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読書|あえのがたり
1月20日に発売した能登半島応援チャリティ小説企画本『あえのがたり』の1巡目を読了しました。十人の作家による一万字の書きおろし短篇集です。『おもてなし』をテーマに、個性的な十人十色の感性が集まった、読んでいてほっこりする気持ちが良い本でした。早くも重版決定!
※短篇だからネタバレにならない程度にご紹介。
(1)加藤シゲアキ『そこをみあげる』
加藤さんは小学一年生の時に阪神淡路大震災を経験したこともあり、この企画本の中で唯一、震災のことを書いています。能登半島の震災後にこの土地にやって来た男と、この土地で失った男。バタフライエフェクトとも違うけれど、連なる営みの中で、誰かの祈りや行動が、誰かの救いになると信じずにはいられない。
(2)朝井リョウ『うらあり』
朝井さんが描いたのは、ある島に旅する大学生たちの物語。これは笑みが自然と出てしまう。その土地に暮らす人や、風土の魅力を描いていて、軽快な描写の中に荘厳な美しさを感じる。
(3)今村昌弘『予約者のいないケーキ』
今村さんが描く、予約されたケーキは誰のものかの謎解きミステリー。ここで本への緊張感が一気にとける。
(4)蝉谷めぐ実『溶姫の赤門』
加賀藩主に輿入れする徳川の溶姫のお話。漆職人の心意気が胸アツで、うるうるしてしまう。
(5)荒木あかね『天使の足跡』
足跡ミステリーもよかったけれど、命のところは今一度じっくり読もう。
(6)麻布競馬場『カレーパーティ』
おもてなし検定の合格!
(7)柚木麻子『限界遠藤のおもてなしチャレンジ』
『おもてなし』は豊かだなと感じる作品。料理研究家マダムチャーミングのお料理も気になった。柚木さんが描く、日常のブラック感が、その豊さとのコントラストを作っていて、思わず生活を改善してしまいそうになる。
(8)小川哲『エデンの東』
小川さんは『エデンの東』カインとアベルをモチーフにした作家の『おもてなし』を展開してくお話。『おもてなし』が苦手な人が『おもてなし』を追求していく面白さを堪能。
発起人 三人のお話より
そうだよねと思った 小川さん
【小川】この本が一過性のものではなくて、文庫になってずっと講談社文庫に残ってくれたらとも思います。能登半島地震のチャリティー本が置いてあったら、人々は書店で本棚を眺める度に思い出すかもしれないじゃないですか。物語が読まれなかったとしても、書店に置かれているだけで意味があると思っているんです。
(9)佐藤究『人新世爆発に関する最初の爆発』
世界規模の社会問題とカンブリア爆発を掛けあわせる着想が面白い。佐藤さんの本は『テスカトリポカ』しか読んだことがないけど、世界の在り様を鋭いタッチで伝えてくるなぁ。
(10)今村翔吾『夢見の太郎』
ふだん歴史小説を書かれる今村さんは、能登国と加賀国の狭間である羽咋の土地で暮らした太郎のみんなに隠し通した夢のお話。
チャリティーは、作家の印税と出版社の利益部分を全額寄付するようです。
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