあったよね。だけど次の日にはけろりとして、何事もなかったように振る舞う、

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唯一の楽園

そこは綺麗な庭園でした

枯れない花が咲き誇り
鈴の声を持つ小鳥が飛び
中央の噴水からは
きらめく陽光を受けて水がはね
小さな虹を作り出します

穏やかな調べが流れ
かぐわしい香りが満ち
そこで人々は安らぎを得ます

そこは楽園
世界の楽園
幸せの園
たった一つ そこだけが

さあ 庭園の外に出れば

そこに積み上がる死屍累々
黒塵をまとう雲は
陽を通すことなく
焦土の大地に草木は無く
生命の欠片

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夢渡り

第一夜

 「うわああああああっ!」
 ベッドの上で、彼は胸を押さえて飛び起きた。鼓動が速く、冷や汗までかいている。毛布をはねのけて、ようやくほっと胸を撫で下ろした。
「あぁ、夢か。……夢か」
 随分とリアルな、そして嫌な夢だった。しばらく見ていない。自分が殺される夢なんてものは。
 目が覚めた今も、まざまざと思い出せる。

 夢の中、彼はスーツを着ていて、見知らぬ住宅街に、一人ぽつんと立っていた

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邪気ちっく

 「中二病」という言葉をご存知だろうか。「病」とつくものの、本当の病気ではない。思春期を迎えた子どもに起こりがちな思考や言動、行動を指してこう呼ばれている。

 例えば、妙にかっこつけたくて急にコーヒーをブラックで飲みだしたり、「所詮、これが世界なんだ……」とか呟いてみたり、「ふっ、どうせお前にはわからないさ……」なんてニヒルに去ったり、難読文字を使いたがったり、程度の差はあれ、そんなことをやって

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冬が来る

 北風が、家々の戸を荒々しく打ち鳴らした。窓ががたがた震え、冷たい息吹がわずかな隙間から部屋に忍び込む。
 祖母に抱かれた少年の頬には赤みが差している。ぶるりと肩を震わせた彼の、その柔らかな絹糸のような茶色の髪を、しわが刻まれ、節くれだった手が撫ぜた。
「寒いかい。そうさね、ここんとこ、急に寒くなったからね」
 少年はもぞもぞと身体を動かし、囲炉裏の火に手をかざした。
「お日様もあんまり照らなくな

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