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働いていると、本が読めなくなる?

三宅香帆さんの新書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』

話題になっていた本ですが、今さら読みました。
熟読はできていませんが。
さらっと読んだファーストインプレッション、個人的な感想でありますので、ご了承下さい。

まず、感じたのは、
働いていると、本は読めても、自分の仕事と直接関係ない本は、読まなくなってしまいがち、という事。

私は、心当たりがあります。
仕事が忙しいときは、
手っ取り早く直接役に立ちそうな本を好んで読んでいた。
人に好かれる話し方、モテ方、年収アップ、パソコンスキル、稼げそうな資格の本、等を優先。

小説や、直接仕事に関係のなさそうな本を読む優先順位が下がってしまう。余裕がなくなってしまう。

もちろん、仕事にすぐに使えそうな本が役に立たないことはありません。仕事で使うスキルを学ぶことができます。

けど、ノイズがない本は、自分と遠く離れた文脈に出会う機会が少ない。

遠く離れた文脈とは、例えば歴史。遠い時代の人々の生活や出来事。
過去の生活を想像する力。
未来を想像する力。

遠く離れた文脈に出会うことがなければ、
現代のルール、常識だけを盲信する危険性に気づかなくなってしまう。
暗黙の了解。空気を読むこと。

とにかく、仕事、売上、利益。
仕事での自己実現、仕事で自分の存在価値を感じる。
自分の価値は、仕事、年収。
多ければ多いほどよいという信仰。
競い合う。
勝ち組と負け組。
稼ぐが勝ち。
煽るインフルエンサー。

その先にあるバーンアウト。
ワークライフバランスとは一体。

無職が無能?価値がない?
お金にならないことは価値がない?
主婦は?家事は?子育ては?

人間の価値は年収か?

僕が僕であるために勝ち続けなきゃならない
正しいものは何なのか それがこの胸に解るまで

尾崎豊『僕が僕であるために』


NO  THANKS  POOR  BOY
金がねけりゃ 恋もできない
幸せにしたくても
I‘M  DOWN  DOWN  DOWN
だんだん 頭にくるぜ
OH  TASTE  OF  MONEY どれだけあれば 
OH  TASTE  OF  MONEY オマエは変わる
OH  TASTE  OF  MONEY どれだけあれば
OH  TASTE  OF  MONEY 愛を売る!

氷室京介『TASTE  OF  MONEY』



ノイズがない情報には、自分が求めている情報しか、ないという事。

この本を読んで、ハッとしました。

自分は、読みたいものしか読まなくなっていなかっただろうか。シャットアウトしていなかっただろうか。知識が偏っていなかっただろうかと。

ノイズがない本は、自分が知りたい事しか書かれていない
偶然の出会い、未知の分野、未知の興味に出会える機会が少ない。

著者は、本を読めなくなってしまう社会、働き方に疑問を抱いています。

働いていても、本を読める社会になってほしい、という著者のメッセージを強く感じました。

もちろん、働きながらも時間を捻出して様々な本を読まれている方もいらっしゃるでしょう。

最後に、村上春樹さんの小説『ねじまき鳥クロニクル 第一部 泥棒かささぎ編』より

 何はともあれ、自分の純粋な楽しみのために本を、とくに小説を読むのはひさしぶりのことだった。この何年間のあいだに読んだ本といえば、法律関係の本か、あるいは通勤の電車で簡単に読めるような間に合わせの本ばかりだった。誰が決めたわけでもないのだが、法律事務所で働いている人間が多少なりとも読みごたえのある小説を手にすることは、不品行とまでは言わないまでも、あまり好ましくない行為であるとみなされていた。そのような本が僕の鞄の中や、あるいは机の引き出しの中にあるのが発見されたとしたら、人々はきっと皮膚病にかかった犬を見るみたいに僕のことを見ただろうと思う。そしてきっとこう言っただろう、「ふむふむ、君は小説を読むのが好きなんだな。僕も小説は好きだよ。若いころはよく読んだなあ」と。彼らにとっては、小説というのは若い時に読むものなのだ。ちょうど春に苺を摘み、秋に葡萄を収穫するように。

村上春樹「ねじまき鳥クロニクル 第一部 泥棒かささぎ編」


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りむ
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