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『現代短歌』2024年1月号
①胡蝶蘭枝垂るるや秋の温室に 腎臓は人の身体にふたつ 上川涼子 胡蝶蘭の全体の姿は枝垂れるよう。そして一つ一つの花の形を主体は腎臓の形と捉えた。花から臓器への想像の飛躍が鮮やか。本来は身体の内部にあるものがふと外界にさらされるような違和感がある。
②自販機に硬貨を入れて感じ取る硬貨が闇をうごく浮力を 上川涼子 自販機に硬貨を入れた後、その硬貨が自販機の中を落ちていく時の浮力を感じ取っている。手の中に残っていた硬貨の感触がそのまま闇へと続いて行くような感触。見えない世界を体感している。
③書き継ぎてゆくうちに詩が書かしむる一行がある 書きたし 上川涼子 書いていくうちに作者の意志でなく詩が詩を産む瞬間が訪れる。詩だけでなく、絵でも音楽でも踊りでもあらゆる芸術活動に言える事だ。その降りて来るものに身を委ねたい。二字空きでつぶやく。
④現代短歌社賞「選考座談会」
大辻隆弘〈現代口語のフラットな文体でしか出せない感じっていうのがある。(…)いかにフラットにできるか、フラットなかたちで、眼にしたリアルなものにどこまで心を開けるかっていうところで勝負している。〉
どんなにうまく生きられなくてもときどきは歌碑を見つけて写真も撮った 奥村鼓太郎
議論に挙がっているのは奥村作品「蛇口とアムステルダム」。大辻の評にはなるほどと思った。
⑤自転車にてふりかへるひとの顔は見えずもう戻らぬとおもひぬ夢に 横山未来子 夢の不条理さと儚さがよく出ている一首。顔は見えない。誰だか分かっているのか、いないのかもはっきりしない。けれどその人がもう戻って来ない、ということだけは確信しているのだ。
⑥まだわれはなにを諦めていないのかかわせみよ濁る川に棲みいて 遠藤由季 諦めた時はそれを意識するが、諦めていないと状況が継続するから上手く意識化できない。何に執着しているのか。翡翠が濁る川に棲みつくように、夢が現実に搦めとられているというのに。
2024.1.7.~8. Twitterより編集再掲