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運命の欠片を感じた話。世界最古のパブOsteria del soleにて。

話は、4年前の2018年3月に遡る。

学生旅行で、はじめてボローニャに来た時のこと。

オステリアで、タリアテッレ・アル・ラグー・アッラ・ボロネーゼ(当時は舌を噛みそうになった名前である)を食べている時に、向い合せの席の人と知り合いになった。

いかにも昔ながらのオステリア(食堂)で、わいわいがやがやとしており、メニューは無いようなもので、地元の人達もハウスワインとボロネーゼを食べて、お腹いっぱい食べたらさっさと出ていくような店だった。

(今年イタリアに来てからあまりこのような店に出会っていない。コロナでなくなっちゃったのかしら。)

一人旅で、前に座った人に話しかけられて、会話を楽しんだ覚えがある。美術が好きな人だった(見た目もいかにも美術好きな感じの印象を受けた)。

その人がもう少しワインを飲みましょう、というので、OKというと、雪の降る日、凍てつく石畳の通りを勇み足で進み、裏の通りを抜けた店に連れて行ってくれた。

ワインは特に美味しい印象が残っているわけでもなく、建物は古くて、隙間風が入るのだが、人々のむんとした熱気とワインで顔が火照るくらいだった。

その日にミラノに向かうバスの時間が迫っていたので、お礼を言って店を出た。ボローニャの滞在時間はわずか24時間だった。


そして、2022年5月10日の今日。

ボローニャ大学での論文を書く準備で、ルネサンス期の食のコスモポリタニズムについてリサーチをしていた。

そこで、発見したのが世界最古のパブとして出てきたのがこちらの店。

Osteria del sole

ボローニャにあり、しかも現在もあるというのでGoogle mapで探したら、出てきた写真を見て心臓が飛び跳ねた。4年前に連れて行ってもらった店だった。

当時は、就職する前の学生旅行、その後、こんなに食にも料理にもイタリアにものめり込むことになるとは微塵にも思っていなかったのだけど、今、Google mapで写真を見て、忘れかけていた記憶が鮮やかに蘇り、心臓がバクバクする。

彼はある意味、すごい選球眼を持っていた。

オシャレなワインバーはいくらでもあるのに、あえて「パブ」の古典的な意味を体現している、小汚いパブに私を連れて行くなんて。

今なら、キャピタリズムをふんと鼻で笑うボローニャらしいパブだって、少し分かる。ボローニャ人の彼のセンスに脱帽だ。

この話をしようと再会しようにも、残念ながら、連絡先を知らない。

それにしても、私がここにいるのは、4年前に運命の欠片があったのかもしれない。


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