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週末のしとろん
2023年3月29日 14:34
夏の夜、君がいつも私の隣にいたことを思い出す。 笹に短冊をくくりつける時、ご飯を食べる時、動画を見て笑う時、暑さに負けて畳に寝転がっている時、扇風機の前で涼む時、みんなで花火をする時。君がいなかったことは一度だってなかった。 もちろん、たまにはケンカもしたし、泣いてしまう時だってあった。私のことなんて知らないフリした時もあったよね。だけど次の日にはけろりとして、何事もなかったように振る舞う、
2023年3月29日 13:55
そこは綺麗な庭園でした枯れない花が咲き誇り鈴の声を持つ小鳥が飛び中央の噴水からはきらめく陽光を受けて水がはね小さな虹を作り出します穏やかな調べが流れかぐわしい香りが満ちそこで人々は安らぎを得ますそこは楽園世界の楽園幸せの園たった一つ そこだけがさあ 庭園の外に出ればそこに積み上がる死屍累々黒塵をまとう雲は陽を通すことなく焦土の大地に草木は無く生命の欠片
2023年3月29日 13:48
第一夜 「うわああああああっ!」 ベッドの上で、彼は胸を押さえて飛び起きた。鼓動が速く、冷や汗までかいている。毛布をはねのけて、ようやくほっと胸を撫で下ろした。「あぁ、夢か。……夢か」 随分とリアルな、そして嫌な夢だった。しばらく見ていない。自分が殺される夢なんてものは。 目が覚めた今も、まざまざと思い出せる。 夢の中、彼はスーツを着ていて、見知らぬ住宅街に、一人ぽつんと立っていた
2023年3月29日 11:50
「中二病」という言葉をご存知だろうか。「病」とつくものの、本当の病気ではない。思春期を迎えた子どもに起こりがちな思考や言動、行動を指してこう呼ばれている。 例えば、妙にかっこつけたくて急にコーヒーをブラックで飲みだしたり、「所詮、これが世界なんだ……」とか呟いてみたり、「ふっ、どうせお前にはわからないさ……」なんてニヒルに去ったり、難読文字を使いたがったり、程度の差はあれ、そんなことをやって
2023年3月29日 11:30
北風が、家々の戸を荒々しく打ち鳴らした。窓ががたがた震え、冷たい息吹がわずかな隙間から部屋に忍び込む。 祖母に抱かれた少年の頬には赤みが差している。ぶるりと肩を震わせた彼の、その柔らかな絹糸のような茶色の髪を、しわが刻まれ、節くれだった手が撫ぜた。「寒いかい。そうさね、ここんとこ、急に寒くなったからね」 少年はもぞもぞと身体を動かし、囲炉裏の火に手をかざした。「お日様もあんまり照らなくな