見出し画像

【ネタバレしかない】『望月の烏』読後感想(悲鳴)

*はじめの部分だけネタバレなしです*

う、うわああああああああああああああああ!!!!
阿部智里著『望月の烏』、「八咫烏シリーズ」の最新刊を読みましたよ!
あ、「八咫烏シリーズ」、2024年4月からNHKでアニメ化です。
シリーズの1巻2巻(同時間軸別視点)をやるらしいです。
アニメ見る前にみんな原作読みな。
とぶぞ。

発売日前日に書店でゲットできたので、帰宅中から読みはじめて就寝時間すぎてようやく読み終わりました。
お布団に入ってから、ずっと雪哉のことを考えていました。
無理。

今回、ほとんど家で読んだわけですが、ひとりで
「うわあああああああ」
「やめて!やめて!!」
「怖い!ほんと怖い!」
「無理無理無理ほんと無理やめて!」
と布団の上で比喩ではなしに七転八倒しながら読みました。
普通に不審者というか、夜中に響き渡る女の悲鳴。
通報されずに済んでよかった。

「いやー!やめてー!!」
と叫びながら読み進め、残りのページ数を目と手で感じながら
「まだ何かあるの……?」
という恐怖に怯えながら読み進める快感、八咫烏読者ならわかりますよね……?
めちゃくちゃ怖かったですね……
ここが地獄の本街道だよ。
(地獄の入り口は『追憶の烏』)

ぜえはあぜえはあ。
とりあえず読みながら思ったこと、読みおて考えたことをできるだけ書いておこうと思います。

****ここからネタバレです。未読者は引き返してください。****










**引き返せっていったじゃん!帰って!!!**



はい、参ります。

人物相関図

「ハイライトは故人」で胸を抉られた。
奈月彦はもういない。
子世代はともかくとして、知らない名前がいくつかあるんだが……?
まって北家というか博陸候の系図にいる「冬木」ってだれだっけ?
玄喜は喜栄のお父さん?
雪哉にとってのおじさんてことで合ってる?
そして喜栄の娘があれかーそうなのかーーー。
澄尾さんと真穂の薄が子どもに恵まれていてよかった。
それしか言いようがない。
澄生(葵)がめっちゃ気になる。
紫の大前があせびの君なの怖すぎる。
こわい。
本当に怖い。
もうこの相関図で恐怖しかない。
登殿なんてそんな怖いやめて。

あせびの君

もうやだこの人怖い。
いつまでも無邪気で朗らかなお姫さんなのほんと怖い。
一見悪意がないから怖い。
ほんと怖い。
あれじゃん、雛人形を見たいと言ったのだって秋殿に対する嫌がらせだし、澄生を桜花宮に受け入れるって言ったのだって澄生の退路を断つためだし、でも本人はそんなつもりこれっぽっちもないんだよ。
本人は善意のつもりなんだよ。
だから「お願い」しかしないんだこの人は。
そうすれば相手がどういう反応をするか、分かっているんだよ分かっているけどそれは彼女にとっては善意なんだよほんとなんなのこの人怖い。

真穂の薄と澄尾

君たちが元気でいてくれてよかった。
本当によかった。
浜木綿を助けてくれてありがとう。
本当にありがとう。
この二人は実際に山神に会ったことがあり、特に真穂はその力がこれからどうなるのか、一番身に染みて感じ取ったおひとだと思うのよ。
それでも彼女が絶望せずに何かしようとしていることが尊い。
子供たちも素直に元気に育っていて本当に尊い。
澄尾が一生奈月彦に忠誠を誓っていて、真穂が浜木綿を通して奈月彦に忠誠を誓っているのが本当に尊い。
この「忠誠」の拠り所がどこにあるか、が「八咫烏シリーズ」では最大のテーマだと最近思うようになってきたので、忠誠心の高い人が出てくると胸が痛くなる。

澄生

知っっってた!!!!!
『烏の緑羽』のラストがあれですもんね!
作中もちょいちょい仄めかされていたしね!
やっぱり紫苑の宮だよね!
「落女」というと松韻の話がまず思い出されるのだけど、それだけに「落女」として朝廷内にいる、しかも後ろ盾となる権力が落ち目の西家、とな。
ところでわたし、「高松」さんがどなたか全然記憶にないんだけど、いままで出てきたっけ?
誰かが身分を隠してる?
澄尾の友達の馬って誰だ???
澄生が翠寛に師事していたことは確かで、千早とも繋がりがあって……ってめちゃくちゃ南家じゃん。
そして西家とも繋がりがある、と。
そりゃそうか。
浜木綿の実家は南家だもんなぁ。
南の大臣がいまだに融殿なことがわたしは怖いのよ。
「ゆきさん」といって雪哉に懐いていた紫苑の宮は、心から雪哉を尊敬し信じているんだと思うんだよ。
だって父の右腕で、いろんなことを教えてくれた人だもの
愛情を注いでくれた人だもの。
だから、博陸候が導く世界が奈月彦の望んだものとはずれていっていることが、あってはならないことだと思ったんじゃないかな。
だってふたりとも、奈月彦大好きじゃん。
ねえ、なんでふたりとも奈月彦が大好きなのに、道がこれほど違ってしまったんだろう。
博陸候との対面の場。
あれ、雪哉は相手が紫苑だとわかっているし、澄生も紫苑だとばれていることを知っているっていうことでいい?
紫苑が雪哉の特技を知らないなんて、そんなことあるわけないもんね?
自分の存在が、雪哉に少しでも響いてくれればいいと思ったんじゃないかな。
たぶん周囲が思っているよりはダメージ受けてるよね、雪哉はね。
そして彼女がはじめの元に訪れた「幽霊」かぁ。
『楽園の烏』読みなおそ。

治真

わたしはこいつが一番頭のネジ外れてると思ってる。
ある意味一番怖いのが治真だよ。
だって治真の忠誠心は、「すべて雪哉が望むままに」だもの。
雪哉が望むことはなんでもするし、雪哉が望むだろうと思うことはなんでもするし、雪哉全肯定マンでしょ。
雪哉のためならなんでもするよ、治真は。
雪哉がブレーキをかけるところを、減速なしで突っ走るよ、こいつは。
雪哉に駒として使われても、まったく気にしないタイプだよ。
このタイプは斡房を思わせるんだけど、路近にも似ているしなぁ。

長束

なかなか出番がないなーと思ったら、出番ないまま終わった。
終わったけど…… けど……
え、撫子さん、そんな勝気な感じのお姫さんだったの?
そのころから長束と共謀してたの??
もう誰も信じられない。
だいたいさ、長束といい紫苑の宮といい、雪哉と真っ向から対立する翠寛の教育で現在の姿があるわけじゃん。
雪哉はそれをどう思って見ているんだろう。
雪哉はさ、地家の次男坊として生きてきたから、長束より平民の暮らしを知ってるじゃん?
でも茂さんや千早のように、貧民の生活を知ってるわけじゃない。
奈月彦の周りには、そういう「貧民〜平民」の暮らしを実体験として知っている人が多かったけど、長束は違ったものな。
そういう意味では、長束も紫苑も下の暮らしを知ることは、奈月彦にとっては理想的だったのだろうし、そうだからこそ雪哉はそれを邪魔しなかったんじゃないかなって。
権力争いについては、雪哉の方が上手だしさ。
それにしても長束は、凪彦をどう思ってどう扱うつもりなんだろうね。
弟というよりは甥っ子くらいの歳の差じゃん。
真の金烏でない傀儡の金烏代を、せめて自立した八咫烏にしようとしているのだろうか。

四姫

こいつらも怖い。
桂の花視点で物語が進むのが怖かった。
この子もあせびみたいだったらどうしようかと思った。
蛍と双葉が一枚も二枚も上手でこっわってなった。
これで鶴が音にもさらに裏があったらどうしよう。
泣いちゃう。

雪哉

あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
雪哉!
雪哉!!!!
雪哉について何を語ればいいのかわからない。
まず情報を整理しよう。

・「弥栄」の綺羅絵を嫌う

わざわざ「弥栄」を舞台で上演して民衆洗脳しているのだから、「情報操作」という意味での「弥栄」を嫌がっているわけではない。
それよりも、「自分の姿絵」が描かれることへの嫌悪。
これなに?

『弥栄の烏』で起きたこと(『玉依姫』の裏側)
猿の襲撃:故郷である北領垂氷郷への直接的な危機
真の金烏の継承の失敗:山内の滅びの確定
茂丸の死:心の拠り所の喪失

正直言って茂さんだと思うんだよな。
だってあの猿との大戦さ、「殺された仲間の仇討ち」という名目も掲げてたでしょ。
茂さんじゃん。
弥栄で綺羅綺羅した自分の姿を描かれるのが嫌だったんじゃないの。
だって茂さんを死なせたことを思い出すから。
そしてあの戦いの裏であった山神とのいざこざが、山内の滅びを決定的なものにしたから。
それなのに自分はその場にいて奈月彦を支えることができなかったから。

・紫苑の宮との関係

茂さんの死で心を喪失した雪哉が、ようやく心を取り戻すのが紫苑の宮じゃん。
ちいさな赤子の姿に、なにかの感情が湧き起こって涙を流すじゃん。
そのあと「ゆきさん」て呼ばれて慕われてさ、大事じゃないわけないじゃん。
その紫苑の宮が、浜木綿によって手元から奪い去られるわけでしょ。
何としても守りたいから、凪彦の即位を呑んで体勢を整えようとしていたのに、それを浜木綿や真穂の薄に信頼してもらえなかったから、だから苦しいんでしょ。
雪哉は人の顔を絶対に忘れないから、落女として入ってきた澄生が紫苑だって気づいていたじゃない。
でもずーっと泳がせていた。
それはもちろん、博陸候の治世を脅かす勢力の動向を探るためでもあるけど、そう言い訳して紫苑の宮を守りたかったってのもあるんじゃないかな。
自分と主君を繋ぐ、最後の一筋だもの。

・で、千早と何があった?

おそらく谷間整備関連で意見が衝突したんだろうなぁ、などと。
千早は強制的に馬にする刑を心から嫌悪しているし、それを雪哉がやったら許せないんじゃなかろうか。
だから山内衆を離れた。
で、雪哉は千早を野放しにしているのは、残された谷間には彼のような人が必要だと感じている(今回の紫苑の宮を見逃すのと同じ)のと、やっぱり最後に残った同期の仲間だから……
ってのはあるんじゃないかな。
というか、それくらいの気持ちはあって欲しいな。
茂さんと明留の分を、ほんのちょっとでも千早に頼っていてほしい。

・雪哉のしたいこと

って結局なんだろう。
奈月彦がいた間は、「真の金烏のもとで山内を守る」だったはずで。
で、この「守る」っていうのが、現在博陸候が行なっているような政策をもってして守るつもりだったのか、それとも他に案があったのか。
弥栄での作戦は雪哉発案で、そこに奈月彦は嘴を挟まなかったんだよね。
民が囮になるとわかっていても。
囮作戦に真っ向から反対したのは翠寛だけで、でも翠寛の「理想」は現実的ではなかったし。
ということを考えると、やっぱり雪哉は奈月彦がいても、いまとおなじ政策をとった気がするんだよ。
でもそれは、綻びが繕われることが前提だから、もっと緩やかでもっと静かなものだったはずだと思う。
そうじゃなきゃ奈月彦にダメ出しされる。
雪哉が外界で学ばなければならなかったことは、もしかしたら「身分差がない」世界というものかもしれないし、あるいは政治形態だったのかもしれないし、「下のもの」としてのしあがっていくための交渉術やら何やらだったかもしれない。
うーん、でも、長束と翠寛を引き合わせたことを考えても、「下々の生活」とそれが「誰にとっても当たり前」の世界を雪哉に知って欲しかったんじゃないかな。
とすると、博陸候の現在の政策は、奈月彦の望んだものとは真逆じゃん。
雪哉は一体何がしたいんだ。

・雪哉の忠誠心

わたしは「八咫烏」のテーマを「その忠誠心は何処にあるか」だと最近思うようになったのだけど、それを踏まえて、「誰が誰に忠誠をたてているのか」がすごくわかりにくいのが今作だよなと思う。
ていうかそもそもの雪哉はが何を考えているのか本当にわからない。
『追憶』で浜木綿と雪哉がその忠誠心の向く先で争うわけだけど、浜木綿は墨丸を愛し、雪哉は奈月彦を好きになりかけたのに金烏に忠誠を誓い、澄尾は奈月彦の友となり、長束は真の金烏である奈月彦に忠誠を誓っていたように思うわけで。
「奈月彦」という形をした、実にさまざまな面をそれぞれ愛し慕っていたわけでしょ。
ではその体が亡くなった時、その思いは何処に向かうのか。
死んでしまった人から、何か返ってくることはもうないのに、雪哉はなにかひたすらに奈月彦を求めているような、贖罪として全ての必要悪を被ろうとしているような、そんな厳格さを感じたりもするし。

まとめ(まとまらない)

とりあえず今吐き出せるのはここまで。
ずっと怖い怖い思いながら読んでたせいか、最後の最後は思ったより呆気なくてよかったっていうかここから時間軸が戻るんですかそうですか。
今回のことを踏まえて『楽園の烏』を読み直し、そしてその先の地獄を待つわけですねなんていうステキな地獄。

もう本当に雪哉のことがわからない。
みんなわからない、あなたたち誰の影を追っているの。
だれか垂氷の次男坊の雪哉を返してくれ……

この記事が参加している募集

放っておいても好きなものを紹介しますが、サポートしていただけるともっと喜んで好きなものを推させていただきます。 ぜひわたしのことも推してください!