小川さやか『「その日暮らし」の人類学』─もう一つの資本主義経済(光文社新書)
著者が実際にそこで暮らしたことを元にLiving for today─その日その日を生きる─生き方とその経済学を語った書。日本的生き方に慣れた読者にはまさに常識がひっくり返るような一冊。
〈Living for todayは、なんら特別な生き方ではない。あらゆる人間はみな、その日その日を生きている。それを想起していないだけだ。想起することを先延ばしにしているのだ。〉まさに思い当たる。
〈日本で暮らす多くの人びとは、もう長い間、その日その日を紡いでいるといった感覚とは無縁の生き方をしている。(…)社会全体でいまの延長線上に未来を計画的・合理的に配置し、未来のために現在を生きることがまるで義務であるかのように生きている。(…)将来のために身を粉にして働く。〉そうやって生きているのが大方の日本にいる人間だろう。
〈不確実であることが、「希望」がないことと同義で語られる。先がどうなるかわからないことは、新しい希望にあふれているとも言えるのに。〉ここに強く引かれた。今までの生き方をリセットできないまでも、考え方に少し風穴を開けたい人にぜひ読んで欲しい本だ。
光文社新書 2016.7. 740円+税