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『現代短歌新聞』2025年1月号

①林和清「2024年の収穫歌集」
〈読後に残ったものは、全ての作用のもととなる身体は自分にひとつきりなのだという真実だった。   
脳が焼けるようだと思っていた日々はまだここにある 揺れる蔓草 川本千栄〉  5冊の内の一つに『裸眼』を選んでいただきました!

蛇、長すぎる ただそれだけではあるまいとつくづくと見る 短くはない 中根誠 特集「巳年の歌人」より ルナールの『博物誌』の一節を使った一首。ルナールに異議を唱えながらも、やはりその簡潔さに改めて脱帽という一首。初句七音二句八音が「長すぎる」。

木といふ木に蛇ぶらさがり父の死を悼んでゐたな、滅びむ家に 広坂早苗 「巳年の歌人」より。この一首前に『斜陽』を読んでいる主体。この歌はその一場面だが、ここだけ切り取られるととても不気味で象徴的だ。主体がその現場を見たかのような印象を受けた。

④小島ゆかり「短歌の筋トレ」
若いものにはわからないことをひとり笑ふまでに老心成長したり 馬場あき子
〈「若いものにはわからないことをひとり笑ふ」は明らかに日常的な口語の口調であるが、「老心成長したり」と文語の完了形でくっきりとうたい納めている〉
 上句と下句でそんなに文語と口語の落差があるだろうか。私には「り」しか差が無いような気がする。確かに「り」は古語の完了形だが。「成長した」までは現代語と同様に感じる。

⑤「現代歌人集会秋季大会」
〈内藤氏は講演の中で、万葉集における文字以前の幻想空間への郷愁指向を指摘。古今和歌集以降の和歌が「漢の刺激のなかで和を意識し、漢を相対化しながら、幻想のヤマトへの郷愁を内包」し続けたことを述べ、近代の短歌においても…〉
 版元さんの要約だと思うが、本当にきっちり上手くまとまっていて、内藤明の論点が分かりやすく述べられている。イベントのレポートとしてはとても見習う点が多いと思った。

2025.2.2. Twitterより編集再掲


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