『歌壇』2024年9月号
①口福あり眼福ありて耳福(じふく)あり音楽もよし静寂もよし 伊藤一彦 口や目による幸せがあるなら耳から来る幸せもあるだろう。耳福は日本語に無い言葉だが意味は一読分かる。聞く幸せ、静けさを味わう幸せ。どちらからも豊かな時間が伝わって来る。
②ふたまはり下の歌人に出会ひたり君もへび年われもへび年 田村元 一読笑った。与謝野晶子の「君も雛罌粟われも雛罌粟」を踏まえているが、晶子の豪華絢爛な歌に比して内容がとても地味。若い相手と同じ干支と知った瞬間の気分の高揚感が、元歌に共通するとも言える。
③藤岡武雄「近代歌人うた物語 与謝野晶子(二)」
ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟(コクリコ) 与謝野晶子
今、田村元の歌の元歌、と言って②で触れた歌が同じ号の藤岡武雄の評論の冒頭に引かれていた。こんな偶然ってあるんだ。
〈そこで寛の妹のシズに留守をあずけて出発したのよ。晶子は、明治45年5月5日にシベリア鉄道を利用してコクリコの歌となるのだよネ。そうだ、一年位は滞在の予定だったようだヨ。〉
やはり文体が気になる。特に文末の助詞。片仮名で書かれると益々目立つ。内容はもちろん面白いのだが。
2024.9.24. Twitterより編集再掲