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#229-4【虎に翼語り】第1週(4) 「あなたが優秀なことなんてわかってます!」という"黙らせ手法"

今日もお読みくださってありがとうございます!

最近、復職のことを考える機会が増えて焦燥感にかられているのか、「何かに間に合わなくて焦っている」夢をよく見ます。
約束に間に合わなかったり、電車に間に合わなかったり。
毎日ここに書いていると、不思議と以前見たような「トイレを探す」夢は今はありません。
夢ってすごいですね。

今日もタイトル画像は、明治大学博物館で開催中の「虎に翼展」で展示されていた伊藤沙莉さん(たぶん直筆)の寅子イラストです。
引き続き、第4回について書きます。

↓ 公式サイトはこちら。人物相関図なども! ↓


第1週 The 1st stage "vs Mother Haru"

第4回 「あなたが優秀なことなんてわかってます!」という"黙らせ手法"

「強か」ってなんだ

第4回の序盤では、花江のアドバイスどおり「強か」に立ち回ろうと奮闘する寅子が描かれます。
スンとして家事をこなし、ニコニコと食卓に着き、はるの顔色ばかり見て過ごす。
でも、向いてないから生命力を失っていく。

花江の披露宴では酔っ払った父に強いられて余興の歌を披露させられます。
ハレの席だし「強か」実行中なので表向き楽しそうに歌ってるけど、「便利に使いやがって」とは思うよね。
その時の選曲はかかあ天下の歌「モンパパ」。

「ていうか、なんだ、強かって。なんで女だけこんなにみんなの顔色を窺いながら生きなければならないのか?」
という怒りのこもったナレーション(尾野真千子)が入ります。

現代では「強か」は「賢い」とか「戦略的」とか「計画的」と言った言葉で表現され、男女問わず必要なスキルとして語られています。
これに怒るのは青臭いと言えば青臭い。
でも、男女問わず確かにいつか感じたことのある怒りではないでしょうか。

優三さんの視線

書生の優三さんは常にそんな寅子のようすを見ています。
「見ている」ということでは同じなんだけど、寅子がわざとらしくはるの顔色を窺っているのとは対照的な目線。

寅子の視線は警戒する目線で、「相手の情報を得て自分が安全を確保しよう」という感じで最終的には自分に帰ってくる目線だが、優三さんの目線は、ただただ寅子に向けられていて、寅子を気遣って、寅子が目的地で、優三さん自身に戻ったり何か別の目的に行きついたりしない。

貸した金返せよ

披露宴の後、花江ちゃんがさすがだなと思ったのは、寅子に

もう(はるへ進学の話をしても)いいからねいつでも。
我慢してくれてありがと♡

と耳打ちするところ。

助け借りパク泥棒って世の中多いですよね。
でもクレカ引き落としできなかったら止められるのと同じように、お金でも恩でも借りたものは返したほうが経済合理性がいいはずです。
花江ちゃんみたいな人ならカウンターパートにできる。

ここでちょっと涙ぐむ寅子が大変かわいい。
そんなところも花江との良い関係性が現れている。

わかるー……自分の頑張りが伝わってたって、思いもよらないタイミングで直接的に伝えられると泣けるよね。

この感慨は『3月のライオン』7巻でも、主人公零くんの独白として印象的に描かれています。

何だろうこれ… 
いったいぼくは
いつのまに出ていたんだ?
こんな明るいところに………

「頼りにしてる」ってことだよ
「おめでとう がんばってたもんな」
「れいちゃんありがとう」

こんな急に 手に入ったものは
やっぱり また 急に消えて行っちゃうのかなあ
でも 今はただ うれしくて うれしくて……

『3月のライオン』7巻から引用

急にトイレに駆け込んで目頭を押さえて泣く零くんに感涙必死の名場面です。

トラつばの話に戻すと、これは作中ずーっとなんだけど、伊藤沙莉さん泣くと鼻の頭が赤くなるのが、とってもリアルで、とっても魅力的。

そしてこの場面をも隣で見ている優三。

涙をぐっとこらえた寅子を見て微笑み、この後、寅子と同じほうに視線を向けます。寅子はまったく気が付かない。王道少女漫画的展開。

ともあれ、寅子、中ボス・花江に無事勝利です。

見てくれ沙莉寅子の小鼻名演!

そこへ、同じ建物内での晴れの席帰りと思しき穂高教授がやってきます。
思いもよらぬ遭遇で、寅子の明律大学女子部合格がはるの耳に初めて入ってしまいます。
このときの寅子の表情がまためちゃくちゃイイ!!!

はるに睨まれて「ヤッベェー」の表情。
なんとも言えない表現が巧み!!

この表情。
この顔の似顔絵を描きたくて挑戦して失敗しまくってあきらめたのですが、何よりも「どこも見てない目」が再現できない。人間は「どこも見てない目」を何から認識するんでしょうね。

なおここでも伊藤さんの卓越した小鼻表現が発揮されています。
ちょっと小鼻が横に広がって強張っている感じ。
この方は、自分が美しくみえるか、とかよりも演技表現にリソースを全振りしているのがとっても魅力的!
これだけ演技の幅があったら、演じるのが楽しいだろうなあ……

いよいよ1面ラスボス・母はるとの直接対決

さていよいよこの後お待ちかね、母子の直接対決です。
この回、長いなあ……。緊張の場面が続きます。

はる「歌劇団も進学もどうせ全部お見合いから逃げるための……」
寅子「そうだよ」

この「そうだよ」も素晴らしかったなあ……。
怒鳴るでもなく、でもピシャリと言い切る言い方。

その後、「穂高先生に何を吹き込まれたのか知らないけどそんなものに乗せられて」と言うはるに寅子はこう反論します。

吹き込まれてなんかいない。
けど、先生は私の話を遮らなかった。
それどころかもっと話をしろ、話を続けろって。
そんな風に大人に言われたことなんて今まで一度もなかった。
それだけで、すごくうれしかった。

はるに「『はい』か『いいえ』で答えろ」って遮られまくってたのが思い出される場面です。

今日日「相手の話は遮らずに聞こう」と言われて久しいですが、それでも遮る人ってたくさんいますよね。
朝生でたかまつななさんが相手の話を遮っている動画を見ましたが、公開放送でいくらなんでも悪手だと思いました。今日日最低限最後まで聞くポーズは取らないと。

わたしもかぐや姫課長に「なんでも否定から入るな」って言われたなあ。
それってイコール「『はい』で答えろ」ってことだもんね。
はるさんより悪い。
まあはるさんの詰問も「いいえ」と答えられる状況じゃないから実質同じですが。

「あなたが優秀なことなんてわかってます!」という"黙らせ手法"

そのあとのやり合いも見に覚えのあることが多くて、

寅子「知ってるでしょ、私が女学校でも(成績優秀であることを言おうとする)」
はる「あなたが優秀なことなんてわかってます!!!」

あー、それな。

「あなたが優秀なことなんてことさら言わなくてもわかってる」と言われて、実質黙らされるやつな。

あるある。めっちゃある!
あーーーーーーーるーーーーーーーう!!
(でもこれは、真の天才や秀才はもしかしたら経験しないのかもしれない)

もし優秀な人が「自分が優秀であること」をわざわざことさら言挙げしようとしていたら、それはそれを言いたいんじゃなくて、その先に何か別に伝えたいことがあるのに伝わっていないからだと思う。

なんとトラつばは、フェミニズムドラマなだではなく、ギフテッドドラマ(もしくは中途半端ギフテッド?女性ギフテッド?)でもあるのか……。

第5回に続きます!


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