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自由帳4頁目「世界は発見で満ちている」

たまにテレビなどで
「主婦が考えたアイディア商品」
のような物が紹介されたりする。
百均で売ってる便利グッズが
どこかの奥様のふとしたひらめきから
生み出されたりしてるらしい。

何百年と続いている落語でも
「何故今までそこに気付かなかったのか」
という斬新なギャグやオチ、
一部ストーリーの改変が
常に誰かの手によってなされている。
落語家みんなで寄ってたかって
落語をこねたり引っ張ったり
叩いたりのばしたり。
だからこそ続いてきたんだろうし
落語家の数だけ落語があると
よく言われる所以だと思う。

今、古典として伝わっている落語も
先達が作った時は
何と斬新で画期的な噺だと
持て囃されたに違いない。
よく楽屋内で話すが
「自分の考えたギャグが
古典として残ったらかっこいいよね」
そんなものが一つでも作れたら良いなと
憧れる日々である。

まあそんな発明、発見はそうそうない。
それが出来れば苦労はしない。
が、人様のアイディアを目の当たりにして
必ず思うのが上述の言葉、
「何故今までそこに気付かなかったのか」
つまり、そういう発見は
凄く遠い世界からやってきた
未知なる存在というよりは、
実はその辺にいたけど
見える人が今までいなかった、
という佇まいであることが多い。
嫉妬心がそう思わせてる
だけかもしれないが。

世の中は誰かの発見、気付き、発明で
満ち溢れている。
そこに思いを馳せると、
国や人種など全く関係の無い
人類という共同体の姿、
そして自分はその一部として
恩恵を享受していると実感する。
感謝しなきゃいけない。

先日、かみさんが
バナナスタンドなるものを購入した。
娘が毎日バナナを食べるので
あった方が良いと判断したんだろう。
人の家で見たことはあったが
自分の人生と縁があるとは
思ってなかった。

まじまじと眺めてみた。
誰でも作れそうな形…。
S字のフック買ってきて
コンロであぶって曲げりゃ
こんなの出来るんじゃねえの?
夏休み終了間際に
小学生が適当に作った工作みたい…。

分かってる、出来ない。
まず何よりも
「バナナを吊るすスタンドが
あったらいいのに」
とか思わない。
その着眼点が凄い。
それに素人の私には分からないが、
カーブのラインやフックの形など
スタンドを構成する全ての要素が、
バナナが木に生えてる状態を
完璧に再現しているんだろう。
バナナにとって一番良い姿勢になる。
スタンドに吊るされたバナナは
そうでないバナナと
まるで違う味になるはず。
重さも大事に違いない。
軽すぎるとバナナの重さに負けて
転がってしまう。
かといって重すぎると持てない。
相当緻密な計算がなされているはず。

これを発明した人は、
金属の棒を曲げては
バナナを吊るし、
首を傾げてはまた棒を曲げ、
再びバナナを吊るして
悲鳴を上げたり
頭を掻きむしったり
机に突っ伏したりしたんだろう。
どこのどなたか存じ上げないが
あなたの努力に敬意を表したい。

かみさんに値を聞いてみた。
1200円。
1200円!?
これ1200円もすんの?
はー…。
ほぼアイディア料だろこれ…。

今ここまで書いて、
改めてバナナスタンドを見た。
良い。悪くない。
ごめん高いと思って。
バナナスタンドのある家って
凄く豊かというか、
人生にゆとりと余裕がある。
意識高いよ俺の家。
これで1200円は安いな!

でもこうして人様の苦労の結晶を
ただ受け取るだけじゃ、
まだ意識高いとは言えない。
自分も気付く側の人間になりたい。
他に吊るすなら何かな…。
ブドウとかどうだろう。
「グレープスタンド」で検索してみた。
そういう物は今のところ無さそう。
ほぉ…。

1200円なら、買う…?

でも棒を曲げる日々は面倒なので
どなたか作って頂きたい。
私はアイディアだけ提供する。
600円ずつ、山分けでどうだろうか。


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