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有川真由美・りゃんよ『気にしない人はすべてうまくいく』(秀和システム)
「第1章他人の言動を気にしない」「第2章まわりのことを気にしない」「第3章コンプレックスを気にしない」「第4章うまくいかないことを気にしない」「第5章過去と未来を気にしない」に分けて、落ち込みやすい主人公「マイ」に猫の「こころ」が考え方のコツを教えてくれる本。とても腑に落ちた。マイは落ち込みやすい人との設定だが、こうした感情はだれにでもあるあるだと思う。こころのふくよかな姿も良い。
(以下は筆者のためのメモである。)
1-2 イラっとした自分の心を「実況中継」してみる P18
〈こうした心の動きは、心理学では「メタ認知」と呼ばれているもので、冷静なときであれば誰でも普通にやっていることです。〉
〈怒ったりイライラしているときは、心の中の感情が暴走しているので、客観的な「もうひとりの自分」が働いていない状態。/「あの人最悪!」と相手にフォーカスしている視点を、「私、いまムカついているな」と自分の心のほうにズラすだけで心に余裕ができるものです。〉
敢えて自分の中にもう一人の自分を召喚するということだな。「フォーカスしている視点を変える」というのも役に立つアドバイス。
1-3 「考えてどうにかなる」のか「ならない」のかをまず考える P22
これはタイトルだけで即、納得。〈変えられないのは他人と過去で変えられるのは自分と今〉、というのはよく聞くフレーズだが、このように定義されると自分の頭の中が整理される。
1-7 嫌なことに対する反応自体を変えてみよう P38
ここに3つ提示されており①あえて深く考えない②面白がる③長所/短所に対する感度調整、とあった。どれも深く納得。自分で調整できれば嫌なことが嫌なことでなくなっていくかもしれない。
1-8 「距離感の調節」ができれば無駄なトラブルがなくなる P42
ここにも3つ。①ほどほどの距離感を探る②同じ土俵に立たない③心の距離を調整する とある。少し前の自分なら、それが出来れば苦労しないよと言いそうだが、今はこれが結構納得できる。
4-1 不安なときほど「むしろチャンス!?」と唱えてみる P100
〈プラス思考でもマイナス思考でもない「人生に起こることすべてに意味があるから、壁を通り抜ける方法を見つけていこう」という考え方を「ブレイクスルー思考」というそうです。こうした思考法を続けていけば、思わぬよいことにめぐりあえる可能性もあるのです。〉
プラス思考をしろという啓発本が多いが、それはしんどい。プラスとマイナスのどっちでもない、というのが良い。
4-3 「結果」ではなく「経験」に目を向ける P108
〈失敗を気にするひとは「結果主義」(…)失敗を気にしない人は「経験主義」といえます。「なにごとも経験」と考えれば、結果が成功であろうが失敗であろうが、関係ないのです。(…)一見、ネガティブな経験は、やろうと思ってできることではないからこそ、深い価値と学びがあります。〉
やろうと思ってできない体験という捉え方もあるのか。
4-5 「言いたいことを言う」ときに考えたいこと P118
〈心に余裕がないとき、普通の状態ではないときには、口を慎むことを心がけてください。(…)発言の前に一度、「この言葉は相手にとって本当に必要か?」と考えるようにします。〉
考えてもみなかったことだ。
〈「私」を主語にして、相手に働きかける手法を、心理学で「アイメッセージ」と言います。(…)「相手の行為」にフォーカスするのではなく、「自分の気持ち」にフォーカスして訴えるのです。〉
短歌もそうかも。
〈話をする時には「口は禍の元」という言葉を肝に銘じ、自分の身を守るためにも、人を傷つけないためにも、細心の注意を払いましょう。/人は言葉によって相手の心を追い込むこともできれば、言葉によって相手の心を救うこともできるのです。人の心を温める言葉を心がけましょう。〉
御意。
5-2 「解釈の仕方」を変えれば過去だって変えられる P134
〈ネガティブな解釈をして、心が囚われたままになるか、ポジティブな解釈をして、さっさと前に進むかはあなた次第。どんな過去であっても、その意味づけを変えることはできるのです。/そして、どんなに辛い過去でも「いいとか悪いとかではなく、あの時の自分にはああするしかなかった」と受け止められたら、あなたは過去とフラットに向き合っているといえるでしょう。/私たちはたとえ未熟であっても、そのときどきの判断で、自分を幸せにする選択をしています。〉
前半は色々な心理学系の本で色々な言葉で言われていること。中盤がよかった。過去を受け入れる。そして後半、その選択をした自分を認めて受け入れるということ。自分の健闘を讃えて。
5-4 「不安」は最高の結果を生むエンジンにもなる P142
〈起きてもいないことに対して(…)不安がるのは、単なる妄想で自分を苦しめているようなもの。「それはいま考えなくてもいい」と脳内の”考えなくてもいいフォルダ"に仕分けするイメージで頭を切り替えましょう。〉
とにかく自分が考え過ぎなのだと分かる。
5-5 常に「選択肢はいくらでもある」という気持ちでいる P146
〈「選択肢がない」と考えるより、「選択肢はいくらでもある」「これからどんなワクワクが待ってるんだろう」と考えて生きていく方が絶対に楽しいはずです。(…)/もし、だれもやっていないことなら、それもひとつのチャンス。新しい世界を切り開くフロンティアになって、人びとを勇気づけようではありませんか。/私たちはどんな状態になっても希望をもてるし、進化していけるのです。〉
自分の選択肢は自分で選ぶ、ということなんだな。
5-7 「いいことだけ想像」ですべてうまくいく P154
〈こうした楽観的な想像はとても重要です。その思いがこれまでの自分にはなかった力を与えてくれることもあります。根拠はいりません。「思い込み」でいいのです。(…)常日頃、どんな課題も「自分ならできる」と考え、なりたい自分の姿をなるべくリアルに想像する習慣をつけましょう。(…)毎日想像していると、普段の言動もそれを実現するように修正されてくるのです。(…)何よりも「自分はできる、大丈夫と考えて暮らすことで毎日が明るくなります。/どこまで自分ができるのか、どんな自分になれるのか、最高の想像をして、一日一日を、いまの瞬間を存分に楽しんでください。〉
自分の価値は自分で決める、未来の自分は自分が作る、ということなんだな。
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