葛藤、相反する衝動

 まただ。またこの感覚。何度繰り返すのだろうか。忘れたいのに忘れられない。知りたくないのに知ろうとしてしまう。言葉では言い表せないほどにもどかしい。もういい。もういいんだ。何もかも捨ててしまおう。一体何千回心に唱えただろうか。

 もういい!彼をなぞれ!道を辿れ!走れ!知れ!そして死ね!

 何もかも捨ててしまって、焦がれた想いを食べ続けて微睡に飲まれていたい。口にするのも憚られる。

 踊る街を見下ろして。何を思ったか僕も踊り出して。腐った明かりに当てられて、躁の気持ちをたぎらせて。夜の公園で一人。軋む木のベンチの上に立つ。叫ぶ。

「潰してやんよ、みんなさあ!一生浅い夢の中で生き続けてろ!俺は知ってるんだ。この世の真理ってやつをなぁ!」

 花弁が飾る爆弾が足下に転がっている。それを手に取り真紅の花びらに口づけをする。甘い香りがする。そろそろフィクションが明ける。爆弾を握り潰し宙に向かって思い切り投げる。歩く。口遊む。

 「さぁ、明日を殺しに行こう。過去を矛に、現実を武器に。さぁ、気に入らないもの全部壊そう。心を食べて、よく食べて。」

 

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